三回目にして忘れられない

そらいろ

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すると、蓮は晴と視線を合わせて首を傾げる。

「ん?なんか言ったか?」
「んーん!」

左右に首を振って晴は否定する。またニンマリ微笑むとキャンバスに向かって再び描き始めた。

「氷ってね、絵だと溶けないのに現実だと溶けて形が無くなっちゃうんだよ。」

虚しくない?と手の動きも止めずに無表情で蓮に問う。

「なら、絵に留めとけよ。晴なら出来るだろ。」 

両手を組んで頭の後ろに回すと、蓮はまた黒板に体重を委ねる。晴へ向ける視線は外さず、真っ直ぐに回答を発する。


そこから無言の時間が続く。
時計も無い空間はここに来てどれだけ時を刻んだのか体感でも全く分からない。ただ、描く晴とそれを見る蓮。苦にも思わないのは慣れている上に二人にとってこれが通常運行だからだ。



「よし、帰ろっか?」

晴が立ち上がってそう言う事が二人の帰宅の合図だった。蓮はコクリと頷いて同じく立ち上がる。

「今日は早かったな。もう良いのか?」

準備室を後に、誰もいない廊下を歩く。コツコツと2つの不規則な上履きの音が響いている。

「ん。文化祭用のはもう出来上がってるし、今描いているのはお遊び。」
「そっか。んで、今日は?うち、来んのか?」

靴を履き替えてロッカーを抜け外に出ると、すっかり辺りは暗くなっている。と言っても陽が落ちたばかりな為、空気は生温かかった。
門を抜けて、学校の外へ出ると縛りから解き放たれた気分になる。それでも彼らが高校生な事に変わりは無くて朝が来るとまた窮屈になる。

「行く!明日は朝から実行委員の手伝いも無いし、蓮の家に泊まってもいい?」

晴は無意識の上目遣いで聞く。
何時まで経ってもその仕草をされると照れてしまう蓮は、口に手を当てて思わずニヤつく口角を隠す癖が出る。

「…いいぜ。母さんも喜ぶよ。」

よしっとガッツポーズをした後、蓮の手を取る。

「なら早く帰ろう!」

しっかりと握る晴の手を蓮もまたぎゅっと握り返す。黒いアスファルトには、より黒くて濃い影が1つ。デコボコなそれは2つだったと思わせない程同じ時間、同じ様に移動していった。
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