あんたは俺のだから。

そらいろ

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旅-tabi-5

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樹矢が重たい扉を引いて中に入る。
カランッ。と少し高い鐘の音がなる。
俺も続いて店内に進むと、噂に聞いていた通りのアンティークの雑貨や年代物のソファと机が並んでドライフラワーや洋書が飾っているお洒落なお店だった。

「いらっしゃいませ。」

カウンターキッチンから顔を覗かせたのは、年齢は俺達よりも上で30代くらいだろうか。落ち着いた雰囲気を醸し出し、優しく微笑みながら俺達に近づいくる。

「初めまして。須藤と申します。こちら、モデルの瀬羅樹矢さんです。本日はよろしくお願いします。」

名刺を渡し、挨拶を交わす。

「こんにちは。店主の宮下です。わざわざお越し頂いてありがとうございます。どうぞ自由に撮影してくださいね。何か必要であればお声掛けください。」

にこやかに穏やかな口調で話しかけてくる宮下さんは、このお店を一人で切り盛りしているらしく、もう10年にもなるらしい。

隠れ家カフェ的なこの場所はネットにも書かれてはいない、知る人ぞ知るお店だった。

俺がこの場所を知ったのは、実弟から話を聞いたからである。


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カシャ、カシャ…。

店の出入り口から撮影を始める。
植木鉢にはシクラメンやスノードロップ、パンジーなど可愛らしい色々な花が咲いていて、周りの木々も家に少し覆い被さっていて、まさに童話に出てきそうな森の中のお家だ。

「ちょっと屈んで目線外してみて。」

樹矢に支持しながらも彼の沢山の引き出しからポージングを表現してくれて、スムーズに撮影は進む。

「よし、中に入ろっか。」

再び鐘の音を鳴らして店内へ足を踏み入れる。
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