14 / 40
14.再び迷宮へ
しおりを挟む
不死の特性を生かせるのはエレナと別れた今しかない。将来的に彼女を危険から遠ざける為、今の内に次の階層の魔物の力を見ておきたい。そう思い探索を進めると、2層へ繋がる階段を見つけた。
「少し見ていくか」
一人の時なら、死んでも復活できる。多少の無茶は利くだろう。
2層の魔物はレベルが11~20で、一気に強さが跳ね上がっていた。階層間で強さが違うとは聞いてたが、まさかレベルの上限が10も上がるとはな。
聖剣の切れ味は素晴らしく、俺のレベルと相まって魔物をバターのように切り裂いた。1層と2層では魔素から生成される魔物が違うようで、トレントやゴブリンといった、初めて見る魔物も多かった。
(しかし、まるで相手にならんな)
あまりに敵が弱すぎて、欠伸が出そうだった。これはさっさと3層に上がった方が良さそうだな。と、思い始めていたところで、男の悲鳴が迷宮に響いた。
「ん?」
気になって悲鳴のした方へ走る。階層間を繋ぐ階段が近いから、上がってきた探索者がやられたんだなと思う。
急いで駆けつけると、足を斬られた探索者が必死に地面を這って逃げようとしていた。魔素で生成されたゴブリンが男の脚を何度も刺してる。
「彼から離れなさい!」
ゴブリンと意志疎通を図ってるのは、白い鎧を身につけた一人の少女だ。アイドル並みに顔が整っており、なんと黒髪である。
アイドル少女は階段におり、必死の呼びかけをしていた。しかし、ゴブリンは彼女の呼びかけを無視して、無事だったもう片方の脚をシミターで切り裂いた。
「ギャァァァァ!!!」
「止めなさいと言ってるでしょう!」
澄んだ声で叱責してるが、魔物は当然ながら無視している。
何をしてるんだこいつらは……。
敵と味方の強さを測る為、鑑定する。
ゴブリン:Lv19
ローレン:Lv14
リーナ:Lv13
なるほど、レベル差が5以上あるのに戦ったんだな。5は馬鹿にならない差だと思う。
体感だが、3くらいの差は運で突破できることもありそうだ。しかし、5以上レベルが離れてくると、地力の差が顕著に出始めると思う。エレナの魔法も全く通じてなかったしな。
さて、2人を見捨てて転移することは可能だが、さすがに見殺しにするのは良くないだろう。アイドルのように美しい少女を見殺しにしたら夢に見そうだ。
俺は近くに落ちていた小石をゴブリンに向かって投擲した。
ゴブリンが囀りながら振り向き、俺に気づく。
「あ、あなたは一体……」
ゴブリンが狙いを俺に変えた。
歩いて近づくと、ゴブリンは持っていた棍棒を振りかぶった。
だが、『危険感知』で安全な場所は見切れる。
棍棒を潜り抜けるように避けた俺は、肉薄して聖剣を鞘から抜き放った。
剣が一閃すると同時、ゴブリンの胴体に切れ目が入った。
今まで使ってた剣とは比べ物にならない切れ味だ。鎧をバターみたいに切り裂いた。
「ギギャ……」
お前はもう死んでいる。
ゴブリンの胴体がずるりとズレて地面に落ちる。
魔物は人間と違って身体が魔素で構成されている。
急所は異なるが、大きな傷を負えば身体を維持できなくなって魔素に戻る。
胴が離れたゴブリンは霧散し、魔素が消失した。
「う、嘘……」
「もう大丈夫だ」
「あ、ありがとうございます!」
少女は礼を言うと、男に駆け寄って所持していた瓶の中身を飲ませた。
(中身はポーションだろうな)
ゲームなんかだと一般的なアイテムであるポーションだが、この世界ではかなり値が張るものだ。魔法を使える者が少なく、魔法の価値が高いこの世界では、魔法の効果が付与された商品は軒並み高い。躊躇なく消費してる時点で、それなりの身分を有していることは分かった。
瞬く間に傷が塞がった男は、ぐったりとしたまま「ありがとう」と礼を述べてくる。ダメージは大きいが、命に別状はなさそうだ。
「助けてくれてありがとうございます。私はリーナ。彼は護衛のローレンです」
「俺はミトという。ただの探索者だ」
「ご謙遜を。今の剣捌き、只者ではないと感じました。申し訳ありませんが入口まで同行いただけないでしょうか。御礼はします」
リーナは金貨を5枚取り出した。金貨1枚で3ヶ月は暮らせる世界だ。5枚で1年3ヶ月分の稼ぎと考えれば、引き受けない理由もない。
「これは前金です。無事に帰れたなら更に5枚を渡します」
「何?」
「足りないでしょうか? もっと必要ならお父様に掛け合ってみますが」
「金銭に困っている訳でもないだろう。あなたは何故、迷宮に?」
「それは……」
リーナは口ごもる。事情があるなら戻ってから聞こう。
「仲間は護衛の騎士一人だけか?」
「はい。彼一人です」
「なら、さっさとこの場からおさらばしよう」
聖剣の力を借りて転移魔法を発動させる。
本日4度目の転移魔法である。
「え……? ここは、迷宮の外ですか?」
「ミト殿は一体何をされたのでしょうか?」
体調が戻ってきたらしいローレンに尋ねられる。
「無事に迷宮から出られた。今はそれで納得してくれ」
「……承知しました」
渋々といった様子でローレンは引き下がった。
「ミト様は卓越した剣技だけでなく、素晴らしい魔法もお持ちなのですね。その力を私の為に役立てる気はありませんか? 私は公爵令嬢のリーナ・サヴァールと申します。現在、この街の魔法学院に通っています」
(……公爵令嬢か。思ったより大物だ。魔法に詳しいエレナがいれば、魔法学院とやらがどんな場所なのか教えてもらえるんだろうな)
「失礼ですが、ミト様は魔法学院がどういったものかご存知でしょうか?」
「さあ、深くは知らないな」
「ミト殿、お嬢様は公爵令嬢です。言葉遣いを改めていただかなければ……」
「そうか。俺では不足ということだな。帰らせてもらおう」
さっさと帰ろうとすると、リーナが「お待ちください」と止めてきた。
「ローレン、ミト様に貴族の常識を押しつけるのはやめなさい。彼は平民である前に私達の恩人なのですよ? 私は命の恩人に平民だから敬語を使えなどと無礼を申すつもりはありません。ミト様、今まで通りの口調で構いませんので、どうか最後までお話を聞いていただけませんか?」
「……あんたがそれで構わないなら、このまま話を聞かせてもらおうか」
「くっ……」
ローレンは納得がいかない様子だったが、主の意向に従って黙り込んだ。
「魔法学院とは貴族が上級魔法を学ぶ場所です。魔導書に書かれた魔法を身につけ、さらに訓練をすると、上級魔法を身につけられます。上級魔法は一般魔法と比べ、威力が桁違いに上がります。主に役立つのは戦時ですね。ひとたび戦争になれば、上級魔法の有無が戦況を分けることもあるのです」
貴族が魔法学院に通う理由は何となく分かった。気になるのはお嬢様が護衛を連れて迷宮なんかにいた理由だ。
「私は、力を得る為に迷宮に挑みました。私には学園で、倒さねばならない敵がいます」
「敵とは穏やかじゃないな」
「お嬢様にはこの国で最も高貴な婚約者がおります。ですが、その殿方はお嬢様以外の令嬢に熱を上げています」
何か大変そうだ。俺には関係ないが。
「ミーシャが私より優れているのは、上級魔法を扱えるという点です。私はミーシャに負ける訳にはいかないのです。殿下を支えるべく妃教育を受けてきたのは、私の方ですから」
殿下って言っちゃってるよ。
ローレンはまどろっこしい話し方をしたが、要はこういうことだろう。
リーナは王子と婚約したが、王子はミーシャという女の方に関心があると。
絹のような黒髪を持つリーナは、俺の基準で言えばエレナと並ぶ程の容姿をしている。
考えられないが、ミーシャはそれ以上の容姿をしてるのか? 全く想像できない。
事情は説明されたものの、俺としては誰がこの国の王子と結婚しようが関係ない。
リーナが勝とうがミーシャが勝とうがどうでもいいことだ。
というか、余計な争いに巻き込まないでほしい。
こちとら、魔神王なる世界の敵と戦う使命を背負ってるんだからな。
余計な敵を増やす余裕なんかないぞ。
「私はまだまだ魔術師として未熟です。上級魔法を一つも修得できてません。迷宮には才能を開花される力があると言われてますが、私とローレンでは魔物に対抗できませんでした」
「あんたが迷宮に潜ってる事情は分かった。俺に協力してほしいらしいが、ハッキリ言って反対だ。潔く諦めた方がいいんじゃないか?」
「貴様……! お嬢様の努力も知らず何を言い出すつもりだ!」
「公爵令嬢が探索者と同じように迷宮に挑むんだ。俺にだって覚悟があることくらい分かる。だが、仮に迷宮に潜って上級魔法を覚えたところで、結局は殿下の気持ち次第なんだろ? ミーシャを選ぶ可能性だってあるのに、命を賭ける必要あるのか?」
「……最終的にミーシャを選ばれる。それも覚悟の上です。どうか私に協力してください。王妃となった暁には、あなたを護衛として取り立てることも考えます」
お姫様の護衛。とんだ出世ルートが出てきたものだ。
「もし断れば?」
「よもや、お嬢様の頼みを断ると!?」
「良いのですローレン。無理強いはできません」
お嬢様は寛大だ。平民の舐めた態度を許してくれるらしい。
いっそのこと無礼者扱いして遠ざけてくれた方がありがかったが。
「答えを出す前に一つ質問がある。あんたと同じ髪色の女性を、俺はこの国で見たことがない。あんたの祖先はこの国の人間じゃないのか?」
「私の祖母は極東のクーランという国から来たそうです。この髪は先祖返りなのですが、王国ではかつて黒を不吉な色として扱う習慣がありました。今ではほとんど廃れていますが、伝統を重視する王家では、いまだに黒髪を不吉な色として扱う向きがあります。殿下も私の髪を見ると不快になってしまって、嫁ぐ際は染めるように言われてます」
「勿体ないな……。こんなに綺麗なのに」
「ありがとうございます。珍しがる方はいましたが、こんな風に褒められたのは初めてです」
リーナは穏やかに微笑んでいる。こんなに綺麗な婚約者がいて、王子は羨ましい限りだ。
「護衛を引き受けてくださるなら、毎日金貨5枚を支払います。いかがでしょうか?」
「悪いが即答はできない。連れがいるから持ち帰って決めても構わないか?」
「ええ、もちろんです。返事は私の屋敷にお願いします。あとでローレンに簡単な地図を書かせますね?」
話がでかすぎる。受けるにせよ断るにせよ、エレナと話し合って決めたい。
リーナの住所を確かめた後、俺は転移魔法で屋敷に飛んだ。
「少し見ていくか」
一人の時なら、死んでも復活できる。多少の無茶は利くだろう。
2層の魔物はレベルが11~20で、一気に強さが跳ね上がっていた。階層間で強さが違うとは聞いてたが、まさかレベルの上限が10も上がるとはな。
聖剣の切れ味は素晴らしく、俺のレベルと相まって魔物をバターのように切り裂いた。1層と2層では魔素から生成される魔物が違うようで、トレントやゴブリンといった、初めて見る魔物も多かった。
(しかし、まるで相手にならんな)
あまりに敵が弱すぎて、欠伸が出そうだった。これはさっさと3層に上がった方が良さそうだな。と、思い始めていたところで、男の悲鳴が迷宮に響いた。
「ん?」
気になって悲鳴のした方へ走る。階層間を繋ぐ階段が近いから、上がってきた探索者がやられたんだなと思う。
急いで駆けつけると、足を斬られた探索者が必死に地面を這って逃げようとしていた。魔素で生成されたゴブリンが男の脚を何度も刺してる。
「彼から離れなさい!」
ゴブリンと意志疎通を図ってるのは、白い鎧を身につけた一人の少女だ。アイドル並みに顔が整っており、なんと黒髪である。
アイドル少女は階段におり、必死の呼びかけをしていた。しかし、ゴブリンは彼女の呼びかけを無視して、無事だったもう片方の脚をシミターで切り裂いた。
「ギャァァァァ!!!」
「止めなさいと言ってるでしょう!」
澄んだ声で叱責してるが、魔物は当然ながら無視している。
何をしてるんだこいつらは……。
敵と味方の強さを測る為、鑑定する。
ゴブリン:Lv19
ローレン:Lv14
リーナ:Lv13
なるほど、レベル差が5以上あるのに戦ったんだな。5は馬鹿にならない差だと思う。
体感だが、3くらいの差は運で突破できることもありそうだ。しかし、5以上レベルが離れてくると、地力の差が顕著に出始めると思う。エレナの魔法も全く通じてなかったしな。
さて、2人を見捨てて転移することは可能だが、さすがに見殺しにするのは良くないだろう。アイドルのように美しい少女を見殺しにしたら夢に見そうだ。
俺は近くに落ちていた小石をゴブリンに向かって投擲した。
ゴブリンが囀りながら振り向き、俺に気づく。
「あ、あなたは一体……」
ゴブリンが狙いを俺に変えた。
歩いて近づくと、ゴブリンは持っていた棍棒を振りかぶった。
だが、『危険感知』で安全な場所は見切れる。
棍棒を潜り抜けるように避けた俺は、肉薄して聖剣を鞘から抜き放った。
剣が一閃すると同時、ゴブリンの胴体に切れ目が入った。
今まで使ってた剣とは比べ物にならない切れ味だ。鎧をバターみたいに切り裂いた。
「ギギャ……」
お前はもう死んでいる。
ゴブリンの胴体がずるりとズレて地面に落ちる。
魔物は人間と違って身体が魔素で構成されている。
急所は異なるが、大きな傷を負えば身体を維持できなくなって魔素に戻る。
胴が離れたゴブリンは霧散し、魔素が消失した。
「う、嘘……」
「もう大丈夫だ」
「あ、ありがとうございます!」
少女は礼を言うと、男に駆け寄って所持していた瓶の中身を飲ませた。
(中身はポーションだろうな)
ゲームなんかだと一般的なアイテムであるポーションだが、この世界ではかなり値が張るものだ。魔法を使える者が少なく、魔法の価値が高いこの世界では、魔法の効果が付与された商品は軒並み高い。躊躇なく消費してる時点で、それなりの身分を有していることは分かった。
瞬く間に傷が塞がった男は、ぐったりとしたまま「ありがとう」と礼を述べてくる。ダメージは大きいが、命に別状はなさそうだ。
「助けてくれてありがとうございます。私はリーナ。彼は護衛のローレンです」
「俺はミトという。ただの探索者だ」
「ご謙遜を。今の剣捌き、只者ではないと感じました。申し訳ありませんが入口まで同行いただけないでしょうか。御礼はします」
リーナは金貨を5枚取り出した。金貨1枚で3ヶ月は暮らせる世界だ。5枚で1年3ヶ月分の稼ぎと考えれば、引き受けない理由もない。
「これは前金です。無事に帰れたなら更に5枚を渡します」
「何?」
「足りないでしょうか? もっと必要ならお父様に掛け合ってみますが」
「金銭に困っている訳でもないだろう。あなたは何故、迷宮に?」
「それは……」
リーナは口ごもる。事情があるなら戻ってから聞こう。
「仲間は護衛の騎士一人だけか?」
「はい。彼一人です」
「なら、さっさとこの場からおさらばしよう」
聖剣の力を借りて転移魔法を発動させる。
本日4度目の転移魔法である。
「え……? ここは、迷宮の外ですか?」
「ミト殿は一体何をされたのでしょうか?」
体調が戻ってきたらしいローレンに尋ねられる。
「無事に迷宮から出られた。今はそれで納得してくれ」
「……承知しました」
渋々といった様子でローレンは引き下がった。
「ミト様は卓越した剣技だけでなく、素晴らしい魔法もお持ちなのですね。その力を私の為に役立てる気はありませんか? 私は公爵令嬢のリーナ・サヴァールと申します。現在、この街の魔法学院に通っています」
(……公爵令嬢か。思ったより大物だ。魔法に詳しいエレナがいれば、魔法学院とやらがどんな場所なのか教えてもらえるんだろうな)
「失礼ですが、ミト様は魔法学院がどういったものかご存知でしょうか?」
「さあ、深くは知らないな」
「ミト殿、お嬢様は公爵令嬢です。言葉遣いを改めていただかなければ……」
「そうか。俺では不足ということだな。帰らせてもらおう」
さっさと帰ろうとすると、リーナが「お待ちください」と止めてきた。
「ローレン、ミト様に貴族の常識を押しつけるのはやめなさい。彼は平民である前に私達の恩人なのですよ? 私は命の恩人に平民だから敬語を使えなどと無礼を申すつもりはありません。ミト様、今まで通りの口調で構いませんので、どうか最後までお話を聞いていただけませんか?」
「……あんたがそれで構わないなら、このまま話を聞かせてもらおうか」
「くっ……」
ローレンは納得がいかない様子だったが、主の意向に従って黙り込んだ。
「魔法学院とは貴族が上級魔法を学ぶ場所です。魔導書に書かれた魔法を身につけ、さらに訓練をすると、上級魔法を身につけられます。上級魔法は一般魔法と比べ、威力が桁違いに上がります。主に役立つのは戦時ですね。ひとたび戦争になれば、上級魔法の有無が戦況を分けることもあるのです」
貴族が魔法学院に通う理由は何となく分かった。気になるのはお嬢様が護衛を連れて迷宮なんかにいた理由だ。
「私は、力を得る為に迷宮に挑みました。私には学園で、倒さねばならない敵がいます」
「敵とは穏やかじゃないな」
「お嬢様にはこの国で最も高貴な婚約者がおります。ですが、その殿方はお嬢様以外の令嬢に熱を上げています」
何か大変そうだ。俺には関係ないが。
「ミーシャが私より優れているのは、上級魔法を扱えるという点です。私はミーシャに負ける訳にはいかないのです。殿下を支えるべく妃教育を受けてきたのは、私の方ですから」
殿下って言っちゃってるよ。
ローレンはまどろっこしい話し方をしたが、要はこういうことだろう。
リーナは王子と婚約したが、王子はミーシャという女の方に関心があると。
絹のような黒髪を持つリーナは、俺の基準で言えばエレナと並ぶ程の容姿をしている。
考えられないが、ミーシャはそれ以上の容姿をしてるのか? 全く想像できない。
事情は説明されたものの、俺としては誰がこの国の王子と結婚しようが関係ない。
リーナが勝とうがミーシャが勝とうがどうでもいいことだ。
というか、余計な争いに巻き込まないでほしい。
こちとら、魔神王なる世界の敵と戦う使命を背負ってるんだからな。
余計な敵を増やす余裕なんかないぞ。
「私はまだまだ魔術師として未熟です。上級魔法を一つも修得できてません。迷宮には才能を開花される力があると言われてますが、私とローレンでは魔物に対抗できませんでした」
「あんたが迷宮に潜ってる事情は分かった。俺に協力してほしいらしいが、ハッキリ言って反対だ。潔く諦めた方がいいんじゃないか?」
「貴様……! お嬢様の努力も知らず何を言い出すつもりだ!」
「公爵令嬢が探索者と同じように迷宮に挑むんだ。俺にだって覚悟があることくらい分かる。だが、仮に迷宮に潜って上級魔法を覚えたところで、結局は殿下の気持ち次第なんだろ? ミーシャを選ぶ可能性だってあるのに、命を賭ける必要あるのか?」
「……最終的にミーシャを選ばれる。それも覚悟の上です。どうか私に協力してください。王妃となった暁には、あなたを護衛として取り立てることも考えます」
お姫様の護衛。とんだ出世ルートが出てきたものだ。
「もし断れば?」
「よもや、お嬢様の頼みを断ると!?」
「良いのですローレン。無理強いはできません」
お嬢様は寛大だ。平民の舐めた態度を許してくれるらしい。
いっそのこと無礼者扱いして遠ざけてくれた方がありがかったが。
「答えを出す前に一つ質問がある。あんたと同じ髪色の女性を、俺はこの国で見たことがない。あんたの祖先はこの国の人間じゃないのか?」
「私の祖母は極東のクーランという国から来たそうです。この髪は先祖返りなのですが、王国ではかつて黒を不吉な色として扱う習慣がありました。今ではほとんど廃れていますが、伝統を重視する王家では、いまだに黒髪を不吉な色として扱う向きがあります。殿下も私の髪を見ると不快になってしまって、嫁ぐ際は染めるように言われてます」
「勿体ないな……。こんなに綺麗なのに」
「ありがとうございます。珍しがる方はいましたが、こんな風に褒められたのは初めてです」
リーナは穏やかに微笑んでいる。こんなに綺麗な婚約者がいて、王子は羨ましい限りだ。
「護衛を引き受けてくださるなら、毎日金貨5枚を支払います。いかがでしょうか?」
「悪いが即答はできない。連れがいるから持ち帰って決めても構わないか?」
「ええ、もちろんです。返事は私の屋敷にお願いします。あとでローレンに簡単な地図を書かせますね?」
話がでかすぎる。受けるにせよ断るにせよ、エレナと話し合って決めたい。
リーナの住所を確かめた後、俺は転移魔法で屋敷に飛んだ。
11
あなたにおすすめの小説
ダンジョン作成から始まる最強クラン
山椒
ファンタジー
ダンジョンが出現して数十年が経ち、ダンジョンがあることが日常となっていた。
そんな世界で五年前に起きた大規模魔物侵攻により心に傷を受けた青年がいた。
極力誰とも関わりを持たずにいた彼の住んでいる部屋に寝ている間にダンジョンが出現し、彼はそこに落ちた。
そのダンジョンは他に確認されていない自作するダンジョンであった。
ダンジョンとモンスターにトラウマを抱えつつもダンジョン作成を始めていく。
ただそのダンジョンは特別性であった。
ダンジョンが彼を、彼の大事な人を強くするダンジョンであった。
異世界から元の世界に派遣された僕は他の勇者たちとは別にのんびり暮らします【DNAの改修者ー外伝】
kujibiki
ファンタジー
異世界で第二の人生の大往生を迎えた僕は再びあの場所へ飛ばされていた。
※これは『DNAの改修者』のアフターストーリーとなります。
『DNAの改修者』を読まなくても大丈夫だとは思いますが、気になる方はご覧ください。
※表紙は生成AIで作ってみたイメージです。(シャルルが難しい…)
距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる
歩く魚
恋愛
かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。
だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。
それは気にしてない。俺は深入りする気はない。
人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。
だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。
――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら
リヒト
ファンタジー
現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。
そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。
その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。
お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。
ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。
お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?
湖畔の賢者
そらまめ
ファンタジー
秋山透はソロキャンプに向かう途中で突然目の前に現れた次元の裂け目に呑まれ、歪んでゆく視界、そして自分の体までもが波打つように歪み、彼は自然と目を閉じた。目蓋に明るさを感じ、ゆっくりと目を開けると大樹の横で車はエンジンを止めて停まっていた。
ゆっくりと彼は車から降りて側にある大樹に触れた。そのまま上着のポケット中からスマホ取り出し確認すると圏外表示。縋るようにマップアプリで場所を確認するも……位置情報取得出来ずに不明と。
彼は大きく落胆し、大樹にもたれ掛かるように背を預け、そのまま力なく崩れ落ちた。
「あははは、まいったな。どこなんだ、ここは」
そう力なく呟き苦笑いしながら、不安から両手で顔を覆った。
楽しみにしていたキャンプから一転し、ほぼ絶望に近い状況に見舞われた。
目にしたことも聞いたこともない。空間の裂け目に呑まれ、知らない場所へ。
そんな突然の不幸に見舞われた秋山透の物語。
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。
アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚…
スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。
いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて…
気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。
愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。
生きていればいつかは幼馴染達とまた会える!
愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」
幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。
愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。
はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる