男として育てられた公爵家の令嬢は聖女の侍女として第2の人生を歩み始めましたー友人経由で何故か帝国の王子にアプローチされておりますー

高井繭来

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 珍しくニャックスから伝達がとどいた。
 こんなものが届くのはニャックスの創設者のサイヒからで間違いない。
 嫌々出て来た紙を見る。

『魔鉱石の加工ならガフティラベル帝国のフェルゴールの工房に居るベルンに頼むが良いぞ』

「何で今の私の状況知ってるかな!?」

 答え:全能神だからです

 全能神になった心友はあらゆる事が分かるようになったらしい。
 ただでさえ勘の良さと諜報能力が高くて事あるごとに色んなことを知られていたが。
 ここまで筒抜けだと_| ̄|○になるのも無理はない。

 全能神様も心友の事は他の者より気になるのだ。
 許してやって欲しい。
 何せ友達が2人しか居ないのだから。
 その内1人がルーシュである。
 もう1人は胃がマッハで痛む男クオンだ。
 毎日顔を合わせるより自分はマシか、とルーシュはクオンの不憫さを思って立ち直った。
 人間たまには自分より下の者を見る必要がある良い事例だ。

「でもガフティラベルかぁ。流行りも抑えてるんだろうな。何よりサイヒのお墨付き、間違っても失敗はないはずだもんね」

 ルーシュは明日ガフティラベルは向かおうと心に決めた。

 そして朝。
 ルーシュは家の者が動き出す前にガフティラベルへと出発した。
 男装である。
 中性的とは言ってもルーシュは自覚してないが、顔立ちは整っているのである。
 男なら中性的な美形だ。
 女として国を渡るよりは楽な旅になるだろう。
 まぁルインに騎乗して行くので国境など簡単に越えれるのだが。

 女1人で街を歩くと意外と面倒臭いのである。
 ルーシュの髪色が変わっているので興味を持ったチャラい男に囲まれた事数度。
 毎回アンドュアイスが牽制してくれていたが今回はアンドュアイスへのサプライズが目的だ。
 虫よけは頼めない。
 よって男装で行くことにしたのである。

「主殿、速攻で行くのじゃ」

「おや、ルインさん楽しそうね?」

「ふふん、ガフティラベルの国の繁栄を見てやろうと思った次第じゃ。オグリが何時も美味しい食べ物があると話しているので気になっていたのじゃ」

「色気より食い気ねルインさん」

「主殿には言われたくないのじゃ。あ、でも今日は雌として雄にプレゼントをわたすのであったのじゃった。人間は雌からアプローチせねばならんとは面倒臭い生き物じゃのう」

「魔物は雌がアピールすること無いんの?」

「アピールは雄の仕事じゃ。雌はその中から気に入った雄を選ぶのじゃ」

「で、ルインさんアピールされた事は?」

「………」

「ルインさん?」

「……オグリが初めてなのじゃ」

 どうやら主従揃って恋愛偏差値が低いらしい。

「だが妾は能力が高い故に雄が手を出せなかった高根の花なのじゃ。好意を今まで一切向けられた事のない主殿とは違うのじゃ」

「私だってアプローチくらいされた事あるんだかんな」

「誰にじゃ?」

「…………第1王女に」

 出来ればして欲しくなかったアプローチである。

「主殿、強く生きるのじゃ……」

「その憐みの籠った眼やめて!本気で傷つくから!!」

「アンドュアイス殿を逃すでないぞ、次は無いと思うのじゃ」

「応援あんがと!でも私だってその気になれば男位寄って来るんだかんな!」

「まずはナンパの1つでもされから言うのじゃ」

「使い魔にマウント取られてひっくり返せないのが悔しい!!」

「さてでは行こうか主殿。内密に、じゃな。オグリに気付かれんよう気を付けんといけないのじゃ」

 ルインはルーシュを乗せて羽ばたく。
 そのスピードは他の動物の比ではない。
 ルーシュが風属性の魔術を使っていなかったら風で飛ばされていた事だろう。
 剣術と魔術だけは誇れるのだルーシュは。
 使える属性も火・水・風・土と4代属性コンプリートだ。
 魔術の属性は他にに光属性と闇属性、亜種に氷・雷などもあるが流石にそれは使えない。
 全部使えるバケモノなど心友1人で充分だ。

「さて、何に加工して貰おうかな?」

 リュックに入れた魔鉱石を一撫でして、ルーシュはアンドュアイスの喜ぶ顔を想像して1人気分を良くしたのだった。
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