妹に命じられて辺境伯へ嫁いだら王都で魔王が復活しました(完)

みかん畑

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 ポッカリと開いた穴から空が見える。

 大穴に落とされたアズナは孤独になった。

「ねえ、ここから出してよ! あたしが悪かったから!」

 ユージンが魔法で作った大穴に落とされて以来、誰も呼びかけに応えない。
 既にあれから30分以上が経過し、時間の感覚が狂い始めている。

「出してよ……助けてレールディア」

 ここにこうしてジッとしていれば魔王をやり過ごせるのだろうか。
 叫ぶことにも疲れて黙って土の壁にもたれていると、不意に地鳴りの音が響いてきた。

 もう、魔王は目と鼻の先にいるのだろう。

(大丈夫、ここにいればきっと気づかれない)

 表の方から獣の嘶きのような悲鳴が聞こえた。

 ああ、きっと父母のどちらかが喰われたのだ。

 自分を産んだという功績を覗けば、どこまでも頭の悪い屑みたいな両親だった。
 胸に痛みも感じず悲鳴を聞き流し、必死に天へと祈る。

 どうかあたしをお助けください。
 あの無能で知恵が回らない姉よりもあたしの方が価値のある人間なんです。

 アズナはジッとその時を待つ。
 そして、魔王が結界を破ろうとし始める。
 どうやら、アズナには目もくれず結界へ挑んだらしい。

 きっと天への祈りが通じたのだろう。
 アズナは自分が安全圏にいるのを自覚すると、すぐに心のなかで呪詛を吐き始めた。

(結界なんか壊れちゃえ。あたしをバカにした奴は皆死んじゃえ!)

 結界を崩して辺境を蹂躙しろ。
 姉の無能さを知って、皆で後悔するといい。

 姉や辺境伯、国王が無様に死ぬところを夢想する。
 心のなかに暗い愉悦が滲む。

 地響き、魔王の悲鳴、地響き……。
 頭の足りない魔王が何度も結界を破ろうとして、自滅しているらしい。

(何をやっているのよ。このままじゃエネルギーが足りずに自滅しちゃうんじゃないの? 王都と近郊の街で食べた連中、どんだけ魔力がなかったのよ)

 と、繰り返されていたルーティーンが途切れる。

 そして、ぽっかりと開いた空から、魔王の目が覗き込んできた。

「いやぁああああああああああああああああ!!!!!」

 助けて助けて助けてごめんなさいごめんなさいごめんなさ――

 魔王が穴に手を入れようとして、入らないと分かると指を伸ばしてくる。
 すりつぶされる!?

「来るな来るな来るな!!!!」

 魔法を連射する。土埃が舞っても気にしない。

「来るなぁー!!!!」

 魔法を撃ち続けて、魔力が空になる頃には、あの恐ろしい目は消えていた。

「はぁ……はぁ……助かった」

 地鳴りの音ももうしない。
 もしかして、あたしが魔王を倒してしまったのだろうか。

「誰か状況を教えなさいよ、グズが」

 アズナは疲れ果てて、穴のなかに倒れた。

 最後まで救いの手など訪れないことを、アズナは知らない。
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