聖女の力を姉に譲渡し国を出て行った元聖女は実は賢者でした~隣国の後宮で自重せずに生きていこうと思います~

高井繭来

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2章

【204話】

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 切り取られたその白い空間の中、円卓に13人の人物が座っていた。

「本日はお集まりいただき感謝する。それぞれの存在は20年前に一緒に力を合わせたものは知っているだろうから、新顔の方に簡単に自己紹介で良いであろうか?」

「それで構わないと思われます御使い様」

 空色の髪に翡翠の瞳の性別を感じさせない美しい存在が良い、それに雷光を紡いだような金色の髪の美丈夫が答えた。

 御使い様と呼ばれたのは全能神の使いである『リリィ・オブ・ザ・ヴァリー』だ。
 その正体が全能神本人と知っているのは1部の物のみ。
 今回集まった人間の半分は知っている。
 それほどまでに今回集まった面子の顔触れは規格外だ。

 リリィ・オブ・ザ・ヴァリーに答えたのはガフティラベル帝国皇帝アンドュアイス。
 それに付き添うのは王配のルーシュである。

 大陸の中心に位置し、近国のまとめ役でもある帝国である。

 そして魔術の国ディノートからはアシュバット大公とその妻サラ。

 文明の国クロイツから宰相レオンハルト・アル・アサッド。
 その妻ナナ・アサッド。

 美と花の国カカンからはローズ国王。

 軍事国家フレイムアーチャからはラーシュ・ミリオン・ドラゴニア騎士団長。

 獣人の国ジャクタル王国からは豹の獣人シジュン女王と王配の鷹の鳥人マガク。

 宝石と温泉の国スティルグマからは男装の麗人ケイファス女王。

 法力国家フォクウンからは元聖女で現女法王ウイルド・ブランクルーン。

 現在大陸にある大国の重要人物がこの場には集まっていた。
 フレイムアーチャのラーシュ以外は皆国を動かす者として脂ののった時期である。
 ラーシュのみまだ20代半ばと年若い。
 それでもフレイムアーチャから1番信頼でき信用できる権力のあるモノと居して、ラーシュが選ばれた。
 ガフティラベル帝国皇帝のアンドュアイスの王配ルーシュの年の離れた弟であるというのも選ばれた基準の1つではある。

 1人年若いラーシュは緊張しているようであった。
 その髪色と瞳の色は姉のルーシュと同じ若葉色の髪色と稲穂色の瞳である。
 面立ちは中性的だが体は長身でがっしりと筋肉が付いてある。
 その緊張した表情を見て、こんな時だがリリィは微笑ましい気持ちになった。
 心友のルーシュの若いころを思わせる。
 出会った頃の緊張していたルーシュはこんな様子であったと。
 ラーシュはその頃のルーシュより10歳以上年上ではあるのだが。
 リリィから見たら甥のような存在でもあった。
 ちなみにラーシュはリリィ=全能神だとは知らない1人である。

 この中でリリィ=全能神だと知っているのはガフティラベル帝国・クロイツ王国・カカン王国・ジャクタル王国のそれぞれの代表だけだ。
 残りの国の代表はリリィ=全能神だとは知らない。
 なのでアンドュアイスはリリィを『御使い様』と呼んだのである。

「本日集まっていただいたのは20年前の魔国との戦争を起こした存在が再び蘇ったことについてだ。今回は魔族より厄介な純アストラル体の悪魔だ。
再び『悪意の概念』が封印の一部を解いて世界に混沌を巻き起こそうとしている。
その防波堤として、貴人らには協力して貰いたい。これは全能神様からの願いでもある。願いであり命令では無いので勿論拒否権はある。
己は引きたいと言うものは辞退してくれてかまわない」

 沈黙。
 それは誰も辞退しないという肯定の意である。
 それにリリィは小さく口角を上げた。
 人間はまだまだ見捨てる相手では無いのだと。
 己が庇護して良い相手であると。

「ラーシュ殿は『悪意の概念』についてはご存じか?」

「姉上から話は聞いております」

 ラーシュがリリィの問いに答えた。

 『悪意の概念』、ソレは20年前に魔国を支配し魔族と人間を争わせた存在である。
 その時に大陸を纏め上げ指揮をとったのは、全能神の加護を受けたガフティラベル帝国皇太子のアンドュアイスであった。
 それを機にアンドュアイスは『雷帝』の名を冠したのだ。
 その時に『悪意の概念』は全能神が封印したのだが、相手の力も強い。
 人に悪意がある限り『悪意の概念』は滅ぼせないし、幾らでも力を蓄える。
 『悪意の概念』は20年の時を経て、封印の1部を解いてこうして世界に混乱を招こうとしている。

「悪魔が人間を襲う日が近いという事でしょうか?」

 ウイルドがリリィに問うた。
 それにリリィは首を縦に振る事で是の意思を返す。

 はぁ、とウイルドが溜息をつく。

 20年前の戦争を思い出したらしい。
 けして楽なものでは無かった
 それに加え今回の相手は魔族より力のある悪魔。
 コレからの戦争の苦労は想像を超えるであろう。

「戦争は魔王の意思なのですか?」

 アンドュアイスが問う。
 この場で1番それを聞きたいのはアンドュアイスだったであろう。
 その事を知るものは少ないが、魔王はアンドュアイスの従兄弟である。
 弟のように大切な存在。
 決して命の取り合いをしたい相手ではない。
 妻のルーシュはそれを知っているからアンドュアイスを心配そうな目で見ている。

「魔王の意思ではなさそうだが、悪魔が活気づいているのは魔王の存在のせいであるようだ。なので私は魔界に向かい、直接魔王を退けようと思う。
けして人間に危害が及ばないよう、問題の根本から断つ。
『悪意の概念』も魔王を魔界に留める程度の力しか今は無い。魔王さえ消えればこの危機は退けられるであろう。人間と悪魔の戦争は起こさないのが全能神様の意思である」

 リリィはそう言い切った。

 「魔王を消すのが全能神の意思」だと。

 全能神と魔王の関係を知っている者は息を飲む。
 それがどんな事を意味するのか分かっているから。
 愛する者を消す。
 魔王は全能神の愛すべき半身なのだ。

 それで良いのかと知る者たちの視線が問う。
 その視線に、リリィが答える事は無かった。

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 その内20年前の戦争についてもお話上げたいと思います。
 いろんな話に出てくる主人公たちが一堂に集まるドリームチームです。
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