自滅王子はやり直しでも自滅するようです(完)

みかん畑

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婚約破棄と新婚約者

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「リリナ。申し訳ないが、俺との婚約を破棄してくれないか?」
「ええと……」

 学園の卒業記念パーティの日、レギ・フードル王子からの突然の申し出に、私は困惑していた。

 私は構わないし、むしろ嬉しいくらいなのだけど、本当に構わないのだろうか。

 彼は人の顔を覚えるのが苦手だし、執務もあまり得意な方ではない。

 婚約者の私がいなくなった後、彼がどんな問題を起こすのかが気がかりだ。
 
 と、私の困惑を見て取った彼が、分かりやすく眉を吊り上げた。

「前から君の態度には不満があった。こういう風に、俺が何か意見を出すと困惑したりバカにしたような目を向けるよね。それで俺がどれだけ傷ついていたか、分かるかい? 俺は毎日枕を濡らしていたよ!」
「お言葉ですが殿下、それはあなたの行動にも問題があったと思うのですが」

 いきなりキスがしたいと言い出したり、セッ〇スさせろと命令してきたり、私のことを性欲処理の道具くらいにしか考えていない彼の態度には、正直ずっと呆れていた。

 私は殿下と婚約したけど、それはお試し期間ということであって、婚約イコール即座に恋愛関係に発展するわけではない。

 私が彼の要求を断ってきたことにはちゃんと理由があったんだけど、この様子だと気づいていないようだ。

 仮に殿下との婚約が成就しなかった場合(現に今、破局している)、私と彼が関係を持っていればそれは後の火種になりかねない。

 世継ぎ問題や今後の私の立場など、よくない爪痕を残すことになるのだ。

 その辺りの重要性が分かっていれば、簡単に婚前交渉を要求したりできないはずなのだけど。……うん、きっと何も分かっていなかったんだね。

 なんだか疲れてしまったし、もう終わらせたい気持ちもあるのだけど。
 会場に来ているはずの陛下と宰相はどこにいるのかしら。
 ああ、ちょうど他国の賓客と話し込んでいるのね。
 この様子だともうしばらくは気づかなそう。

 と、考えていると彼がいつものように癇癪を起こした。

「もう構わないだろう! 婚約によって発生する責任は全て俺が取る! 君がもし、ここで態度を改め、俺を恋人として受け入れるのであれば、まだ可能性は残そうと思っていた。だけど、もう完全に頭にきたから全部なしだ。俺と君は今この瞬間から他人、そういうことでいいね!?」
「書面を残していただけるのであれば構いませんが」
「ハッ! 皆、聞いたかい!? これが、リリナ・カフテル嬢の素顔だよ! 巷では頭がいいとか顔がいいとかチヤホヤされているけど、彼女って本当に冷たい人だよね! 彼女には人を思う心がないんだね!」

 パーティに参列している他の学友たちを見やる。
 皆、私に同情しているような気がする。

 煌びやかな会場、絢爛なホールに集まった貴族たちの中で、周りの見えていない彼だけが孤立してしまった。

 だけど、レギは仮にも王族、王位継承権を持つ次期国王候補である。

 表立って彼に意見できる者は少数だ。
 誰も、私を助けてはくれない。
 そう、思っていたのだけど。

「へえ、せっかくの卒業記念パーティの日に、殿下は婚約を破棄するんですね」

 空気を読まない穏やかな声が、隣から降ってきた。
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