そしてヒロインは売れ残った

しがついつか

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学科の選び方

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貴族と平民でその難易度に大きな差はあるものの、基礎として1学年の間は全員共通で一般科目の講義を受ける決まりとなっている。

だが2学年からは個人の能力を伸ばすためであったり、希望する就職先に有利な知識を得られる科目を自ら選ぶようになっていた。
貴族令嬢専用の淑女科と領地経営を学ぶ経営科を除くと、普通科、騎士科、商業科、工業科から選択が可能だ。

選択するにあたって騎士科、工業科は適正検査を受ける必要がある。
安全面を考慮して、健康面に問題がある者は騎士科を選択できないようになっているし、火や刃物を怖がる者は工業科を選択できない。


普通科は言語、歴史、数学、マナーなどを満遍なく学ぶ特化したものがない学科だが、適性検査は存在しない。
平民の生徒の大半はこの学科を選択する。

リーリエも例に漏れず普通科を選択した。
モモとエミリアも普通科だが、エマは興味があり適性もあったため工業科を選択した。







「てっきりモモは、いい男を狙って騎士科に行くのかと思ってた」


寮の部屋で学科選択についての話になったとき、普段はイケメン探しに勤しんでいるモモが珍しく部屋にいたので、リーリエは冗談でそう言った。

騎士科を選択するのはほとんどが男子生徒で、女子生徒は毎年片手で足りる程度しかいない。
実技の実習では貴族と平民の生徒が合同で行うことが多いため、貴族の男子生徒とお近づきになりたいなら騎士科を選んでもおかしくないと思ったのだ。

モモはきょとんとした顔をリーリエに向けた。


「え、行かないよ。モモは騎士になりたいわけじゃないもん」


まあそうだよなと思う。



「はは、そりゃそうだよね。ごめんごめ…」
「モモはいろんな国の言葉を喋れるようになって、いろんな国のイケメンを虜にするのよ!」
「…ん?」


リーリエの言葉に被せるようにしてモモは宣言した。


(この子、今なんかすごいこと言わなかった?)


話を聞いていたエマとエミリアも、モモを凝視している。



「いろんな国の言葉?」
「そうよ。騎士とか工業を選んじゃうと専門職になっちゃうから、就職先の選択肢が狭まるじゃん? 商業は悪くないけど、モモは商人になりたいわけじゃないし、お店出したいわけじゃないから。そうなると普通科行くしかないんだけど、普通科の方が他の学科より学べる言語多いって聞いたの。外国語が話せたらそれだけで就職に有利だし」


(割としっかりしてる!)


ヒロインだ何だ言って、周囲を困らせてきた女の発言とは思えないほどしっかりしていた。

短い付き合いのリーリエとエミリアが驚いたのだ。
長年彼女を見てきたエマは、驚きすぎて『目の前にいるのはモモの偽物なんじゃないか』と疑い始めている。

リーリエ、エマ、エミリアの3人は思わず顔を見合わせてしまった。
彼女たちの困惑に気付かないモモは、胸を張って言った。


「モモと話すためにマーズ王国語を学ぼうとしてくれる人は、いっぱいいるんだけど、話せないうちは可哀そうな思いをさせちゃうからね。だから私の方が話せるようになってあげるの。そうすれば、安心してモモに愛の言葉を囁けるじゃない?」
「あ、そう…」


やっぱりモモである。
彼女のために王国語を学ぼうとしてくれる人が、いったいどこにいるというのか。
その自信はいったいどこから出てくるのか、わからない。


意外と将来をまじめに考えていることに感心したような、動機が不純で呆れたような。







2学年に進級してみると、モモは周囲が驚くほど熱心に外国語の習得に取り組んだ。
だが相変わらず良い男に声をかけることはやめていないため、本当に同一人物なのかと驚かれていた。
実は双子で、授業中だけ入れ替わっていると言われたら、誰もが納得するだろう。



モモは『愛に歳の差なんて関係ないからね!』と言って、新入生にも声をかけているようだった。

例年、問題児が学園にいる時は、在学中の兄弟や親戚から情報を得ることが多い。
そのため伝手がない者は何も知らずに問題児と遭遇しトラブルが発生することがあった。

今年は、新入生たちに教師たちから事前説明が行われるという異例の事態となった。
主に貴族令息への被害を考慮してのことである。

教師たちの尽力があってか、モモは2学年になっても相変わらず『みんなに愛される』学園ライフを送ることができていた。


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