男として育てられた公爵家の令嬢は聖女の侍女として第2の人生を歩み始めましたー友人経由で何故か帝国の王子にアプローチされておりますー

高井繭来

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「ダンジョン久し振り~」

「嬉しそうなのじゃ主殿」

「そりゃ暫く剣ふって無かったからな~」

「主殿から剣と魔術を取り上げたら残るのはちっぱいだけなのじゃ」

「ルインさん、サイヒの真似して主ディスるのやめよーね!」

「今日も主が元気そうで何よりなのじゃ!」

「受け流し方も見習わないでね!!」

 肩に小型化(猫位)のルインを乗せて、ルーシュは洞窟タイプのダンジョンへと潜っていた。
 このダンジョンの最下層はまだ踏破されていない。
 最高記録35階。
 中々の規模のダンジョンである。
 これなら良い魔石も手に入るかも知れない。
 
 久しぶりの戦闘への期待にルーシュはウッキウキである。
 目的と手段が入れ替わっている気もするが…。

 そして出て来た魔物をバタバタと倒していく。
 ルインもブレスを吹く。
 強い敵には偶に魔術で【肉体強化】と【遠距離攻撃】
 良い汗をかいて気分爽快だ。

「主殿?何故に主殿は魔物を殺さぬのじゃ?魔石が手に入らぬではないか」

「ん~話すと長くなるんだけど」

「では良いのじゃ」

「聞いて!」

「聞いて欲しいなら最初から聞いてくれと言うべきなのじゃ」

「ルインさん最近だんだんサイヒに似て来てない!?私の従魔だよね!?」

「当たり前なのじゃ。サイヒ殿に従魔が必要にみえるのかえ?」

「うん、いらんわ」

「そうなのじゃ。では気分を入れ替えて説明をするのじゃ主殿」

 ルーシュは心の中で”ドラゴン迄誑かすな誑しが”と思いながらも耳をピクピクさせて、コチラが話し出すのを待っているルインに説明する。

「魔石は魔物にとって心臓と一緒だろ?」

「うむ」

「んでダンジョンて魔物の住処だろ?」

「うむ」

「そこに急に入ってきて魔物殺して魔石奪うって強盗殺人と同じじゃね?」

「あ、主殿が理知的な事を言ってるのじゃ!」

「お前にとって私はどう見えてるんだ…?まぁサイヒの受け売りなんだけど」

「成程、凄く納得したのじゃ」

「納得あんがと。でも何か虚しのは何だろな…ま、そう言う訳で私は魔物殺しはしない訳よ」

「ではどうやって魔石を手に入れるのじゃ?」

「ダンジョンみたいに瘴気が多い所は天然もんの水晶なんかが瘴気吸い取って魔鉱石になるからな。アレを加工すれば良い魔石になる。ダンジョンを潜れば潜るほど瘴気は濃くなるから良質な魔鉱石が取れるっしょ?だから今日1日で潜れるところまで潜る予定ね」

「うむ、了解なのじゃ。では目指せ最下層!」

「まぁ門限までに帰れるレベルでしか潜れないけどね。ま、頑張りましょー!!」

 近づいてくる魔物の気配を感じてルーシュは楽しそうに剣を構えた。
 やはり命の奪い合いをしなくても実戦は楽しい。
 どこかぶっ壊れたところがあるルーシュである。
 何処から見ても完璧なバトルジャンキーだ。

(主殿は恋愛になるとうじうじするから、たまには暴れさせてやるくらいがちょうど良いのじゃ。頭悪いのに悩むのは心身ともに良くないのじゃ。馬鹿は馬鹿なりに得意な事をしているほうが健全的なのじゃ)

 ルインは楽しそうな主を見守りつつ、心の中ではルーシュの突っ込みが追い付かない程に己の主を貶めていた。
 無自覚なので許していただきたい。
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