生存率0%の未来世界からの脱出

UG21

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第二章 サイキック

23話 制圧作戦

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『オールイートの実』
 遺伝子組み合わせによって生まれた果実。栄養価は非常に高く、栄養ドリンクの主要成分としても使用されている。特徴として、適切な環境であれば一時間以内に種から熟成させることが出来る。

 たった一時間、速いですね……本当に前の世界とは常識が違うようですね。

「もしかしたら、食料をここで育てることが出来るかもしれません」

「そうか、成長するまで餓死しなければ食べられるな」

「いいえ、それが……一時間で採取が出来ると書いてあります」

「本当か!? いや、この世界だったら不思議ではないか……」

「局長室にクラフトツールパックがあって、それがいるそうです」

「ここの荒れ具合からして数年以上は確実に経過していると思うが、種とか劣化してないか?」

「……どうでしょうか?」
 言われてみれば確かに、あのマニュアル通り成功するとは限りませんね。当時と状況が違っていますし……

「見た所は種は劣化しているようには……あ、元々を知らないので、判断できないですね……」

「だが、屁理屈言っても仕方ない。逆に無事な可能性もあるな」

「そうですね……どうしましょうか?」

「俺はアールの判断に従う」

「私の判断ですか? こんな15歳の女子高校生に……」

「見た目に反して、下手な大人よりはよほどしっかりしている。それに、俺は特殊能力は無いからな。アールの方が状況判断に適している」

「そうですか……ね? まぁ、分かりました。では、希望がある方に掛けましょう!」
 クラフトツールパックというのが気になりますし!

「イエッサー、キャプテン!」
 笑みを浮かべる。

「キャプテン……?」
 凄く、違和感があります……

「今度からアールの事はキャプテンと呼ぶことにした」

「はぁ……」
 よくわかりませんが、まぁ、いいや……

「局長室はどこでしょうか?」

「ここにそれらしい物がある」
 壁に貼り付けている紙に顔を向ける。

ここの案内地図の様で、受付けや警備室などの各部屋に名前が書いてる。

「テレポートステーション……」
 4階のある部屋の名前にテレポートステーションと書いてある。

「そんなのもあるのか、何でもありだな」

「局長室は一番上なので、ついでに行ってみましょうか」
 気になりますし!

「そうだな」

「ワン!!」
 嬉しそうに吠える。

 
 エレベーターの方を見ると、扉は変形し、明らかに壊れている。

「流石に壊れているようですね」

「例え、壊れてなかったとしても乗る気は起きないな」

「点検もされてないですし、危険ですね。階段で行きましょうか」

「まて、一気に上まで登らない方がいい」

「そうなんですか?」

「さっきの化け物がまだ他の階にいる可能性がある。一気に登ると挟み撃ちにあう可能性が高い」

「確かにそうですね……この先、強い化け物が居たら逃げられないかもしれないですし、制圧するしかないですね」

「キャプテンが頑固者でなくて安心した」

「……」
 やはりキャプテン呼ばわりは違和感があります……

 階段で2階に上る。

 音をなるべく立てずに、そっと廊下を覗くと、複数の陶器物が見える。

 全く微動せず止まっている。私に気が付いていなようだ。

「……」
 今でしたら、大丈夫そうですね。

 スキャートフォンで陶器物をスキャンする。

『該当データなし バージョンアップして下さい』
 と表示される。

「どうだった?」
 小声で聞いてくる。

「駄目でした……これもバージョン不足なようです……」

「そうか、何かわかればよかったんだけどな」

「全くです。でしたら仕方ありません。やりましょう!」

「俺は背後を警戒する。キャプテン、前方は任せたぞ!」
 拳銃を取り出す。

「はい!」「ワン!!」
 廊下に出る。

 数体の陶器物が私達に気が付き、浮遊しながら向かってくる。中には両手を広げている遠距離攻撃の陶器物も見えた。

 相変わらず動きも姿も不気味だが、倒せる相手と分かったら恐怖は無い。

「スノーは攻めずに私を守ってください! 私は遠距離の土偶を打ち返します!」
 効率よく戦わないと、私がエネルギー不足でダウンしてしまうので!

「ワン!!」
 体から剣を抜き、私の前から動かない。

 壊れたドアから追加の陶器物が現れ、向かってくる数が増える。

 両手を広げている陶器物から、黒く燃え上がる球体が放物線を描いて向かってくる。

「!!」
 直ぐに、それをサイコキネシスで止める。

 そして、なるべく密着している所に撃ち放つ。

 小さな爆発音と共に、数体の陶器物が粉々に飛び散る。

 無事な陶器物がスノーに襲い掛かるが、遅すぎた。

 陶器物が剣を振り下ろす前に、素早い動きで、スノーが剣で薙ぎ払う。

 スノーによって巻き込まれなかった陶器物も粉々に散った。

 廊下には視認する限り、土偶たちはいない。

「全員、倒しました! クリアです!」
 何とかなりました! スノーがいてくれて心強いです!

「ワン!!」
 嬉しそうに吠える。

「後ろも問題なかった。増援は来なかったからな」

「ありがとうございます!」

「にしても流石だな……これなら、俺の出る幕がないな」
 どこか、寂しげに言う。

「いいえ、フロストさんがいなかったら、ここまでこれなかったですし、それに戦闘経験や知識は非常に有用ですし、今みたいに、後ろを警戒して頂くことで安心して戦うことが出来ています」

「そうか、そういってもらえるとありがたい。差別もしないしな」

「差別なんて、そんな、生産性のないことはしませんよ」
 外国人という意識はしましたが、差別する意味が分からないですし、フロストさんはいい人ですし。

「はは、世界中がキャプテンみたいな人だったら生産力があがるだろうな」
 笑みを浮かべる。

「そうですね」
 私も自然と笑みが浮かぶ。

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