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第二章 サイキック
16話 風呂の代わり
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「は、はい……!」
戸惑いながら返事をする。いつの間にか涙は完全に引いていた。
「よし、そういうことだ。だから、今は少しでも生き残ることを考えるんだ」
元の場所に戻る。
「そうですね……!」
生き残ること……フロストさんの言う通りです! 可能性はゼロに近いですが、ゼロではないんですから……! だから、生きないといけないですね!
「それにだ、もしかしたら、この世界の技術なら人を探す装置があるかもしれない」
「スキャートフォンもありますし、不思議ではないですね」
「ああ、だから行く価値がある」
「!」
お腹が激しくなる。
「腹が減っているのか?」
「はい……ここにきてから、まともな食事をしていないので……」
背中にお腹がくっつきそうなほどお腹がすきました……空腹を通り越して痛いです……
「そうか、受け取れ」
何かを私に投げる。
両手でキャッチすると……サバの缶詰だ。
「お前が来た記念パーティーだ。豪勢ではないが、よく分からない虫よりはマシだろう」
「い、いいんですか!?」
歓喜の余り声が裏返る。
「目的地にたどり着く前に倒れたらたまらないからな」
「ありがとうございます!」
直ぐに鯖缶を開ける。
青臭さがあったが、それもいい香りに思えて食欲をそそられる。
「あ、えっと……」
箸は……
戸惑っていると、細い木の枝を二本渡される。
「ありがとうございます!」
それを受け取って、枝を箸代わりにして食べる。
「……!」
しみ込むような甘いたれが舌中に広がり、天国に上るような美味しさだ。
「美味しいです!!」
「良かったな」
「……どうして、フロストさんはこんなにも私によくしてくれるのでしょうか?」
今の所は、フロストさんにメリットはりませんし……
「そうだな……元々は、誰も受け入れるつもりは無かった。食料も自分の分を確保するだけでも一苦労だからな」
「そうですよね……でしたら、どうしてですか?」
「お前が特殊だからだ。ただの子供だったらここまでしない」
「特殊、つまり、普通の子供だったら……」
「非常だがそういうことだ……」
「……」
こんな世界ですし、仕方ないかもしれませんね……
フロストさんと同じ立場でしたら……いや、追い出すなんてできませんね。私は、そこまで非情にはなれません……
「スノーもどうぞ」
半分ぐらい食べた缶詰めをスノーの前に出す。
「ワン!!」
嬉しそうに吠えるが、首を横に振る。
「食べないんですか?」
「ワン! ワン!!」
吠えた後、缶詰の事を見向きもせずに洞窟の外に走っていく。
「どこに行った?」
「自分で食料を到達してくるからいいと言ったような気がします……」
また、人肉を食べているかもしれませんが……食料難な状況ですし、触れないでおきましょう……
「犬語も分かるのか?」
「いいえ、なんとなくです」
ペットなんて飼ったこと無いのに……まるで、長い間一緒に居ていたような気がします。
「今更ですけど、フロストさんこそ何者なんですか? サバイバルの知識があるように見えますし」
「……アメリカ海兵隊をしていた。」
少し遅れて返答をする。
「そうでしたか、納得です」
道理で頼りがいがあるという訳ですね。
「それはそうと、服、着替えた方がいいぞ」
「やっぱり臭いますか?」
若干汗の酸っぱい匂いがしますし、べたべたですし……
「そこまで酷くはないが、どうせ着替えてないだろ?」
「そうですが着替えが……」
「あそこから適当に取れ」
衣類の山に顔を向ける。
「……えっ?」
亡くなった方の服を着るのですか!?
「抵抗はあるだろうが、仕方ない。特に下着と靴下は変えた方がいい。病気になっても対処できないからな」
「病気……」
確かにそうですね、医療機関もないですし、致命傷になりかねないですね……
「女の下着はないが、男でも無いよりはマシだろう」
「分かりました。あの……風呂とかはどうしているのでしょうか?」
結局、入れなかったですし……
「風呂か……この世界では川で水浴びは自殺行為だからな。これを使っている」
ペットボトルを私に投げる。
中はお湯の様で暖かい。
「これで最低限は洗える」
「ペットボトル……」
無いよりはましですか。
「あの、もっとお湯の入ったペットボトルはありませんか?」
3本ぐらいあれば、全身洗えそうです。
「悪いが、水を確保するのにも命がけなんだ。贅沢をしたいのなら、自分で確保するんだな」
「そうですよね……すいません……」
「着替え終わったら、声を掛けろ。俺は出ているからな」
フロストは服の暖簾をくぐって出て行った。
「あ、ありがとうございます……」
私が出て行くつもりでしたが、こういう気遣いはありがたいです。
服は……どれにしましょうか? 正直言って、亡くなった方の服を着るのは物凄い気が引けますが……仕方ありませんよね……
戸惑いながら返事をする。いつの間にか涙は完全に引いていた。
「よし、そういうことだ。だから、今は少しでも生き残ることを考えるんだ」
元の場所に戻る。
「そうですね……!」
生き残ること……フロストさんの言う通りです! 可能性はゼロに近いですが、ゼロではないんですから……! だから、生きないといけないですね!
「それにだ、もしかしたら、この世界の技術なら人を探す装置があるかもしれない」
「スキャートフォンもありますし、不思議ではないですね」
「ああ、だから行く価値がある」
「!」
お腹が激しくなる。
「腹が減っているのか?」
「はい……ここにきてから、まともな食事をしていないので……」
背中にお腹がくっつきそうなほどお腹がすきました……空腹を通り越して痛いです……
「そうか、受け取れ」
何かを私に投げる。
両手でキャッチすると……サバの缶詰だ。
「お前が来た記念パーティーだ。豪勢ではないが、よく分からない虫よりはマシだろう」
「い、いいんですか!?」
歓喜の余り声が裏返る。
「目的地にたどり着く前に倒れたらたまらないからな」
「ありがとうございます!」
直ぐに鯖缶を開ける。
青臭さがあったが、それもいい香りに思えて食欲をそそられる。
「あ、えっと……」
箸は……
戸惑っていると、細い木の枝を二本渡される。
「ありがとうございます!」
それを受け取って、枝を箸代わりにして食べる。
「……!」
しみ込むような甘いたれが舌中に広がり、天国に上るような美味しさだ。
「美味しいです!!」
「良かったな」
「……どうして、フロストさんはこんなにも私によくしてくれるのでしょうか?」
今の所は、フロストさんにメリットはりませんし……
「そうだな……元々は、誰も受け入れるつもりは無かった。食料も自分の分を確保するだけでも一苦労だからな」
「そうですよね……でしたら、どうしてですか?」
「お前が特殊だからだ。ただの子供だったらここまでしない」
「特殊、つまり、普通の子供だったら……」
「非常だがそういうことだ……」
「……」
こんな世界ですし、仕方ないかもしれませんね……
フロストさんと同じ立場でしたら……いや、追い出すなんてできませんね。私は、そこまで非情にはなれません……
「スノーもどうぞ」
半分ぐらい食べた缶詰めをスノーの前に出す。
「ワン!!」
嬉しそうに吠えるが、首を横に振る。
「食べないんですか?」
「ワン! ワン!!」
吠えた後、缶詰の事を見向きもせずに洞窟の外に走っていく。
「どこに行った?」
「自分で食料を到達してくるからいいと言ったような気がします……」
また、人肉を食べているかもしれませんが……食料難な状況ですし、触れないでおきましょう……
「犬語も分かるのか?」
「いいえ、なんとなくです」
ペットなんて飼ったこと無いのに……まるで、長い間一緒に居ていたような気がします。
「今更ですけど、フロストさんこそ何者なんですか? サバイバルの知識があるように見えますし」
「……アメリカ海兵隊をしていた。」
少し遅れて返答をする。
「そうでしたか、納得です」
道理で頼りがいがあるという訳ですね。
「それはそうと、服、着替えた方がいいぞ」
「やっぱり臭いますか?」
若干汗の酸っぱい匂いがしますし、べたべたですし……
「そこまで酷くはないが、どうせ着替えてないだろ?」
「そうですが着替えが……」
「あそこから適当に取れ」
衣類の山に顔を向ける。
「……えっ?」
亡くなった方の服を着るのですか!?
「抵抗はあるだろうが、仕方ない。特に下着と靴下は変えた方がいい。病気になっても対処できないからな」
「病気……」
確かにそうですね、医療機関もないですし、致命傷になりかねないですね……
「女の下着はないが、男でも無いよりはマシだろう」
「分かりました。あの……風呂とかはどうしているのでしょうか?」
結局、入れなかったですし……
「風呂か……この世界では川で水浴びは自殺行為だからな。これを使っている」
ペットボトルを私に投げる。
中はお湯の様で暖かい。
「これで最低限は洗える」
「ペットボトル……」
無いよりはましですか。
「あの、もっとお湯の入ったペットボトルはありませんか?」
3本ぐらいあれば、全身洗えそうです。
「悪いが、水を確保するのにも命がけなんだ。贅沢をしたいのなら、自分で確保するんだな」
「そうですよね……すいません……」
「着替え終わったら、声を掛けろ。俺は出ているからな」
フロストは服の暖簾をくぐって出て行った。
「あ、ありがとうございます……」
私が出て行くつもりでしたが、こういう気遣いはありがたいです。
服は……どれにしましょうか? 正直言って、亡くなった方の服を着るのは物凄い気が引けますが……仕方ありませんよね……
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