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第二章 サイキック
14話 衣類の山
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「それからは見ていなかったが、まさか……主人を引き連れて戻ってくるとは思わなかった」
缶詰の中のお湯を水筒らしきものに注ぎ込む。
「そうだったんですか……」
水筒を私に渡す。
「お茶だ。火傷には注意しろよ」
「あ、ありがとうございます……」
なるほど、熱した石を使ってお湯を沸かしていたんですね。
水筒の中を見ると、白い湯気と混ざり合って、ほんのり香ばしい香りはする……しかし、水面には土汚れの様なゴミが浮いてある。
以前の私でしたら、気にしていたでしょうが、虫を食べた私ならこんなの気にもなりません。
水筒の中のお茶に口を付ける。お茶の味とほのかな暖かさが食道を通り抜けて、心が温もる。
非常にいいですね……とても落ち着きます……
「あの……私の両親とか縫子さんは見かけませんでしたか?」
期待は薄いと分かっていても1%の可能性を信じて聞く。
「分からないな」
淡々と返答する。
「そうですよね……」
分かってはいたが、それでも肩が下がってしまう。
「だが、あそこにある衣類は、死体……いや、助かる見込みがない奴から取ったものだ」
「……えっ!?」
あの服の山は全部、死体から!?
「こんなことはしたくはなかったが、生きる為だ。死にたくなければそうするしかない」
「そうですよね……生きるためには、追剥もやむおえないですよね……」
食料の調達とかもそうですし……
「もしかしたら、お前の関係者も含まれているかもしれない」
「……!」
確かに、そうかもしれません!
「調べてみろ。一応、水洗いはしてあるから、感染はしないはずだ」
「!」
直ぐに服を一つ一つ調べる。
見つかって欲しい感情と見つけたくない感情が入り混じって手が震える。
この中に、衣類があるという事は、死んでいる事と同じ……!
ある服を見て手が止まる。
私と同じ制服だ。血が大量に付着していたかのような薄いピンク色のしみが残っていた。
「……!!」
縫子の笑顔が思い浮かんで、心に釘を打ち付けられたかのような衝撃が走る。
「お前と同じ服装だな」
い、いや、まだ決めつけるのは早いです! 名前は……!
震える手で襟に付いてあるタグを見る。
『多々井』とネームペンで書いてある。
「……」
全身の力が抜けて肺から空気が漏れる。
「知り合いではなかったか」
「そうですね……」
この方には失礼ですが、良かったです……
「それが、幸運であったことを祈ろう」
「……?」
少し意味が分からなかった。
「それで、お前はどういう経緯でここに来たんだ? どうやってスノーを手なずけた?」
「そうですね、実は……」
これまでの経緯を話す。
「そうか、そんな感じか」
「そうですね……」
「そのスマートウォッチ的な物、これだろ?」
緑のリュックサックから私と同じ、スマートウォッチ的な物を取り出す。
「あ、私と同じです!」
「なるほどな……道中の白骨化した死体から拾ったんだ。だが、触っても装着しても何もならなかった」
「画面とか表示されなかったんですか?」
「全くな。分解して、何かに使えないかと思っていたが……お前が付けてみろ」
「分かりました」
近くで見ると、改めて私と全く同じものであることが分かる。
前のスマートウォッチ的な物を外して、貰ったものを腕に装着する。
瞬間、文字と共に画面が表示される。
「起動しました!」
画面には、見た事ない言語で『ようこそ、市民番号A─12番』と表示されている。
「本当に起動したのか……?」
訝し気にスマートウォッチ的な物を見ている。
「画面が見えませんか?」
「全くだ。お前の腕しか見えない」
「そうなんですね。私だけ……どうして……?」
画面を操作する。
「スキャン機能もありますし、私の持っているものと同じですね」
「そうか」
「ボイスレコーダーがありますが、その前に……これをスキャンしてみましょう」
私が装着していたスマートウォッチ的な物をスキャンする。
缶詰の中のお湯を水筒らしきものに注ぎ込む。
「そうだったんですか……」
水筒を私に渡す。
「お茶だ。火傷には注意しろよ」
「あ、ありがとうございます……」
なるほど、熱した石を使ってお湯を沸かしていたんですね。
水筒の中を見ると、白い湯気と混ざり合って、ほんのり香ばしい香りはする……しかし、水面には土汚れの様なゴミが浮いてある。
以前の私でしたら、気にしていたでしょうが、虫を食べた私ならこんなの気にもなりません。
水筒の中のお茶に口を付ける。お茶の味とほのかな暖かさが食道を通り抜けて、心が温もる。
非常にいいですね……とても落ち着きます……
「あの……私の両親とか縫子さんは見かけませんでしたか?」
期待は薄いと分かっていても1%の可能性を信じて聞く。
「分からないな」
淡々と返答する。
「そうですよね……」
分かってはいたが、それでも肩が下がってしまう。
「だが、あそこにある衣類は、死体……いや、助かる見込みがない奴から取ったものだ」
「……えっ!?」
あの服の山は全部、死体から!?
「こんなことはしたくはなかったが、生きる為だ。死にたくなければそうするしかない」
「そうですよね……生きるためには、追剥もやむおえないですよね……」
食料の調達とかもそうですし……
「もしかしたら、お前の関係者も含まれているかもしれない」
「……!」
確かに、そうかもしれません!
「調べてみろ。一応、水洗いはしてあるから、感染はしないはずだ」
「!」
直ぐに服を一つ一つ調べる。
見つかって欲しい感情と見つけたくない感情が入り混じって手が震える。
この中に、衣類があるという事は、死んでいる事と同じ……!
ある服を見て手が止まる。
私と同じ制服だ。血が大量に付着していたかのような薄いピンク色のしみが残っていた。
「……!!」
縫子の笑顔が思い浮かんで、心に釘を打ち付けられたかのような衝撃が走る。
「お前と同じ服装だな」
い、いや、まだ決めつけるのは早いです! 名前は……!
震える手で襟に付いてあるタグを見る。
『多々井』とネームペンで書いてある。
「……」
全身の力が抜けて肺から空気が漏れる。
「知り合いではなかったか」
「そうですね……」
この方には失礼ですが、良かったです……
「それが、幸運であったことを祈ろう」
「……?」
少し意味が分からなかった。
「それで、お前はどういう経緯でここに来たんだ? どうやってスノーを手なずけた?」
「そうですね、実は……」
これまでの経緯を話す。
「そうか、そんな感じか」
「そうですね……」
「そのスマートウォッチ的な物、これだろ?」
緑のリュックサックから私と同じ、スマートウォッチ的な物を取り出す。
「あ、私と同じです!」
「なるほどな……道中の白骨化した死体から拾ったんだ。だが、触っても装着しても何もならなかった」
「画面とか表示されなかったんですか?」
「全くな。分解して、何かに使えないかと思っていたが……お前が付けてみろ」
「分かりました」
近くで見ると、改めて私と全く同じものであることが分かる。
前のスマートウォッチ的な物を外して、貰ったものを腕に装着する。
瞬間、文字と共に画面が表示される。
「起動しました!」
画面には、見た事ない言語で『ようこそ、市民番号A─12番』と表示されている。
「本当に起動したのか……?」
訝し気にスマートウォッチ的な物を見ている。
「画面が見えませんか?」
「全くだ。お前の腕しか見えない」
「そうなんですね。私だけ……どうして……?」
画面を操作する。
「スキャン機能もありますし、私の持っているものと同じですね」
「そうか」
「ボイスレコーダーがありますが、その前に……これをスキャンしてみましょう」
私が装着していたスマートウォッチ的な物をスキャンする。
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