生存率0%の未来世界からの脱出

第一章 剣の刺さった狼犬

２話 スキャン機能

　ほ、他に機能は……インターネットはやはり電波が無いようですね。それ以外は……動画サイトに見たことあるのが殆どですね……電波もないので役に立ちませんね……ん？　これは……

『スキャン』と目のアイコンの下に文字が表示されていた。

　なんでしょうか？　押してみましょう……

　スキャンをタッチすると、『対象を映してください』とカメラのレンズの様な物が表示される。

　試しに、この植物にでも当ててみましょう。

　池の周囲に生えている紫色のタンポポ似た植物に画面を収める。

　ゲージが表示され０％から徐々に数値が上がっていく。

　直ぐに１００％になって、文章が表示された。

　おお！　凄いです！　

『ベノムフラワー』
　タンポポが世界変異の影響によって生まれた亜種。
従来のタンポポとは異なり、その植物を摂取すると、急激な心停止により５分以内に死亡する。その死亡した生物を栄養素として成長しているのではないかと考えられている。その毒性は青酸カリの数千倍以上で、従来の毒物物質を大きく上回る。

　た、タンポポの亜種！？　こんな綺麗な見た目なのに、猛毒なんですか！？　怖すぎです……『世界変異』ってなんでしょうか？　このスマホ的な物には……説明がないですね……ネットがあれば検索で一発なのですが仕方ありません。

　これ面白いですね。お魚さんにもやってみましょう。

　相変わらず水面付近で泳いでいる小魚に向かってスキャンをする。

　今回はさっきと比べてゲージの溜りが遅いですね……動いているからでしょうか？

　数秒程経過して、ようやく１００％になる。

『該当データなし　バージョンアップを試みてください』

　該当なしもあるんですね。バージョンアップといいましても、電波が無いですし……やり方も分からないです。無理ですね。

　他もスキャンしてみましょうか、何かあるかもしれませんし……

　人骨をスキャンするが風化し過ぎているせいか、『エラー』と表示されて出来なかった。それ以外はその辺に転がっている石が花崗岩であることが分かったぐらいだった。

　こんなものですか……あ、そういえば、他に調べていませんでしたね、やりたくはないですけど……

　一応、人骨のポケットなどを漁るが、特に何も入っていない。

　残る道は……あの化け物の所に行くしかないようですね……行きたくはありませんが、ここで待っていても将来性は無いですし……

　……ッ！

　男子生徒の頭が何度も何度も化け物によって潰されている光景がフラッシュバックする。

　全身が締め付けられて、脈打つ恐怖に襲われる。

　一歩間違えたら同じ運命をたどる事が容易に想像できてしまう。

　なんで、こんな理不尽な事に私が巻き込まれているのでしょうか！？　順調な人生だと思ったのに……！

　怒りがこみあがって、歯と拳に力が入る。

「……」
　深い溜め息を吐く。

　嘆いていても仕方ありません、あの文章を信じて、音を立てないようにしましょう……

　洞窟の中に足を踏み入れる、出来るだけ足音を消そうとするが、それでも、少しは出る。

　捕まる気しかしません……いっそ、裸足で歩いた方がいいような気が……いや、待ってください！　もっといい手がありました！

　白骨死体の所に進む。

　死者への冒涜ですが、許してください！

　罪悪感を感じながらも白骨死体の服を剥ぎ取る。風化している為、容易に裂けた。

　それを足に巻き付ける。

　これでしたら、布で衝撃を吸収できて、音もなくなるでしょう！

　洞窟に足を踏み入れる。やる前と比べて大幅に音が軽減している。

　よし！　足音がしません！　これなら、多分……大丈夫そうです……

　視力が無いという事は光も認識できないと思うので、多分、光も問題ないはずです！　駄目でしたら、あの時襲われていたでしょうし……

　そういえば……このスマートフォン的なの、ライト機能もありますね。

　ライトの文字をタップすると、光が広がる。スマホよりも範囲が広い。

　いいですね。所で、残りのバッテリーは……

　画面にはバッテリー表示が見当たらない。

　設定の所を開いてみるが、それらしい項目は無かった。

　バッテリー表示が無いですね……ずいぶん放置されていたのに電源が付きましたし、もしかしてオーバーテクノロジーとかで電源が切れることが無いとかでしょうか？　そうでしたらいいですけど……無くなったら、スマホを使いましょう。

　ゆっくり慎重に進む。

　血だまりのある場所まで進んだ。

　来ましたね……

　血が垂れた痕跡のある道を見る。

　……ッ！

　人の頭が何度も何度も化け物によって潰されている光景がまた、フラッシュバックする。

　今から自分は死刑執行されにいく為に断頭台にすすむ……そして、化物が私の体をぐちゃぐちゃにする……

　想像してしまって、呼吸すらもまともにできなくなってしまう。

「……！」
　心が締め付けられるほどの苦しさで、その場でしゃがみ込む。

　震える手で、自分の胸を掴み、激痛がするほど握りしめる。

　自分に落ち着くように言い聞かせて、なんとか、まともに呼吸出来るようになった。

　か、考えたら駄目です……！　い、行きましょう……！

　震える足で一歩踏み出す。

　できるだけ背を低くして、足音を立てずに進む。

　何かを叩きつけている音が奥から響く。