聖女として召喚されたのは双子の兄妹でしたー聖女である妹のオマケとされた片割れは国王の小姓となって王都復興を目指しますー

高井繭来

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御使い様が誑しに進化しました

【御使い様は学びたい】

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「ん~やっぱり本だけじゃ埒があかない」

「そんな難しい本読んで理解できるだけで凄いと思うけどなぁ」

「でもやっぱり実践しないと身に付かない技術なんですよね。理解してても技術が伴わないと話にもならないんですよ」

 深海のラボは靴を脱いで床に座るジャパニーズスタイルである。
 床は畳。
 最近カカンで試作品に作られた。
 大陸の東の方では割とメジャーな床なのだそうだ。

 そして畳に直に座った深海は神話時代ーつまりは己が居た時代の医学書を読んでいた。
 日本語に訳してある本もあって良かった。
 英語やドイツ語だったら理解も半分以下になっただろう。
 疲れた目を閉じ瞼を指でマッサージ。
 そして猫背気味で本を読んでいたため固まった体を解すべく、うん、と背筋を伸ばして背もたれに倒れた。

 背もたれは深海がすっぽりと包まれる極上の背もたれである。
 引っ付いていると温かいし、耳を寄せると心音が聞こえて来て安心する。
 
「フカミちゃん、これだとお茶淹れにいけないんだけど?」

「今はお茶よりアニマルセラピーです」

「俺、動物扱い!?」

「人間も動物じゃないですか」

「いやでもアニマルセラピーってモフモフの生き物に主に使わない?」

「フィルド様のひよこ色の髪好きですよ俺?」

 深海が腕を伸ばしてフィルドの髪を触る。
 少し擽ったい。
 そして深海の目がフィルドの前髪を上げて、その瞳を露わにする。

「ふふっ、この瞳を見るのが1番のヒーリングですかね?」

「ぁぅぁぅぁぅ~~~~…」

「あ~綺麗なお目目、舐めたら美味しそう」

「お、美味しくないよ!舐めちゃダメ、絶対!!」

「じゃぁコレで我慢します」

 カリッ

「ぅひゃぁあっ!!」
 
 深海がフィルドの耳朶を甘噛みした。
 フィルドが上擦った声を上げる。

「これってフカミちゃんにとって何の得がある好意なの!?」

「涙目になるフィルド様が可愛い」

「~~~~フカミちゃんの誑しぃっ!」

 そう言いながらも、ラッコ抱っこをやめる気はないらしい。
 深海の後ろから抱き着いて、足の間に深海を座らせる。
 まだまだお熱い恋人たちが良くするラッコ抱っこ。
 特に現在深海とフィルドは恋人では無いのだが、何故かこの体制で本を読んでいる。
 深海の肩越しにフィルドも医学書を読むが内容がちんぷんかんぷんだ。

「あ~CTとかエコーとかMRIとかX線とかが欲しい…流石にマヒロさんも見た事ないやつ錬金できないですよねぇ。俺も器具がどうやって作られているかなんて分からないし…詰んだかなァ………」

「CT?確かそう言うのクロイツならある筈だけど?」

「マジですかフィルド様!」

「ひゃぁ!」

 深海が体をぐるりと回し、フィルドに体ごと向き合った。
 顔の距離が近い。
 もともと引っ付いていたので向きが変わったも密着度が変わらない。
 背中がくっ付いていいるならともかく、上半身がくっ付くのは都合が悪い。
 主にフィルドの生理的現象に。
 胸を潰した状態でも、フィルドはその下に豊満な柔らかい存在があるのを知っている。
 何なら感触も知っている。
 それを思い出させるのだ、この体制は。

「ふ、フカミちゃん、近すぎだよーっ!」

「あ、すいません」

 素直に深海は身を離す。
 それが残念に思えるのだから男と言う生き物も色々面倒くさいものだ。

「で、そのクロイツ、とやらにCTがあるんですね?」

「クロイツは文明国家だからね~魔術や法術が無い代わりに神話時代の科学技術が反映しているらしいよ?」

「何故に疑問形なんですか?」

「え~だって神話時代の科学技術とやらがどんなものか知らないから、今のクロイツの科学技術と比べようないでしょ?」

「それもそうですね…でも、行く価値ありですね。カグウ様に頼み込んでみましょうか………」

「フカミちゃんクロイツ行きたいの?」

「行きたいです」

「じゃぁ俺も説得手伝ってあげるよ、俺も護衛してあげたいし」

「護衛したくれるんですか!?」

「フカミちゃんが闘気を使えるようになって随分強くなったけど、やっぱり女の子でしょ?俺にも守らせてよ」

 青銀のフィルドの瞳がジッ、と深海の黒い瞳を覗き込む。
 光に照らされた海の水面のような青銀の瞳。
 その大好きな瞳に見つめられて、深海が否と言えるはずもなかった。

「よろしくお願いします」

「こちらこそ不束者ですがよろしくお願いします」

 取り合えず距離を取った2人は、畳に正座して互いに三つ指をついて頭を下げるのだった。
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