大事に育てた畑を奪われたからこの村は見捨てることにした ~今さら許しを乞うても無駄なんだよ~(完)

みかん畑

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33 地獄

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 真夜中、俺は悲鳴によって目覚めた。

「……何だ? 起きろネリス。様子が変だ」

 俺が一番に目覚めたらしい。

 抱き枕にしていたネリスから離れ、俺の背中にぴったりくっついていたカナミを引き剥がして揺する。

「カナミも起きろ!」
「ん……兄さん? この悲鳴は――」
「きっと盗賊がきたのよ!」
「まさか、村が襲われているのでしょうか」

 アリシアとミイナも起きだしてきた。
 ベッドを集めて全員同じ部屋で休んでいたから、起きだすタイミングも同じになった。

「セラは……?」
「ごめんなさい。トイレに入ってたわ」

 ちゃんとセラも居たことに安堵する。

「大丈夫か? 胃が痛むのか?」

 ダイババの行っていた奴隷ビジネスで一番胃を痛めてるのはセラだ。
 彼女がダイババの妹であることは、俺とカナミ、それにネリスとミイナしか知らなかった。

 だが、彼女はエリスを始めとするメイド達、アリシアにも自分の罪を告白し、謝罪していた。皆、セラのことは許す許さない以前に兄の被害者としか見ていなかったので、屋敷で嫌われたり不快に思われているという事実はない。

 それでも、セラがストレスを払拭できていないことは聞かなくても分かることだった。彼女の抱える痛みについては、俺も共に支えていきたいと思っている。女が抱える荷物は俺が引き受けて支えてやりたい。

「大丈夫。動けるわ」
「なら、すまないが一緒に行動してくれ。家に残していくのは心配だ」
「ええ、ありがとう」

 俺はカーテンの隙間から外を見た。
 まだ夜明け前だと言うのに空が明るい。

 俺の住処は村の端にあるので被害に遭ってないが、村では既に盗賊共による略奪が始まっているようだ。煙が見えるから、どこかで火の手も上がってるらしい。
 方角的には広場のある方だ。空が明るいのもそのせいか。

「対応した方が良さそうだ」
「私も行きます。破門された方々とはいえ、見殺しにはできません」

 気配探知のスキルを広範囲に使用する。
 大体、敵の動きは分かった。
 広場に村人を集め、分散した盗賊が金目になりそうなものを荒らしまわっているようだ。

「広場へ行こう。そこでケリがつくはずだ」
「ネリス、シールドを張りましょう」
「お二人とも、私も手伝います。強化魔法も幾つかは覚えているので」

 カナミ、ネリス、ミイナが手分けしてシールドの魔法を付与してくれた。
 効果時間は十五分程なので、小まめに掛けなおす必要がある。
 だが、壊れるまで物理攻撃を防いでくれるので期待したい。

「慎重に行くぞ」

 家を出て不穏な気配が立ち込めた村を移動する。
 村の中を動き回ってるのは、そんなに強くない連中だった。

 剣を剥き出しにしたまま、俺達は盗賊を始末しつつ先を急いだ。
 この襲撃を考案した頭を潰さなければならない。

「アリシア、まだ走れるか?」
「まだ……走れるから……置いていかないで……」
「置いていくわけないだろ」

 一番最悪なのは俺達がいない間に家に残っていたアリシアが襲われるパターンだ。
 だから、彼女も連れていくしかなかった。

 アリシアを連れていた為にやや遅れて、広場に到着する。
 広場には戦力値97の頭と、十三名ばかりの賊がいた。
 気配探知で人数は頭に入っていたが、厄介な数だな。

「おうおうおう。お揃いで……!」

 カシラっぽいコート姿のオッサンが馴れ馴れしく声をかけてくる。

「えーと、そこの男。タクマだっけか。お前が勇者なんだろ。知ってるぜ。大兄貴、ダイババをやったんだってなぁ」
「あいつはメナンドよ。ダイババの一味の元副首領。女を大勢殺して追放された真性のド屑よ」

 セラが男の名を口にする。

「おーおー、セラじゃねえか! また胸が大きくなったか? そんな野郎より俺の女になれよ! 可愛がってやるぜ!」
「ふざけないで。女を集団でいたぶるゲス野郎の癖に」
「兄弟の契りだよ。やっぱ女抱くのも仲間と一緒の方が楽しいからなぁ……」

 何となく嫌な感じがした。
 メナンドという男の纏う空気が、鼻につく。

「ダイババの敵討ちに来たのか?」
「そんなんじゃねえよ! お前らのお陰でこっちの業界は干上がっててねぇ。別のビジネスを始めたってワケさ」
「ビジネスだと? やってることはただの略奪だろうが」
「違うんだなぁこれが。なあ、タクマさんよ。俺とサシでやってくれねえか。断ったら人質は殺す」

 村の中心、広場の前にある村長の屋敷が燃えている。
 目印代わりに燃やしたんだろうな。
 広場にいる人質の首には剣が当てられている。
 村長は縮こまり、その隣にいるロシノは口の端から血を流していた。おおかた交渉人でも買って出たのだろうが、殴られるだけで済んで良かったな。この世には話の通じない人間もいるものだ。

「おい、どうした。ビビってんのか?」
「一つ聞く。なんでサシなんだ?」
「そりゃお前楽しいからだよ。こんな強い奴とサシでやらないのは俺からすりゃ勿体ないくらいだ!」

 本気で言ってるようだ。

「分かった。なら、サシでやろうか」
「お、ノリがいいねえ。お前みたいな奴は好きだなぁ」

 女を集団で犯すような屑に親愛など生まれない。

「カナミ、ネリス、セラ、ミイナも周りの敵を頼んだ。変な動きを見せたらやってくれ」

 女達が頷いてみせる。

 決闘の舞台は整った。
 メナンドと正面から向き合う。
 俺よりも頭一つ分、身長が高い男だ。
 風呂に入ってないのか、野生の匂いが強い。

「決闘の合図はどうする」
「そんなの空気感だろ。だがその前に夕飯を食っていいか? 村を焼く作戦練ってたら食いそびれてね」
「好きにしろ」
「そんじゃ、フルーツをね」

 メナンドが懐から果実を取り出す。
 俺はそれを見て驚きを禁じ得なかった。

「知ってるようだねぇ。ラッキーシード……んージューシィー」

 メナンドが黄金に輝く果実を喰らう。
 強制的にレベルを50も引き上げるアイテムだ。
 カルマオンラインのアニバーサリーキャンペーンで運営から配布された、レアアイテム……!

「すげえ……。力が一気に溢れてきやがる」

 メナンドの戦力値が147に達する。
 瞬間、俺の視界がブレた。

 メナンドに殴られ、アゴを打ち抜かれたのだ。

「あれれ? 俺の方が強くなっちまったか? まだへばるなよぉ!」

 こいつ……なかなか楽しませてくれそうだな。

「……ところで、初めからお前の狙いは俺だったのか?」
「へへ、一発もらっても元気そうじゃねえか。褒美に教えてやるぜ」

 メナンドが残忍に歯を見せた。

「お前は睨まれたんだよ。ある大貴族様に……」
「なるほど。しかし、世も末だな。勇者の暗殺を依頼するような馬鹿がいるのか?」

 こいつの言ってたビジネスって意味が分かってきた。

「俺も同感だよ。だが、こっちも生活が懸かってるんでねぇ。それに、お前が死んでもまた次の勇者が出てくるんだろ? だったら一人くらい俺がやっちまっても問題ないよな!」

 メナンドを鑑定する。だが、何らかのスキルに阻害され、鑑定不可になった。
 依頼主については調べられないか。

「厄介な奴だ。お前はここで殺す」
「冷静でいいねえ。あの女達をやってもお前が冷静でいられるか楽しみだぜ」
「……あ?」
「綺麗どころが多くて犯しがいがあるじゃねえか! これでも褒めてんだぞ? 仲間と山分けしてさっさとぶちこんでやりたいぜ!」
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