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19.リーナを訪ねて
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手紙を書いてみると返事があり、俺達はリーナの屋敷を訪ねた。
「ん? なんであいつがいるんだ」
「座り込んでるわね」
クビになったはずのローレンが門の前で座り込みをしていた。
「おい、何をしてるんだ」
「私は反省の意を示す為、断食しているところだ。施しならいらん。早々に立ち去るが良い」
「ふざけるな。門の前にいられると邪魔だ」
ドミネイトで名誉に対する感情を0にしてやる。
プライドを失った男は、あっさりと市場の方へ向かっていった。
自分の都合で主人を裏切っておきながらハンガーストライキとは、傍迷惑な男だ。
屋敷を訪ねると、使用人達は応接間に通してくれた。
久しぶりに会ったリーナは、少し痩せた印象があった。
「久しぶりですね。ミト様。それとエレナも来てくれたんですね」
「押しかけてすまない。だが、俺もエレナもリーナのことを心配してたんだ」
「お見苦しい姿を見せてしまいましたしね」
リーナは困ったように微笑んでいる。この期に及んで誰も責めてないように見える。優しい女性なんだなと思った。
「先日は同席してたのに大して力になれなかった。すまない」
「いいえ。ミト様は殿下の威圧にも負けず、芯が通っていて心強かったです。父も母も学園の同級生も、皆が殿下の言いなりでした。そんな中で芯を曲げなかったミト様を私は尊敬してます」
「リーナは、もっと自分に素直になって良いんじゃないか?」
「それはできません。私の婚約は国が定めた決定事項ですから」
彼女は悲壮な決意を固めているように見えた。
「殿下が髪を染めろと言うなら、私は髪を染めます。そして、この国の為にできることを考えてみます」
「そんなの不幸すぎる! リーナ様にはもっと素敵な殿方との出会いがあるはずです!」
我慢できないという様子で、エレナが訴える。
リーナは俺の顔を一瞬だけ見たあと、「そんな出会いありませんよ」と言った。
「え、ミトのことが好きなんですか?」
「好きじゃありません」
「でも鐘鳴ってるし!!!」
ゴーンゴーンと頭の中で真実の鐘が鳴ってる。
リーナは観念したように告白しようとした。
「私、実はミト様のことが――」
「待って! 待ってよ! それは流石にズルいわ! 私はずっと気持ちを伝えずに彼を支えてきたの! 奴隷だからとか、そういうことじゃなくて、私自身の気持ちで全部を捧げてきたつもり。なのに、何で後から出てきたリーナ様が彼を狙うの!?」
「後とか先とか、関係ないと思いますけど」
「大ありだし! 私はずっと彼のことが……!」
そこまで言ったエレナと目が合う。
彼女は可愛らしく頬を染めて、「違うから!」と方向転換した。
「何がどう違うのでしょうか? もしあなたが自分の気持ちを否定なさるなら、私は今ここで――」
「やめてよぉ……」
お、おい。エレナが愚図りだしたぞ。
リーナも困惑してるじゃないか。
「ちゃんと自分を買い戻した後に言うって決めてたのに! 私からミトを取らないでよ! 私は何も持ってないから、ミトまで取られたら生きていけない! だからやめてよぉ!!!」
「あ……その、取り上げたりするつもりはないのです。ただ、2番目でいいので私のことも傍に置いて欲しかっただけで」
「本当?」
「え……可愛い」
その意見には同意したい。泣きじゃくるエレナはちょっと可愛らしかった。
「私はエレナさんとお友達になりたかったんです。エレナさんは私が傍にいたら駄目ですか?」
「ううん。そんなことない。私はお馬鹿な男爵令嬢だし、身体でしかミトの役に立ててないから。リーナ様は妃教育だって受けられるくらい頭がいいから、一緒にミトを支えてくれたら心強いと思うの」
エレナの気持ちにグッとくる。彼女は身体でしか役に立ててないというが、異世界に来て独りぼっちだった俺が、どれだけエレナの献身に助けられたか分からない。こうして正気を保っていられるのも、エレナのお陰だ。その気持ちを伝える為に、俺は強くエレナを抱きしめた。
「え……何? ちょっと恥ずかしいんだけど」
「エレナを愛してるって伝えたかっただけだ」
「愛して……え? 私奴隷なんだよ!?」
「いや、奴隷とか関係ないから。好きなものは好きだ。気づいてなかったのか?」
「だって奴隷だもん」
エレナの額にキスを落とす。
「何度も言うけど関係ないから」
「急に困るってば……。ずっと好きって言うの我慢してたのに」
「あの、2人ともいいですか?」
抱きしめられるエレナを見ていたリーナが、呟いた。
「私は、ホトホト殿下に呆れ果てていました。愛想が尽きて、もう一緒にいるだけでストレスが爆発してました。もう限界です。私だって女の子なんです。普通に殿方から愛されたいです!!!」
俺とエレナのやり取りが、リーナに火をつけたようだった。
「ミト様、よろしいでしょうか? 私のこともエレナさんと同じように傍に置いていただけませんか? あんなクソ王子に嫁ぐくらいなら、私は妾になることも受け入れます」
急な話だ。しかし、リーナの婚約者がクソ王子だというのは俺も同じ意見だし、アイツにやるくらいならぶっちゃけ俺が欲しい。だって、貴重な黒髪美少女だし。
とはいえ、エレナの気持ちも大事だ。ちらっと横目で見ると、「私はいいわよ」と認めてくれた。
「ミトくらいの器なら、早かれ遅かれこうなる気はしてたの。ちゃんと私の意見も聞いてくれるなら、女を増やすことに反対はしない。その代わり、勝手に増やすのは絶対なしだからね?」
「分かったよ。ありがとうな」
エレナが大事なことに変わりはないし、正直この先もエレナが一番だと思う。それでもいいなら、俺はリーナを受け入れよう。
「リーナのことも大切にすると誓う。エレナと一緒に俺を支えてほしい」
「やった! これからよろしくお願いします! エレナさんは先輩なので、タメ語で話してくださいね」
「いいの?」
「はい。その代わり、友達になってください。エレナさんは私のことを友達にしてくれますか?」
「当然じゃない! 私も友達がいなかったから嬉しい!」
「エレナさんはこんなに可愛いのに、なぜ友達がいなかったのですか?」
「友達だと思ってた子が私のことビッチだって言いふらして――」
なんか盛り上がり始めた。
俺は放っておかれて寂しかったので、咳払いをした。
「リーナは俺の妻……。立場としては妾だが、妻になるということで構わないんだな?」
「はい。後から来た私よりもエレナさんを正妻の座に据えることは当然だと思います」
「えっと、そのことなんだけど、私は所作とか立ち振る舞いとか苦手なのよね。だから、正妻役はリーナがしてくれると嬉しいの」
リーナは敬語があまり好きではないし、公の場でドレスを着たりするのもあまり好きではないらしい。
生まれが庶民ということもあって、それなりの教育は受けているし俺なんかよりは遥かに美しい所作をしているが、貴族社会には馴染めないと考えているらしかった。
「自分の子供にも家柄とか関係なく好きなことをさせてあげたいし……。なんか好き勝手言って申し訳ないけど、ちゃんと愛してもらえるなら、私は正妻とか妾とかどうでもいいから。嫌じゃなかったらリーナに引き受けてほしい」
「俺は2人が話し合って決めてくれたらいいと思ってる。リーナはどうだ?」
「そうですね。正直、私を妾にするといえば、父は婚姻に反対すると思います。なので、もし正妻で構わないというなら、私はその役をまっとうしたいと思います」
「ありがとうリーナ。私も協力できることがあったら何でもするから言ってね?」
「はい。一緒にミト様を支えましょう」
ミト様か……。
「なあ、俺がアシルを背負いたいって言ったら、2人はどう思う?」
「「え?」」
エレナとリーナがハモった。
「俺は2人を娶りたい。そうなった時に、平民じゃ世間体がよろしくないだろ? だったら、いっそ記憶を失ったアシルとして振る舞って、侯爵家を継ごうと思ったんだ」
「ミトは自由に生きたくてアシルを捨てたんだと思ってた。本当にいいの? 後悔しない?」
「結婚するなら、いつまでも楽な方に流されてちゃいけないだろ。それくらいの重荷は背負うさ」
俺の言葉を聞いて、2人は感動したようだった。
「私達の為に……。ミト様……いいえ、アシル様は立派だと思います」
「私は名前なんか変わっても気にしないし今までどおりあなたを愛するわ。私が惚れたのはあなたの魂なんだもん。一緒に頑張ろうね、アシル」
こうして俺はアシルの名前も背負って生きることを決めた。
アシル・カバネルの身体を引き継いだ者として、名と共に人生をも背負うことに決めたのだ。
俺を愛する2人が、重荷を背負う覚悟を決めさせてくれたんだ。彼女達に感謝すると共に、絶対に2人を守り抜くことを決意した。
「ん? なんであいつがいるんだ」
「座り込んでるわね」
クビになったはずのローレンが門の前で座り込みをしていた。
「おい、何をしてるんだ」
「私は反省の意を示す為、断食しているところだ。施しならいらん。早々に立ち去るが良い」
「ふざけるな。門の前にいられると邪魔だ」
ドミネイトで名誉に対する感情を0にしてやる。
プライドを失った男は、あっさりと市場の方へ向かっていった。
自分の都合で主人を裏切っておきながらハンガーストライキとは、傍迷惑な男だ。
屋敷を訪ねると、使用人達は応接間に通してくれた。
久しぶりに会ったリーナは、少し痩せた印象があった。
「久しぶりですね。ミト様。それとエレナも来てくれたんですね」
「押しかけてすまない。だが、俺もエレナもリーナのことを心配してたんだ」
「お見苦しい姿を見せてしまいましたしね」
リーナは困ったように微笑んでいる。この期に及んで誰も責めてないように見える。優しい女性なんだなと思った。
「先日は同席してたのに大して力になれなかった。すまない」
「いいえ。ミト様は殿下の威圧にも負けず、芯が通っていて心強かったです。父も母も学園の同級生も、皆が殿下の言いなりでした。そんな中で芯を曲げなかったミト様を私は尊敬してます」
「リーナは、もっと自分に素直になって良いんじゃないか?」
「それはできません。私の婚約は国が定めた決定事項ですから」
彼女は悲壮な決意を固めているように見えた。
「殿下が髪を染めろと言うなら、私は髪を染めます。そして、この国の為にできることを考えてみます」
「そんなの不幸すぎる! リーナ様にはもっと素敵な殿方との出会いがあるはずです!」
我慢できないという様子で、エレナが訴える。
リーナは俺の顔を一瞬だけ見たあと、「そんな出会いありませんよ」と言った。
「え、ミトのことが好きなんですか?」
「好きじゃありません」
「でも鐘鳴ってるし!!!」
ゴーンゴーンと頭の中で真実の鐘が鳴ってる。
リーナは観念したように告白しようとした。
「私、実はミト様のことが――」
「待って! 待ってよ! それは流石にズルいわ! 私はずっと気持ちを伝えずに彼を支えてきたの! 奴隷だからとか、そういうことじゃなくて、私自身の気持ちで全部を捧げてきたつもり。なのに、何で後から出てきたリーナ様が彼を狙うの!?」
「後とか先とか、関係ないと思いますけど」
「大ありだし! 私はずっと彼のことが……!」
そこまで言ったエレナと目が合う。
彼女は可愛らしく頬を染めて、「違うから!」と方向転換した。
「何がどう違うのでしょうか? もしあなたが自分の気持ちを否定なさるなら、私は今ここで――」
「やめてよぉ……」
お、おい。エレナが愚図りだしたぞ。
リーナも困惑してるじゃないか。
「ちゃんと自分を買い戻した後に言うって決めてたのに! 私からミトを取らないでよ! 私は何も持ってないから、ミトまで取られたら生きていけない! だからやめてよぉ!!!」
「あ……その、取り上げたりするつもりはないのです。ただ、2番目でいいので私のことも傍に置いて欲しかっただけで」
「本当?」
「え……可愛い」
その意見には同意したい。泣きじゃくるエレナはちょっと可愛らしかった。
「私はエレナさんとお友達になりたかったんです。エレナさんは私が傍にいたら駄目ですか?」
「ううん。そんなことない。私はお馬鹿な男爵令嬢だし、身体でしかミトの役に立ててないから。リーナ様は妃教育だって受けられるくらい頭がいいから、一緒にミトを支えてくれたら心強いと思うの」
エレナの気持ちにグッとくる。彼女は身体でしか役に立ててないというが、異世界に来て独りぼっちだった俺が、どれだけエレナの献身に助けられたか分からない。こうして正気を保っていられるのも、エレナのお陰だ。その気持ちを伝える為に、俺は強くエレナを抱きしめた。
「え……何? ちょっと恥ずかしいんだけど」
「エレナを愛してるって伝えたかっただけだ」
「愛して……え? 私奴隷なんだよ!?」
「いや、奴隷とか関係ないから。好きなものは好きだ。気づいてなかったのか?」
「だって奴隷だもん」
エレナの額にキスを落とす。
「何度も言うけど関係ないから」
「急に困るってば……。ずっと好きって言うの我慢してたのに」
「あの、2人ともいいですか?」
抱きしめられるエレナを見ていたリーナが、呟いた。
「私は、ホトホト殿下に呆れ果てていました。愛想が尽きて、もう一緒にいるだけでストレスが爆発してました。もう限界です。私だって女の子なんです。普通に殿方から愛されたいです!!!」
俺とエレナのやり取りが、リーナに火をつけたようだった。
「ミト様、よろしいでしょうか? 私のこともエレナさんと同じように傍に置いていただけませんか? あんなクソ王子に嫁ぐくらいなら、私は妾になることも受け入れます」
急な話だ。しかし、リーナの婚約者がクソ王子だというのは俺も同じ意見だし、アイツにやるくらいならぶっちゃけ俺が欲しい。だって、貴重な黒髪美少女だし。
とはいえ、エレナの気持ちも大事だ。ちらっと横目で見ると、「私はいいわよ」と認めてくれた。
「ミトくらいの器なら、早かれ遅かれこうなる気はしてたの。ちゃんと私の意見も聞いてくれるなら、女を増やすことに反対はしない。その代わり、勝手に増やすのは絶対なしだからね?」
「分かったよ。ありがとうな」
エレナが大事なことに変わりはないし、正直この先もエレナが一番だと思う。それでもいいなら、俺はリーナを受け入れよう。
「リーナのことも大切にすると誓う。エレナと一緒に俺を支えてほしい」
「やった! これからよろしくお願いします! エレナさんは先輩なので、タメ語で話してくださいね」
「いいの?」
「はい。その代わり、友達になってください。エレナさんは私のことを友達にしてくれますか?」
「当然じゃない! 私も友達がいなかったから嬉しい!」
「エレナさんはこんなに可愛いのに、なぜ友達がいなかったのですか?」
「友達だと思ってた子が私のことビッチだって言いふらして――」
なんか盛り上がり始めた。
俺は放っておかれて寂しかったので、咳払いをした。
「リーナは俺の妻……。立場としては妾だが、妻になるということで構わないんだな?」
「はい。後から来た私よりもエレナさんを正妻の座に据えることは当然だと思います」
「えっと、そのことなんだけど、私は所作とか立ち振る舞いとか苦手なのよね。だから、正妻役はリーナがしてくれると嬉しいの」
リーナは敬語があまり好きではないし、公の場でドレスを着たりするのもあまり好きではないらしい。
生まれが庶民ということもあって、それなりの教育は受けているし俺なんかよりは遥かに美しい所作をしているが、貴族社会には馴染めないと考えているらしかった。
「自分の子供にも家柄とか関係なく好きなことをさせてあげたいし……。なんか好き勝手言って申し訳ないけど、ちゃんと愛してもらえるなら、私は正妻とか妾とかどうでもいいから。嫌じゃなかったらリーナに引き受けてほしい」
「俺は2人が話し合って決めてくれたらいいと思ってる。リーナはどうだ?」
「そうですね。正直、私を妾にするといえば、父は婚姻に反対すると思います。なので、もし正妻で構わないというなら、私はその役をまっとうしたいと思います」
「ありがとうリーナ。私も協力できることがあったら何でもするから言ってね?」
「はい。一緒にミト様を支えましょう」
ミト様か……。
「なあ、俺がアシルを背負いたいって言ったら、2人はどう思う?」
「「え?」」
エレナとリーナがハモった。
「俺は2人を娶りたい。そうなった時に、平民じゃ世間体がよろしくないだろ? だったら、いっそ記憶を失ったアシルとして振る舞って、侯爵家を継ごうと思ったんだ」
「ミトは自由に生きたくてアシルを捨てたんだと思ってた。本当にいいの? 後悔しない?」
「結婚するなら、いつまでも楽な方に流されてちゃいけないだろ。それくらいの重荷は背負うさ」
俺の言葉を聞いて、2人は感動したようだった。
「私達の為に……。ミト様……いいえ、アシル様は立派だと思います」
「私は名前なんか変わっても気にしないし今までどおりあなたを愛するわ。私が惚れたのはあなたの魂なんだもん。一緒に頑張ろうね、アシル」
こうして俺はアシルの名前も背負って生きることを決めた。
アシル・カバネルの身体を引き継いだ者として、名と共に人生をも背負うことに決めたのだ。
俺を愛する2人が、重荷を背負う覚悟を決めさせてくれたんだ。彼女達に感謝すると共に、絶対に2人を守り抜くことを決意した。
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