あんたは俺のだから。

そらいろ

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変化-henka-2

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 黒い鉄製で出来た階段。手すりを持つと冷たく、登ると足音が鳴り響く。

 コツ…コツ……

 登った先に人の頭が一つ見えた。
 髪色は白に近い金色。長い髪の毛は後ろで一つに結っている。

 鳴り響く足音が大きくなる事で2階に登ったのが分かったんだろう。顔が見え、目が合う。

「いらっしゃい……」
「……っ男!?」

 声が、被る。
 客を向かい入れる店員さんお決まりの台詞は言い切れず、裂いてしまった。
 それよりも驚いたのは、担当してくれる樹矢の話していた『しおん』さんが男だと言う事。

「お、男だけど、ってそれはこっちの台詞。『朱ちゃん』って男性だったのね」

 少しオネェ口調の入る目の前の男性は、胸元に付いている名札に中瀬と書かれていて、間違いない。彼は中瀬しおんさんだ。

「名刺にはしおんって平仮名で書かれてるもんね。よく間違えられるのよ。志しに御礼の御で志御よ。今日はヘアカットよろしくね。朱斗ちゃん」

 長い前髪を揺らせて、見えた瞳はグレイっぽく色素が薄い。化粧をしているんだろう肌も艶があり透明感が凄い。
 ほんの一瞬、minaさんを思い出す。違うタイプとすぐ気づいたのは、志御さんは明らかに大人で落ち着いた雰囲気を放っていた。身長も樹矢よりも高そうで、どうやっても俺は見上げる形になってしまう。

「さ、どうぞ」

 長くスラっと伸びる腕で、シャンプー台へ案内してくれる。

(足、ながっ……)

 白いシャツの下に履いたただの黒いバンツは、志御さんの長い脚を際立てて、そこにしか目が行かなかった程長かった。

「樹矢くんとは恋人なんでしょ?」
「……っ!」

 気持ちよくシャンプーをしてもらっている間、何処の美容室にもある他愛のない話が続くと思っていたその積み上がった期待は大いに崩れていく。

「大丈夫よ。私達以外にここは誰もいないから」

 確かにさっきから俺以外の客は二階へと登ってこない。

「何か、あるんですか?」
「この店、芸能人さん達も行きつけでね。お忍びで来る方が多くてその場合のみ、この二階に案内してヘアメンテナンスをしているの」
「そう……なんですね」


「で?どうなのよ。付き合っているの?」

 話は逸らすことを回避できなかった。

「つ、付き合ってます……」

 その返事にピタと俺の頭を洗う手が一瞬だけ止まる。


「やっぱり!予想的中ね。樹矢くんたら、何時も何時も朱ちゃんのお話しかしないんだもの」

「気になっちゃうわよね」と、恐らく笑っているのだろう。
 何時も話す朱ちゃんが誰だか分かり、シャンプー終わりに見た志御さんの顔は、問題が解決してスッキリしたような、清々しく笑っていた。
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