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護衛依頼※キョウヤ視点

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 王国に転移して1カ月が過ぎた。
 僕達は聖剣の使い方を学ぶ為に魔物と戦い、レベルも50台まで上がった。
 この世界の人達は転移者と違ってメニューからスキルを取得することができないみたいで、たった1カ月で僕達は国王直下の精鋭近衛騎士団を圧倒できるくらいに強くなっていた。

「ユイカの言うとおり、一つにスキルに絞って鍛えていく方が強くなれますね。スキルレベルがカンストしてから、戦いがかなり楽になりました」
「効果量が大まで増えると、ダメージの桁数が変わるよな。ユイカの知識は本当に役立つわ」
「家に帰れなくてネカフェでネトゲ―ばっかしてたからさ。キツイ怪我でもあたしのアルティメット・ヒールなら癒せるから頼っちゃってね?」

 僕とツルギさんが剣士型、ユイカは魔術師型で成長してる。ユイカの知識を疑ってた僕だけど、彼女の持ってる情報は豊富で、さすがに信じざるを得なかった。ただ、そんな彼女でもランカーと呼ばれる廃人達には及ばなかったみたいだから、ゲームの世界は奥が深いと思う。

「皆さん、陛下がお呼びです」

 日課の訓練を終えたところで、1カ月ぶりの招集があった。
 近衛騎士に呼ばれて緊張しつつ玉座へ向かうと、陛下は人の好さそうな笑顔で僕達を迎えた。

 僕達はこの世界の作法に従って、膝をつく。

「顔を上げてほしい」

 陛下に従い、僕達は顔を上げた。

「随分と聖剣が様になっているじゃないか。3人とも見違えたよ」
「ありがとうございます」

 3人で呼ばれた時は、一番言葉遣いが丁寧な僕が話すよう言われている。
 僕としてはツルギさんがリーダーだと思ってるんだけど、宰相に決められたことだから覆すのは難しい。
 国のナンバー2の言葉はそれだけ重いってことだ。

「実は君達に頼みがあってね。私の護衛をしてもらえないだろうか?」
「相手は何者でしょうか?」
「東南にある辺境の新領主だ。初めて会う顔でな。得体の知れない噂もある為、念の為に護衛を頼みたい」
「例え相手が何者であっても、全力でお守りする所存です」
「よく言ってくれた。詳細は近衛騎士のパトリスから報告を受けてくれ」

 謁見の間を出た後、僕達は別室にて件の騎士からの報告書を受け取った。

「得体の知れない噂って何ですかね」
「こいつを読めば分かりそうだぜ」

 報告書に書かれているのは、エリク・オレスムという新領主の功績だった。

「10代で領主ってとんでもなく優秀なんですね」
「こいつはそんな温い野郎じゃねえよ。大盗賊のアジトをたった一人で殲滅、スタンピードで大量発生した魔物の大半を、錬成したミスリルゴーレムで封殺してたらしい。なあユイカ、こんなことできるもんなのか?」
「ゲーム的には絶対無理……。このティボーって奴、最上級クラスの装備で身を固めてるし、厄介なレイドボスなんだよ。レベルは90台で、ゲーム時代の私じゃ絶対に攻略できなかった。課金しまくってるランカーでようやくって感じかな。あと、このミスリルゴーレムっていうのも意味分かんないし。こんなのゲームにいなかったから。それと、スタンビートを一人で対処っていうのは流石に嘘だと思いたい……。こんな人がいたら魔族にも対処できちゃうんじゃないの?」
「聖剣もないんだし流石にそれはないだろ。でも、それくらいヤバい奴ってことだな。ここに書かれていることが一字一句本当ならって話だが」

 つまりデタラメが書かれている可能性もあるわけだ。
 というか、僕達の間に流れてるのは報告書を疑う空気だった。

「3枚目だけど、こっちの方もかなりやばいかも。なんか名簿ついてるんだけど、これ全部この人のお嫁さんなんだって」
「はぁ!? マジか……いや、それよりも、ここに書いてある内容マズくないか?」
「なんて書いてあったの?」
「近衛騎士が情報を探ろうとエリクの妻達を手紙で篭絡しようとしたが、成果は出なかった。それどころかすぐに領主に話がいっちまって、向こうは王族に不快感を持ってるそうだ。めんどくせー案件だな」
「何してくれてるんだって感じですね。情報収集とか言ってますけど、仕事放り出して口説いてただけじゃないですか?」
「ありそう……」

 情報が欲しいなら金貨でも握らせれば済む話だ。
 わざわざ恋文にする必要はない。

「ま、なんにせよ陛下が俺達を頼った理由が分かったな。精鋭のはずの近衛騎士がやらかして、俺達しか頼れないってことだ。ここは一発、勇者様の格の違いってやつを見せてやろうぜ」
「そうね。たぶん、この報告書は騎士達が噂を元に適当にでっち上げたものなんじゃないかなって思う。こんなこと、本編でもありえなかったから。ただ、そうなると情報操作がすごく上手い人ってことになるから、騙されたりしないよう気をつける感じでいった方がいいかもね」
「十分に注意して対処しましょう」

 強くなった僕達の姿を陛下にもお見せしたいな……。
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