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物日-monobi-2
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「はーっぴばーすでーぃとゅーゆー……」
スタッフさんの歌声と共にスタジオの入り口からはゆらゆらと揺れる無数の明かりが見えた。それが灯すのは、大きな四角いケーキで中央に添えられたプレートに『樹矢くんお誕生日おめでとう』と綺麗にチョコペンで描かれている。
薄ら明かりに見えた樹矢の表情はとても笑顔で歌に合わせて手拍子をしている。
「はーぴーばーすでぃでぃーあ樹矢くーんはーっぴばーすでーぃとゅーゆー」
歌い終わりに合わせて樹矢の目の前にケーキが置かれた。スタッフさん達の大きな拍手が鳴り響いている中、樹矢は息を吸い込んで大きく蝋燭に吐き出した。
「おめでとうー!」
「おめでとうございます!」
暗闇から彼らが明るく照らされ拍手が巻き起こる中、俺は一人スタジオから出て家へと向かう。
さっきの幸せそうな顔の樹矢を思い出すと、握る車のハンドルに力が入る。
何とも思わない信号待ちが少しイライラする。
このまま帰っても一人なんだと寂しくなり力が抜ける。
「めんどくせーのな。俺」
誰にも聞かれることの無い、大きな独り言を車内に呟いた。この感情が何なのかも分かろうともしないまま。
ちらちらと振り始める雪に、本当に今日は寒い日だったんだと遠くの灰がかった空を見て、早々に暗い家の中に入っていった。
「ただいまー。」
と言っても誰も答えてくれないのが日常だ。
靴を脱いで揃える。廊下の先にはすぐリビングがあり、仕事部屋兼寝床の一つしかない部屋の扉を開ける。荷物を下ろして、リビングに戻り電気をつける。
パっと明るくなり現れた光景は、朝と何も変わらない。
「カップ麺でいいかな」
そんなに食欲も無い。電気ポットに水を入れて電源をオンにする。小さな音から大きな音を立ててカチッと沸いたことを知らせる。
適当に買っておいたカップ麺の蓋を開けて、お湯を注ぐ。
「さみぃな……」
溢さないよよう気をつけて、テーブルまで運ぶと仕事部屋から毛布を持ってくる。
ソファに座り、それを身に纏って座り込む。
あいつの事は、今日は忘れよう。
そう思っているほど、逆に考えているぞ。と自分に突っ込んだ。
こんなに好きなんだ。
樹矢に出会う前は恋愛とは無縁だった。それなりの付き合いはしていても、それまで。俺はこのまま誰とも永久を誓うこともなく、命尽きるまで写真を撮り続けるだけだと思っていた。
「そんな事、無かった……。」
浮かぶのは、笑い、拗ね、興奮し、愛してると言葉にする様々な樹矢だった。
毛布を抱きしめても、温もりは無い。
「み……きや」
ピンポーン―――
狭い部屋に簡単にインターホンが響き渡り、俺は目が開いて咄嗟に起き上がった。
スタッフさんの歌声と共にスタジオの入り口からはゆらゆらと揺れる無数の明かりが見えた。それが灯すのは、大きな四角いケーキで中央に添えられたプレートに『樹矢くんお誕生日おめでとう』と綺麗にチョコペンで描かれている。
薄ら明かりに見えた樹矢の表情はとても笑顔で歌に合わせて手拍子をしている。
「はーぴーばーすでぃでぃーあ樹矢くーんはーっぴばーすでーぃとゅーゆー」
歌い終わりに合わせて樹矢の目の前にケーキが置かれた。スタッフさん達の大きな拍手が鳴り響いている中、樹矢は息を吸い込んで大きく蝋燭に吐き出した。
「おめでとうー!」
「おめでとうございます!」
暗闇から彼らが明るく照らされ拍手が巻き起こる中、俺は一人スタジオから出て家へと向かう。
さっきの幸せそうな顔の樹矢を思い出すと、握る車のハンドルに力が入る。
何とも思わない信号待ちが少しイライラする。
このまま帰っても一人なんだと寂しくなり力が抜ける。
「めんどくせーのな。俺」
誰にも聞かれることの無い、大きな独り言を車内に呟いた。この感情が何なのかも分かろうともしないまま。
ちらちらと振り始める雪に、本当に今日は寒い日だったんだと遠くの灰がかった空を見て、早々に暗い家の中に入っていった。
「ただいまー。」
と言っても誰も答えてくれないのが日常だ。
靴を脱いで揃える。廊下の先にはすぐリビングがあり、仕事部屋兼寝床の一つしかない部屋の扉を開ける。荷物を下ろして、リビングに戻り電気をつける。
パっと明るくなり現れた光景は、朝と何も変わらない。
「カップ麺でいいかな」
そんなに食欲も無い。電気ポットに水を入れて電源をオンにする。小さな音から大きな音を立ててカチッと沸いたことを知らせる。
適当に買っておいたカップ麺の蓋を開けて、お湯を注ぐ。
「さみぃな……」
溢さないよよう気をつけて、テーブルまで運ぶと仕事部屋から毛布を持ってくる。
ソファに座り、それを身に纏って座り込む。
あいつの事は、今日は忘れよう。
そう思っているほど、逆に考えているぞ。と自分に突っ込んだ。
こんなに好きなんだ。
樹矢に出会う前は恋愛とは無縁だった。それなりの付き合いはしていても、それまで。俺はこのまま誰とも永久を誓うこともなく、命尽きるまで写真を撮り続けるだけだと思っていた。
「そんな事、無かった……。」
浮かぶのは、笑い、拗ね、興奮し、愛してると言葉にする様々な樹矢だった。
毛布を抱きしめても、温もりは無い。
「み……きや」
ピンポーン―――
狭い部屋に簡単にインターホンが響き渡り、俺は目が開いて咄嗟に起き上がった。
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