冷酷な王子がお馬鹿な私にハマり過ぎて婚約破棄できなくなってることを周りは誰も知りません※R15

みかん畑

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14 スラムの帝王

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 エミリーは淡々と告白します。

「私は物心がつく頃までこの掃き溜めみたいな街にいたんです。お嬢様は知っておいでですよね?」
「ふぇ?」
「私がお嬢様の専属メイドに決まったあと、私はお嬢様を脅かそうとスラムの出身であることを告白しました。ですが、お嬢様は『お菓子を焼くのが上手いのでお菓子屋さんの娘だと思いました』と笑ってくださったんです。あの笑顔が、私の人生を光へと導いてくださったのです」
「二人にはそんな馴れ初めがあったのだな」
「リアらしいっちゃらしいな……」

 全然記憶にないんですけど!? 昔の私、そんなこと言ってたんですね。
 たぶん『お菓子を焼くのが上手い』>『スラムの出身』だったんだと思います。
 リア的にはどこの出身でも気にならないですけどね。
 エミリーはエミリーなので。

「ひとまず早急に移動しましょう。スラムの入り口には外の人間から略奪しようとする輩がいます。私たちにとっては中の方が安全です」

 エミリーの進言でスラムの奥地へと進んでいきます。

「……酷い惨状だな。父上はどうしてこれを放置しているんだ」

 食糧も足りていないのでしょう。
 地面に横たわるのは力のない老人や子供です。
 悪臭だらけで、衛生的にも良くないのが分かります。

「ここは王国の闇です。権力闘争に負けた者や、罪人の血筋が流れ着く場所がここです。緩やかに死を待つだけの場所と言えるでしょう」
「今すぐ国として介入するべきだ」
「それには及ばねえよ」

 派手な柄物のシャツを着た大男が現れました。
 み、見るからに強いです! 最弱の生き物である私は、相手の強さを瞬時に判断する能力があります。この方は、エミリーに匹敵します……!

「まだ生きてたんですね。父さん」
「えっ!? エミリーのお父さんなんですか!?」
「そうだ。俺がエミリーの父にしてスラムの支配者、ティボーだ」
「いつも娘さんにはお世話になっておりますー!」

 まずは挨拶しなくちゃですね!!!!

「……ほう。俺が怖くねえのか?」
「エミリーのお父さんですからねぇ!」
「そうかそうか。だが、俺は逃げ出した娘を許してねえんだ。散々俺がここにいろって言ったのに勝手に逃げ出しやがって。俺が誰の為にのし上がったと思ってるんだ。おめえがエミリーを誑かしたって言うなら、少し痛めつけてやらないとな」
「お嬢様、お下がりください。ここは私が……」

 せっかく会えたのに一触即発の雰囲気ですね!

「親子で喧嘩は良くないです!」
「なんだと?」
「ティボーさんはエミリーを守る為に偉くなったんじゃないんですか? エミリーは外に行っちゃいましたけど、ちゃんとイキイキと働いているんです。送り出すのはつらいと思いますけど、ちゃんと受け入れなきゃダメです!」
「小娘ごときが、この俺に命令すんのか?」

 殿下とニコラ、それにエミリーが得物に手をかけます。
 でも、リアだって怒ってるんですからね!

「素直になってください!」
「は?」
「エミリーが帰って来たって聞いて、急いで迎えにきたのは怒りの感情だけが理由だったんですか!? 違いますよね! エミリーの顔が見たかったからじゃないんですか!」
「……ッ」

 ティボーさんが動揺してます! やっぱりリアの言ったことは正しかったんですよ!

「どうしてそう思うんだ。俺はこんな仏頂面だし、いい親父になんか見えないだろ」
「エミリーは、私と違っていい娘なんです。だから、絶対お父さんもいい人のはずなんです。ティボーさん、エミリーに素直になってあげてください。エミリーは、一生懸命がんばっているんですよ?」

 エミリーは子供の頃から遊ぶ時間もあまりなくて、本当に頑張り屋さんなんです。
 遊ぶ時間もないのに私の為にお菓子を焼いたり勉強を手伝ってくれたり、恋を応援してくれたりして……。

「おい、お貴族様がスラムの親子のことなんかで本気になんなよ……」
「エミリーは私のお姉ちゃんなんです。エミリーの家族は私の家族でもあります」
「……なんなんだよお前は」

 ティボーさんが溜息をつきます。そうすると、少し年を取った印象になりました。

「そういや、娘のことで説教されたのは妻が逝っちまって以来だな」
「エミリーも、お父さんにはちゃんと連絡してあげなくちゃ駄目ですよ」
「彼はスラムの人間ですし……。私からの手紙なんてもらってもメシにならないって捨てるだけですよ」
「そんなわけないじゃないですか!!!! ティボーさんはエミリーが帰ってきたらすぐに迎えるようなパパなんですよ!? 私のお父様とは違うので、ちゃんと仲良くしてください!」

 二人に説教をしてしまいました。
 たまにはリアだって怒るんですからね!

「はは……。参ったな。まあ、こんなところで立ち話もなんだ。俺の住処にこいよ。お嬢様のおかげでもうやりあうって雰囲気でもないだろ」
「父さんのこんなに穏やかな声を始めて聞きました」
「俺も年なのかもな」
「冗談まで言うんですね」
「少しは親をいたわれってんだ」

 親子らしい会話ができてるみたいで嬉しいです。

「お嬢様、ありがとうございます」
「俺も感謝するぜ。今のエミリーを見ればよく分かる。娘の面倒をよく見てくれたみたいだな」
「へ? べ、別に当り前のことをしていただけですよ!」

 照れちゃいますね! 私、大活躍では!?
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