太陽のしたで、ひと夏の恋。

彰野くみか

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プロローグ

三年後

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 ──照りつける太陽、嫌い。
 ──眩しい夏の太陽、嫌い。
「夏……」
 今年もまたこの季節がやって来る。夏が。
 夏は嫌い。

 だって、「別れの夏」だから。
 だって、思い出すから……。

 ひと夏で終わった、辛い恋物語を──。


***


プロローグ
三年後

***




「あれ、桜……?」
 春のやわらかな陽射しから、ジリジリと照りつける初夏の陽射しへと変わり出した今日この頃。
 あたりを見回すと、既に半袖の人を見かけ始める5月上旬のことだった。
 家から学校へと向かう途中に、見頃を過ぎて散り終えたはずの桜並木道に、一枚の桜の花びらが落ちているのを見つけた私は、その足を止めた。
「こんな季節に、一枚だけ落ちてるなんて」
 そういえば子どもの頃、お姉ちゃんに聞いたことがある。ここの桜吹雪に願いをかけると叶うって。
 本当かな?
 桜吹雪じゃないし、道端に落ちていた一枚の花びらだけど。
 半信半疑で私は願掛けをした。
 ──那津さんとまた笑い合えますように。
 そして、儚げに落ちている桜の花びらを拾うと、ピンクと黒のチェック柄のお財布にしまった。


 那津さんとの出会いからちょうど3年目の今日、私は製菓学校の授業を終えると、中学時代からの親友である近藤清花こんどうさやかと待ち合わせをしている三鷹駅へと向かった。
 生ぬるい風が頬をかすめると、ふと空を見上げた。
 青く澄んだとはお世辞にも言えない東京の空はくすんでいて、それでも太陽の光は眩しく、痛かった。
 ──ねぇ、那津さん。
 私は今、パティシエールを目指して頑張ってるよ? この姿、那津さんにも見てほしいな。
 ──那津さん、大好きだよ──……。


美月みづき!! 合コン行こう!」
 コーヒーの匂いが漂うカフェの店内に、親友のそんな声が響いた。
 幸い混んでいたため、その声はザワザワという雑音で掻き消されて、私は内心ホッとした。
 会って駅ナカのカフェに入るや否や、一番にそう口にした清花。
 くりくりっとした丸っこい黒色の瞳を輝かせて、清花は今日も私を合コンに誘う。
 さては今日もこれが目当てだったのかな? と苦笑いが込み上げる。
 思えば清花には会う度に合コンに誘われている気がする……。
 再び心の中で苦笑すると、私はお決まりの答えを返した。
「だから、私は行かないって」
 毎度のことながら、ため息混じりの返事に対して、清花は「えー、行こうよぉ!」と女の私に対して猫なで声を出し、口をへの字に尖らせた。
「……私はもう恋愛したくないの! っていうか、しない」
 すると今度は眉をしかめて、ジト目で私のことを見る清花。
「いつまで引きずってる気? 那津なつさんはもう──」
「分かってる! だけど……」
 さっきの清花以上に大きい声が出て、周囲の注目を集めてしまい、私は口を噤んだ。
「だけど? なに?」
 珍しい清花の真剣な表情に、心臓がバクバクと音を立てて動揺している。背中には変な汗まで伝ってきていて、清花相手になんで?
 動悸の意味はわからないけど、きっと那津さんのことを思い出したせいだ。
 那津さんの話題が出るだけで、こんなにも動悸が起きる。
「……諦めたくないの。少しでも希望がある限り。例えその希望が0.1%に満たなくても──私は那津さんを待っていたいの」
 予想通り、清花は不服そうな表情を浮かべた。そういう時にアイスコーヒーを一気に飲み干すお決まりの仕草を見せると、ひと言。
「美月って、マジで頑固」
「ちょっと! 一途って言ってよね!!」
 そんな話をしながら、私はカプチーノへと手を伸ばした。
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