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9 運命の星
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んー。私は夢を見ています。
これは明晰夢というものでしょうか。
真っ暗な路地に占いをしている老婆がいて、私はその老婆のたった一人の客でした。
「英雄の星に生まれた娘。計略の星に生まれた娘。敗北の星に生まれた娘。いいかい? あんたの魂は、3人目の娘に転生したんだ」
「敗北の星……」
「そう。あんたの役目は負けることだ。あんたが負けることで、大勢の人間が幸福になる。これは、あんたにしかできない役目なんだよ」
「その、幸せになる人のなかには、殿下もいるんですか?」
「そうだよ。殿下はとびきりの幸せを手に入れる。だから、ちゃんと負けてあげるんだよ」
殿下の幸せの為には……私が負けないといけない。
「ふぇっふぇっふぇ。なにも泣くことないじゃないか」
「だって、負けたくないですぅ」
「そりゃ好き好んで負けたい人間なんかいるわけないさね。でも、神様ってやつは残酷なんだ。努力しても報われない人間もいる。そういう人間を、あたしは何人も送り出してきたんだ。ここからね」
お婆さんのおかげで、私は色々なことが分かった気がしました。
どれだけ努力しても報われなかった理由。
私の努力不足だけが理由じゃなかったみたいですね。
「……ありがとうございました。私、自分の人生と向き合ってみます」
「がんばっておいで。おや、あたしとしたことが……」
お婆さんが占いで使っていたカードをひっくり返します。
私のカードだけ、もう一枚のカードが裏に引っ付いていたみたいです。
「なるほどなるほど。そうかい。あたしが見てたのは物事の表面だけだったってことだね」
「どういうことですか?」
「あたしも焼きが回っちまったってことさ。占いの結果は忘れて、自分の意思で頑張っておいで」
「えっ!?」
夢の輪郭がグニャグニャと崩れてきます。
「ミー。ミー」
白猫が私を迎えにきました。
「マリー!? どうしてここにいるんですか!?」
「今夜は閉店の時間だよ」
「みーーーー」
「ふぁぁぁ!?」
朝の陽ざしを感じながら目が覚めます。
「みーーー」
何かが乗っかってると思ったら、白猫のマリーでした。
マリーはけっこう年のはずですが、出会った頃と同じおてんば娘のままです。
年を取ることを忘れてしまったみたいに元気で、不思議なにゃんこちゃんです。
「私の夢にまで出てきましたねー」
「なぅ」
「ふふ、朝ごはんはもらいましたか?」
「にゃっ」
もらったわよ! と返事をして、マリーは巡回の旅に出ました。
私もそろそろ起きましょうか。今日は学園は休みですが、殿下が遊びにくると言っていました。
よいしょとベッドから降りると、しっかりとドレスを着たロザリーがノックもなく部屋に入ってきました。
「ロザリー、ノックがないのは失礼ですよ」
「うるさい馬鹿姉。私が当主になったらこの屋敷から追い出してやるわ。それより、今日殿下が屋敷に来るというのは本当なの?」
「お父様には報告してますよ?」
「馬鹿が……。アンクタン家としては私と殿下の婚約を押しているの。あんたは家の指示に従ってさっさと婚約を破棄しなさいよ! そのあとであたしと殿下を繋ぐのがあんたの役割でしょう!?」
「お断りです。殿下とはすごくいい関係になってるので」
「そんなわけあるか! 今まで見向きもされなかった癖に! このまま平民のクラリスなんかに取られたら、アンクタン家が恥を晒すことになるんだからね!」
「大丈夫です。私は負けませんから」
真正面からロザリーを睨みます。
「……ッ! 後悔しても知らないから!」
「黙れ雌豚」
「ヒッ」
ナイフを握ったエミリーがロザリーの正面に立ち塞がります。
その足元にはさっき部屋を出ていったばかりのマリーがいました。
もしかして、エミリーを呼んで来てくれたのでしょうか。
「キ……」
「叫んだら殺す」
エミリーのナイフがロザリーの喉に当てられます。
久しぶりに彼女の教育風景を見ますね。
「お前を殺した後、お嬢様を連れて王都を脱して異国で豪遊して暮らすことくらい、あたしにかかりゃ楽勝なんだよ。そうしねえのは王子への恋心を応援する為だ。いいか? 殿下とリア様がイチャイチャしてて助かってんのはてめえの命だと知れ。分かったら返事しろや豚」
「分かりましたぁ……」
「よし。行け」
態度が大きいようでいて、実は臆病な面もあるロザリーです。
あんな娘でも私にとっては可愛い妹なんですけどね。
ロザリーは鼻を啜りながら部屋を出ていきました。
プライドが高い娘なので、メイドにやり込められたことは誰にも言わないでしょうね。
「おはようございますお嬢様。今日は最高の衣装で殿下を迎えましょう」
「もちろんです!」
これは明晰夢というものでしょうか。
真っ暗な路地に占いをしている老婆がいて、私はその老婆のたった一人の客でした。
「英雄の星に生まれた娘。計略の星に生まれた娘。敗北の星に生まれた娘。いいかい? あんたの魂は、3人目の娘に転生したんだ」
「敗北の星……」
「そう。あんたの役目は負けることだ。あんたが負けることで、大勢の人間が幸福になる。これは、あんたにしかできない役目なんだよ」
「その、幸せになる人のなかには、殿下もいるんですか?」
「そうだよ。殿下はとびきりの幸せを手に入れる。だから、ちゃんと負けてあげるんだよ」
殿下の幸せの為には……私が負けないといけない。
「ふぇっふぇっふぇ。なにも泣くことないじゃないか」
「だって、負けたくないですぅ」
「そりゃ好き好んで負けたい人間なんかいるわけないさね。でも、神様ってやつは残酷なんだ。努力しても報われない人間もいる。そういう人間を、あたしは何人も送り出してきたんだ。ここからね」
お婆さんのおかげで、私は色々なことが分かった気がしました。
どれだけ努力しても報われなかった理由。
私の努力不足だけが理由じゃなかったみたいですね。
「……ありがとうございました。私、自分の人生と向き合ってみます」
「がんばっておいで。おや、あたしとしたことが……」
お婆さんが占いで使っていたカードをひっくり返します。
私のカードだけ、もう一枚のカードが裏に引っ付いていたみたいです。
「なるほどなるほど。そうかい。あたしが見てたのは物事の表面だけだったってことだね」
「どういうことですか?」
「あたしも焼きが回っちまったってことさ。占いの結果は忘れて、自分の意思で頑張っておいで」
「えっ!?」
夢の輪郭がグニャグニャと崩れてきます。
「ミー。ミー」
白猫が私を迎えにきました。
「マリー!? どうしてここにいるんですか!?」
「今夜は閉店の時間だよ」
「みーーーー」
「ふぁぁぁ!?」
朝の陽ざしを感じながら目が覚めます。
「みーーー」
何かが乗っかってると思ったら、白猫のマリーでした。
マリーはけっこう年のはずですが、出会った頃と同じおてんば娘のままです。
年を取ることを忘れてしまったみたいに元気で、不思議なにゃんこちゃんです。
「私の夢にまで出てきましたねー」
「なぅ」
「ふふ、朝ごはんはもらいましたか?」
「にゃっ」
もらったわよ! と返事をして、マリーは巡回の旅に出ました。
私もそろそろ起きましょうか。今日は学園は休みですが、殿下が遊びにくると言っていました。
よいしょとベッドから降りると、しっかりとドレスを着たロザリーがノックもなく部屋に入ってきました。
「ロザリー、ノックがないのは失礼ですよ」
「うるさい馬鹿姉。私が当主になったらこの屋敷から追い出してやるわ。それより、今日殿下が屋敷に来るというのは本当なの?」
「お父様には報告してますよ?」
「馬鹿が……。アンクタン家としては私と殿下の婚約を押しているの。あんたは家の指示に従ってさっさと婚約を破棄しなさいよ! そのあとであたしと殿下を繋ぐのがあんたの役割でしょう!?」
「お断りです。殿下とはすごくいい関係になってるので」
「そんなわけあるか! 今まで見向きもされなかった癖に! このまま平民のクラリスなんかに取られたら、アンクタン家が恥を晒すことになるんだからね!」
「大丈夫です。私は負けませんから」
真正面からロザリーを睨みます。
「……ッ! 後悔しても知らないから!」
「黙れ雌豚」
「ヒッ」
ナイフを握ったエミリーがロザリーの正面に立ち塞がります。
その足元にはさっき部屋を出ていったばかりのマリーがいました。
もしかして、エミリーを呼んで来てくれたのでしょうか。
「キ……」
「叫んだら殺す」
エミリーのナイフがロザリーの喉に当てられます。
久しぶりに彼女の教育風景を見ますね。
「お前を殺した後、お嬢様を連れて王都を脱して異国で豪遊して暮らすことくらい、あたしにかかりゃ楽勝なんだよ。そうしねえのは王子への恋心を応援する為だ。いいか? 殿下とリア様がイチャイチャしてて助かってんのはてめえの命だと知れ。分かったら返事しろや豚」
「分かりましたぁ……」
「よし。行け」
態度が大きいようでいて、実は臆病な面もあるロザリーです。
あんな娘でも私にとっては可愛い妹なんですけどね。
ロザリーは鼻を啜りながら部屋を出ていきました。
プライドが高い娘なので、メイドにやり込められたことは誰にも言わないでしょうね。
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