18 / 29
14 スラムの帝王
しおりを挟む
エミリーは淡々と告白します。
「私は物心がつく頃までこの掃き溜めみたいな街にいたんです。お嬢様は知っておいでですよね?」
「ふぇ?」
「私がお嬢様の専属メイドに決まったあと、私はお嬢様を脅かそうとスラムの出身であることを告白しました。ですが、お嬢様は『お菓子を焼くのが上手いのでお菓子屋さんの娘だと思いました』と笑ってくださったんです。あの笑顔が、私の人生を光へと導いてくださったのです」
「二人にはそんな馴れ初めがあったのだな」
「リアらしいっちゃらしいな……」
全然記憶にないんですけど!? 昔の私、そんなこと言ってたんですね。
たぶん『お菓子を焼くのが上手い』>『スラムの出身』だったんだと思います。
リア的にはどこの出身でも気にならないですけどね。
エミリーはエミリーなので。
「ひとまず早急に移動しましょう。スラムの入り口には外の人間から略奪しようとする輩がいます。私たちにとっては中の方が安全です」
エミリーの進言でスラムの奥地へと進んでいきます。
「……酷い惨状だな。父上はどうしてこれを放置しているんだ」
食糧も足りていないのでしょう。
地面に横たわるのは力のない老人や子供です。
悪臭だらけで、衛生的にも良くないのが分かります。
「ここは王国の闇です。権力闘争に負けた者や、罪人の血筋が流れ着く場所がここです。緩やかに死を待つだけの場所と言えるでしょう」
「今すぐ国として介入するべきだ」
「それには及ばねえよ」
派手な柄物のシャツを着た大男が現れました。
み、見るからに強いです! 最弱の生き物である私は、相手の強さを瞬時に判断する能力があります。この方は、エミリーに匹敵します……!
「まだ生きてたんですね。父さん」
「えっ!? エミリーのお父さんなんですか!?」
「そうだ。俺がエミリーの父にしてスラムの支配者、ティボーだ」
「いつも娘さんにはお世話になっておりますー!」
まずは挨拶しなくちゃですね!!!!
「……ほう。俺が怖くねえのか?」
「エミリーのお父さんですからねぇ!」
「そうかそうか。だが、俺は逃げ出した娘を許してねえんだ。散々俺がここにいろって言ったのに勝手に逃げ出しやがって。俺が誰の為にのし上がったと思ってるんだ。おめえがエミリーを誑かしたって言うなら、少し痛めつけてやらないとな」
「お嬢様、お下がりください。ここは私が……」
せっかく会えたのに一触即発の雰囲気ですね!
「親子で喧嘩は良くないです!」
「なんだと?」
「ティボーさんはエミリーを守る為に偉くなったんじゃないんですか? エミリーは外に行っちゃいましたけど、ちゃんとイキイキと働いているんです。送り出すのはつらいと思いますけど、ちゃんと受け入れなきゃダメです!」
「小娘ごときが、この俺に命令すんのか?」
殿下とニコラ、それにエミリーが得物に手をかけます。
でも、リアだって怒ってるんですからね!
「素直になってください!」
「は?」
「エミリーが帰って来たって聞いて、急いで迎えにきたのは怒りの感情だけが理由だったんですか!? 違いますよね! エミリーの顔が見たかったからじゃないんですか!」
「……ッ」
ティボーさんが動揺してます! やっぱりリアの言ったことは正しかったんですよ!
「どうしてそう思うんだ。俺はこんな仏頂面だし、いい親父になんか見えないだろ」
「エミリーは、私と違っていい娘なんです。だから、絶対お父さんもいい人のはずなんです。ティボーさん、エミリーに素直になってあげてください。エミリーは、一生懸命がんばっているんですよ?」
エミリーは子供の頃から遊ぶ時間もあまりなくて、本当に頑張り屋さんなんです。
遊ぶ時間もないのに私の為にお菓子を焼いたり勉強を手伝ってくれたり、恋を応援してくれたりして……。
「おい、お貴族様がスラムの親子のことなんかで本気になんなよ……」
「エミリーは私のお姉ちゃんなんです。エミリーの家族は私の家族でもあります」
「……なんなんだよお前は」
ティボーさんが溜息をつきます。そうすると、少し年を取った印象になりました。
「そういや、娘のことで説教されたのは妻が逝っちまって以来だな」
「エミリーも、お父さんにはちゃんと連絡してあげなくちゃ駄目ですよ」
「彼はスラムの人間ですし……。私からの手紙なんてもらってもメシにならないって捨てるだけですよ」
「そんなわけないじゃないですか!!!! ティボーさんはエミリーが帰ってきたらすぐに迎えるようなパパなんですよ!? 私のお父様とは違うので、ちゃんと仲良くしてください!」
二人に説教をしてしまいました。
たまにはリアだって怒るんですからね!
「はは……。参ったな。まあ、こんなところで立ち話もなんだ。俺の住処にこいよ。お嬢様のおかげでもうやりあうって雰囲気でもないだろ」
「父さんのこんなに穏やかな声を始めて聞きました」
「俺も年なのかもな」
「冗談まで言うんですね」
「少しは親をいたわれってんだ」
親子らしい会話ができてるみたいで嬉しいです。
「お嬢様、ありがとうございます」
「俺も感謝するぜ。今のエミリーを見ればよく分かる。娘の面倒をよく見てくれたみたいだな」
「へ? べ、別に当り前のことをしていただけですよ!」
照れちゃいますね! 私、大活躍では!?
「私は物心がつく頃までこの掃き溜めみたいな街にいたんです。お嬢様は知っておいでですよね?」
「ふぇ?」
「私がお嬢様の専属メイドに決まったあと、私はお嬢様を脅かそうとスラムの出身であることを告白しました。ですが、お嬢様は『お菓子を焼くのが上手いのでお菓子屋さんの娘だと思いました』と笑ってくださったんです。あの笑顔が、私の人生を光へと導いてくださったのです」
「二人にはそんな馴れ初めがあったのだな」
「リアらしいっちゃらしいな……」
全然記憶にないんですけど!? 昔の私、そんなこと言ってたんですね。
たぶん『お菓子を焼くのが上手い』>『スラムの出身』だったんだと思います。
リア的にはどこの出身でも気にならないですけどね。
エミリーはエミリーなので。
「ひとまず早急に移動しましょう。スラムの入り口には外の人間から略奪しようとする輩がいます。私たちにとっては中の方が安全です」
エミリーの進言でスラムの奥地へと進んでいきます。
「……酷い惨状だな。父上はどうしてこれを放置しているんだ」
食糧も足りていないのでしょう。
地面に横たわるのは力のない老人や子供です。
悪臭だらけで、衛生的にも良くないのが分かります。
「ここは王国の闇です。権力闘争に負けた者や、罪人の血筋が流れ着く場所がここです。緩やかに死を待つだけの場所と言えるでしょう」
「今すぐ国として介入するべきだ」
「それには及ばねえよ」
派手な柄物のシャツを着た大男が現れました。
み、見るからに強いです! 最弱の生き物である私は、相手の強さを瞬時に判断する能力があります。この方は、エミリーに匹敵します……!
「まだ生きてたんですね。父さん」
「えっ!? エミリーのお父さんなんですか!?」
「そうだ。俺がエミリーの父にしてスラムの支配者、ティボーだ」
「いつも娘さんにはお世話になっておりますー!」
まずは挨拶しなくちゃですね!!!!
「……ほう。俺が怖くねえのか?」
「エミリーのお父さんですからねぇ!」
「そうかそうか。だが、俺は逃げ出した娘を許してねえんだ。散々俺がここにいろって言ったのに勝手に逃げ出しやがって。俺が誰の為にのし上がったと思ってるんだ。おめえがエミリーを誑かしたって言うなら、少し痛めつけてやらないとな」
「お嬢様、お下がりください。ここは私が……」
せっかく会えたのに一触即発の雰囲気ですね!
「親子で喧嘩は良くないです!」
「なんだと?」
「ティボーさんはエミリーを守る為に偉くなったんじゃないんですか? エミリーは外に行っちゃいましたけど、ちゃんとイキイキと働いているんです。送り出すのはつらいと思いますけど、ちゃんと受け入れなきゃダメです!」
「小娘ごときが、この俺に命令すんのか?」
殿下とニコラ、それにエミリーが得物に手をかけます。
でも、リアだって怒ってるんですからね!
「素直になってください!」
「は?」
「エミリーが帰って来たって聞いて、急いで迎えにきたのは怒りの感情だけが理由だったんですか!? 違いますよね! エミリーの顔が見たかったからじゃないんですか!」
「……ッ」
ティボーさんが動揺してます! やっぱりリアの言ったことは正しかったんですよ!
「どうしてそう思うんだ。俺はこんな仏頂面だし、いい親父になんか見えないだろ」
「エミリーは、私と違っていい娘なんです。だから、絶対お父さんもいい人のはずなんです。ティボーさん、エミリーに素直になってあげてください。エミリーは、一生懸命がんばっているんですよ?」
エミリーは子供の頃から遊ぶ時間もあまりなくて、本当に頑張り屋さんなんです。
遊ぶ時間もないのに私の為にお菓子を焼いたり勉強を手伝ってくれたり、恋を応援してくれたりして……。
「おい、お貴族様がスラムの親子のことなんかで本気になんなよ……」
「エミリーは私のお姉ちゃんなんです。エミリーの家族は私の家族でもあります」
「……なんなんだよお前は」
ティボーさんが溜息をつきます。そうすると、少し年を取った印象になりました。
「そういや、娘のことで説教されたのは妻が逝っちまって以来だな」
「エミリーも、お父さんにはちゃんと連絡してあげなくちゃ駄目ですよ」
「彼はスラムの人間ですし……。私からの手紙なんてもらってもメシにならないって捨てるだけですよ」
「そんなわけないじゃないですか!!!! ティボーさんはエミリーが帰ってきたらすぐに迎えるようなパパなんですよ!? 私のお父様とは違うので、ちゃんと仲良くしてください!」
二人に説教をしてしまいました。
たまにはリアだって怒るんですからね!
「はは……。参ったな。まあ、こんなところで立ち話もなんだ。俺の住処にこいよ。お嬢様のおかげでもうやりあうって雰囲気でもないだろ」
「父さんのこんなに穏やかな声を始めて聞きました」
「俺も年なのかもな」
「冗談まで言うんですね」
「少しは親をいたわれってんだ」
親子らしい会話ができてるみたいで嬉しいです。
「お嬢様、ありがとうございます」
「俺も感謝するぜ。今のエミリーを見ればよく分かる。娘の面倒をよく見てくれたみたいだな」
「へ? べ、別に当り前のことをしていただけですよ!」
照れちゃいますね! 私、大活躍では!?
0
あなたにおすすめの小説
過労薬師です。冷酷無慈悲と噂の騎士様に心配されるようになりました。
黒猫とと
恋愛
王都西区で薬師として働くソフィアは毎日大忙し。かかりつけ薬師として常備薬の準備や急患の対応をたった1人でこなしている。
明るく振舞っているが、完全なるブラック企業と化している。
そんな過労薬師の元には冷徹無慈悲と噂の騎士様が差し入れを持って訪ねてくる。
………何でこんな事になったっけ?
身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)
柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!)
辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。
結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。
正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。
さくっと読んでいただけるかと思います。
婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました
春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。
名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。
姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。
――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。
相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。
40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。
(……なぜ私が?)
けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。
王宮メイドは今日も夫を「観察」する
kujinoji
恋愛
「はぁぁ〜!今日も働くヴィクター様が尊すぎる……!」
王宮メイドのミネリは、今日も愛しの夫ヴィクターを「観察」していた。
ヴィクターが好きすぎるあまり、あますところなく彼を見つめていたいミネリ。内緒で王宮メイドになり、文官である夫のもとに通うことに。
だけどある日、ヴィクターとある女性の、とんでもない場面を目撃してしまって……?
※同じものを他サイトにて、別名義で公開しています。
なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた
たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。
女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。
そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。
夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。
だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……?
※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません……
※他サイト様にも掲載始めました!
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
氷の公爵の婚姻試験
潮海璃月
恋愛
ある日、若き氷の公爵レオンハルトからある宣言がなされた――「私のことを最もよく知る女性を、妻となるべき者として迎える。その出自、身分その他一切を問わない。」。公爵家の一員となる一世一代のチャンスに王国中が沸き、そして「公爵レオンハルトを最もよく知る女性」の選抜試験が行われた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる