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「ねえ、満足? あたし達を結界から追い出して魔王の餌にして、満足かって聞いてるのよ! 答えなさいよ!?」
泥に塗れた妹が姉を睨む。
ユージンがそんなアズナを見下した。
「勝手に自滅して餌になっているだけだろう。お前が姉の恨みを買わなければ何事もなく俺の領内で過ごせていたはずだ。ションベンを漏らすこともなかった」
「……ッ!」
アズナが悔しげに唇を噛む。
「知っているか? 魔王に魂を食われた者は永遠に転生できず魔王の胃のなかで苦しむそうだ。お前も息巻いていられるのは今の内だから、存分に噛みつくといいぞ」
「嫌! 死にたくない! ユージン様、どうか私の姉を説得してください! どうかお願いします!」
ユージンが鼻で笑う。
「目の前に姉がいるのに頭を下げるのは俺に対してのみか。相当、姉の存在が気に入らないようだな」
「あたしは……あたしはっ」
アズナが言いよどむ中、王都の方から光が見えた。
漆黒の魔力が十字架のように燃え上がり、王都を焼いていた。
最早、生き残りは期待できない。
「手遅れになったか。これから辺境伯が国の中心となるな」
クードリファが皮肉っぽく呟く。
王都へ降り立った降りた巨大な、老人の姿をした魔王が、こちらへ歩いてくるのが見える。
いよいよ魔王が辺境に目をつけたのだ。
「レールディア、結界の中へ戻ろう。検問の続きはなかでやれ。外に出ていたら巻き込まれて死ぬ」
「待ちなさいよ! ねえ、あたしは!?」
「ごめんねアズナ。私の力では結界を完全に制御することは難しいの」
「じゃあ、どうするのよ!? あたしに死ねっていうの!?」
ユージンも国王も、呆れた様子で喚くアズナを見据えている。
「お前が今すべきことは、姉を苛めていた罪を認めて謝罪することだろう」
「だって……それは……あたしだって被害者だったのよ? 馬鹿な姉が何回も入学試験に落ちて、そのせいであたしまで馬鹿にされていたの!」
「それで持参金も寄こさず姉をビッチ扱いして俺に寄こしたのか。従者もつけず、替えのドレスすら与えず、まるで俺がレールディアを追い返すことを前提にしていたようだったな。出戻りした姉をさらに苛め抜くつもりだったのか?」
「ち、ちが……ふざけんな! あたしはそんなこと考えてない! 心の底では姉の幸せを祈っていたわ!」
誠意の欠片もない言葉である。
いよいよ魔王が近づいてきて、ユージンとクードリファは撤退の準備を始めた。
「国王命令だ。アズナよ、お前は父母と共に勇敢に魔王と戦い足止めしてみせよ」
「足止めして何の意味があるのよ……」
「魔王が人を喰らうのは己の身体を維持する為だろう。足止めしていればエネルギーが足りず消滅するかもしれない。その為の、結界魔法なのだろうな」
「足止めなんて無理に決まってるでしょう!?」
「何故だ? お前の馬鹿にしている姉よりも実力を示すチャンスだろう。挑む気概はないのか?」
「ありません……!!!」
「ならば言い換えよう。レールディアに拒絶された愚かな一家よ。お前たちは死ね」
アズナが獣のような息遣いでレールディアを睨む。
「じゃあ、このロープ解きなさいよ。あたしがあの魔王を倒してやる」
「切ってやれ」
ユージンが命じると、騎士がアズナの拘束を解く。
「ふふ、あははははは! 死ねレールディア!」
「分かっていた」
アズナが姉に向かって魔法を放とうとした瞬間、ユージンが大地を操る魔法で地面を大きく揺るがした。
ユージン達の足下が隆起している。
否、アズナの足下が激しく崩れていったのだ。
アズナの足元に大穴が生まれ、彼女は落下する。
「きゃぁぁぁ!」
泥に塗れた妹が姉を睨む。
ユージンがそんなアズナを見下した。
「勝手に自滅して餌になっているだけだろう。お前が姉の恨みを買わなければ何事もなく俺の領内で過ごせていたはずだ。ションベンを漏らすこともなかった」
「……ッ!」
アズナが悔しげに唇を噛む。
「知っているか? 魔王に魂を食われた者は永遠に転生できず魔王の胃のなかで苦しむそうだ。お前も息巻いていられるのは今の内だから、存分に噛みつくといいぞ」
「嫌! 死にたくない! ユージン様、どうか私の姉を説得してください! どうかお願いします!」
ユージンが鼻で笑う。
「目の前に姉がいるのに頭を下げるのは俺に対してのみか。相当、姉の存在が気に入らないようだな」
「あたしは……あたしはっ」
アズナが言いよどむ中、王都の方から光が見えた。
漆黒の魔力が十字架のように燃え上がり、王都を焼いていた。
最早、生き残りは期待できない。
「手遅れになったか。これから辺境伯が国の中心となるな」
クードリファが皮肉っぽく呟く。
王都へ降り立った降りた巨大な、老人の姿をした魔王が、こちらへ歩いてくるのが見える。
いよいよ魔王が辺境に目をつけたのだ。
「レールディア、結界の中へ戻ろう。検問の続きはなかでやれ。外に出ていたら巻き込まれて死ぬ」
「待ちなさいよ! ねえ、あたしは!?」
「ごめんねアズナ。私の力では結界を完全に制御することは難しいの」
「じゃあ、どうするのよ!? あたしに死ねっていうの!?」
ユージンも国王も、呆れた様子で喚くアズナを見据えている。
「お前が今すべきことは、姉を苛めていた罪を認めて謝罪することだろう」
「だって……それは……あたしだって被害者だったのよ? 馬鹿な姉が何回も入学試験に落ちて、そのせいであたしまで馬鹿にされていたの!」
「それで持参金も寄こさず姉をビッチ扱いして俺に寄こしたのか。従者もつけず、替えのドレスすら与えず、まるで俺がレールディアを追い返すことを前提にしていたようだったな。出戻りした姉をさらに苛め抜くつもりだったのか?」
「ち、ちが……ふざけんな! あたしはそんなこと考えてない! 心の底では姉の幸せを祈っていたわ!」
誠意の欠片もない言葉である。
いよいよ魔王が近づいてきて、ユージンとクードリファは撤退の準備を始めた。
「国王命令だ。アズナよ、お前は父母と共に勇敢に魔王と戦い足止めしてみせよ」
「足止めして何の意味があるのよ……」
「魔王が人を喰らうのは己の身体を維持する為だろう。足止めしていればエネルギーが足りず消滅するかもしれない。その為の、結界魔法なのだろうな」
「足止めなんて無理に決まってるでしょう!?」
「何故だ? お前の馬鹿にしている姉よりも実力を示すチャンスだろう。挑む気概はないのか?」
「ありません……!!!」
「ならば言い換えよう。レールディアに拒絶された愚かな一家よ。お前たちは死ね」
アズナが獣のような息遣いでレールディアを睨む。
「じゃあ、このロープ解きなさいよ。あたしがあの魔王を倒してやる」
「切ってやれ」
ユージンが命じると、騎士がアズナの拘束を解く。
「ふふ、あははははは! 死ねレールディア!」
「分かっていた」
アズナが姉に向かって魔法を放とうとした瞬間、ユージンが大地を操る魔法で地面を大きく揺るがした。
ユージン達の足下が隆起している。
否、アズナの足下が激しく崩れていったのだ。
アズナの足元に大穴が生まれ、彼女は落下する。
「きゃぁぁぁ!」
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