生存率0%の未来世界からの脱出

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第二章 サイキック

14話 生きる希望

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『スキャ―トフォン』
 2400年のデープカンパニーによる技術革新により、従来の充電は不要となり、人の体温を通じて充電出来るようになった。
 特にスキャン機能というのは、対象をスキャンするだけで詳細な情報を示してくれる。内部情報に入っている為、オフラインでも使用可能。2420年ごろには生活必需品の一つとして、世界中で使用されている。

「スキャートフォンというらしいですね」

「スキャートフォンか……それにしても、本当に見えてる様だな」

「信じてくれるんですか?」

「クレイジーには見えない」

「クレイジー……」
とりあえず、信じてくれてよかったです。

「次にボイスレコーダーを再生してみます」

 ボイスレコーダーの日付は2522/3/23と表示されている。

 これも、あの時と同じ日付ですね。

「再生してみます」
 ボタンを押すと、音声が流れ始める。

「何だこれは!?」
 驚いた声を上げる。

「聞こえるんですか?」

「聞こえはするが……何を言っているのか全く分からない」
「聞こえてはいるんですね……」
 良かったです。これで私がまだ正気を失っていないことが証明されました。

「何を言っているのか、分かるのか?」

「分かります」

 やっぱり、私にはこの音声を解読できるようですね……

『世界変異が起きて、ここに来てから一週間……未だに救助は来ないわ。通信は復旧しないし、いったい何が起きてるの? 本当に世界の終わりの始まりだというの? 嫌だ……怖い……誰か……!!』

 音声からガラスを引っ搔いているような奇声が聞こえる。

『そんな……なんで……?』
 音声が切れる。

「……」
 世界変異……なにか大変なことが起きたそうですね……

「どうだった?」

 聞いたことを説明する。

「そうか、この世界では化け物が住まう何か大きな出来事があったそうだな」

「そのようですね……」

「にしても、2522年か……まるで未来の地球みたいだな」

「似てはいますが、私の世界にあんな化け物はいませんでしたし、パラレルワールドだと私は考えています」
 地球の未来がこんなことになっているなんて信じたくありませんし……

「その可能性もある。だが、どのみち、危険である事には変わりない」

「そうですね……」

「お前は一体何者なんだ? なぜ、この世界の言語が分かる?」

「それは……私にも分かりません……」
 言われてみれば、おかしいですよね。この世界の技術が使えますし、言語も分かりますし……

「そうか……気にはなるが、仕方ないな」
 意外にも、それ以上追求せずに水筒内のお茶を飲む。

「……」
 本当に謎です、考えれば考えるほど不自然ですが、本当に分からないですし……

「ここから少し離れた所に大きな建物があった。俺は入れなかったが、お前なら入れるかもしれないな」

「そうなんですか?」

「ああ、指紋認証の様な扉があった。電源は入っていたから、お前なら、さっきのスキャートフォンの様に行けるかもしれない」

「そう……かもしれませんね……」
 大きな建物、気にはなりますが……

「電源が残っているという事は、滅んだのはつい最近かもな。もしかしたら、何か役に立つものがあるかもしれない」

「そう、ですね……ですが……」
 言うべきか躊躇してしまう。

「なんだ? 家族や友達の事が気になるのか?」

「そ、そうです……」
 自分でも驚くほど人見知りが発生していた。思ったことが直ぐに言えない……

「だろうな。で、探しに行きたいのか?」

「はい、どうしているか心配で……スノーと一緒に探しに行った方がいいかなと……」
 こんな状況ですし、両親や縫子さんの事を考えると、不安で頭がおかしくなりそうです……

「そいつはお勧めしない。全く手掛かりが無い上に、外は危険だらけだ。お前がいって何になる?」
 睨みつけるように言う。

「そ、そうですが……スノーが居てくれたらどうにかなるかなと……」

「確かに、スノーがいるな。だが、恐らくだが世界中の人間がここに飛ばされたはずだ。世界人口は約80億人、その中の特定の人物を探すことが本当に可能だと思うか?」

「ウッ……!」
 心に釘を打ち付けられたかのような衝撃が走る。

 80億人……! その通りです。その上、化け物が徘徊していますし、生存率を考えると……もう二度と会えないのでしょうか……?

 考えれば考えるほど、心に亀裂が広がって壊れそうになる。人前で涙を見せたくないのに、視界が涙で歪む。涙を拭っても拭っても止まらない。

 せめて声だけでも我慢しようとするが、どうしても漏れてしまう。

「だが、可能性はゼロではない」
 声を上げる。

「……」
 可能性はゼロではないって……

「……!」
 前から肩を掴まれる。
 顔を上げそうになるが、乱れた顔を見せたくない為、あげない。

「俺たちもスノーも80億分の1で出会ったんだ」

「……!」
 驚いて顔を上げてしまう。

「だから、生きるんだ。生きていれば希望はある!」
 私を見るフロストの目は真っすぐしていて、力強かった。


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