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ギルド内の会議室。ギルドマスターのノルド、サブマスターのレギン、『ファリスの希望』の4人、ホウル、グラト、レイノの9人が机を囲んでいる。
「それじゃあ、最初から話してもらおうか。」
「はい。初めに『アガラ・ゴロシャ』に合ったのは…」
二人で行こうとしていた『シューレム』ダンジョンの話をしていて『アガラ・ゴロシャ』のグーリに話しかけられ、案内に雇われたこと、『森ルート』で『シューレム』ダンジョンへ行ったことを話した。ホウルが主に話し、俺は補足をした。
『シューレム』ダンジョンに入ってからの行動を話すとその場の全員が呆れ返っていた。
「初めてのダンジョンで2日分の行程を1日で踏破するなどとてもBランクパーティーとは思えない無謀さだな。」
「グーリは一回言い出すと聞かないんだ。俺達はBランクだから他の奴らより早く進めるってな。」
「魔物からアイテムが採れないほどの攻撃を与えるって何考えてるんだ?アイテム売買しないでどうやって生計を立ててたんだ?」
「俺達は基本“護衛ミッション”か“殲滅ミッション”しか請けなかった。“採集ミッション”は女子供にとっておいてやったんだ。アイテムの回収は男がやることじゃない。」
「お宝部屋を見つけたのはグラトだったのに、横取りしようとしたの?」
「違う。みんなで山分けだ。いつもグーリがそうしてて、不満が出たことはない。」
「仲間が瀕死の重傷を負ったときって人間性出るよねぇ。」
「冒険者は常に生き残ることに重きを置く。必要なアイテムを使い切ってしまえば結局全滅することになるのだから、早めに切り捨てて一人でも多く生還するというのが『アガラ・ゴロシャ』のやり方だ。」
「グラトを黒い魔獣と一緒に閉じ込めて自分だけ逃げ出すなんて、人として考えられない。」
「誰かが囮になって犠牲が最小限に抑えられるならそれは有りだろう。グーリは『あいつ自ら囮になってくれた』とか言っていた気がするが…?」
「あいつがグラトとその黒豹の仔をお宝部屋に蹴り込んだところは見てないのか…。」
グラトの肩に乗った黒豹の仔はずっと眠っている。エルやチリスが突付いても一向に起きる気配はない。
「…『アガラ・ゴロシャ』って凄いな。生き残るってことに徹底してる。」
「俺達はそうやって生きてきたんだ。」
ラゼル村の人間には彼等の行き方は凄絶に、非人道的に感じられた。
「ラゼル村の冒険者ギルドの考え方とは随分違うんだね。」
「ああ。本当なら利き腕をもがれた俺はとっくにダンジョンの奥で屍になってるはずだった。」
「そのことだ。ホウル、君が治したのかね?」
「はい。」
「もげた腕をくっつける程の回復魔法だぞ?」
「無我夢中でしたので。」
「…それで通ると思ってるのか?」
「でも事実こうしてくっついてちゃんと動いてますし。」
誰もがホウルにそんな魔法が使えないであろうことは判っている。だが他に回復魔法が使える人間がその場にいなかった事も事実。みんなの視線がレイノに集まる。
「俺は痛みと喪失感で意識が朦朧としていたので何も思い出せない。」
「んー、ホウルが治したのかも知れない。でもそれは不可能なはず…今、この件はここまでにしよう。」
ギルマスはちらりとグラトを見たが何も言わなかった。
「それから?」
グラトを救出したこと、魔法使いを埋葬したこと、ダンジョンから出て、急いで戻るために“岩山ルート”を選んで来たことを話した。
「俺達が『アガラ・ゴロシャ』と関わったことは以上です。」
「なるほど。グーリ殿の話に比べて君たちの話に矛盾点はないな。レイノ殿には贔屓に見えるかもしれないが、私達は彼等が信用に足る人物であることをよく知っているんだ。」
「別にいい。この世界をあちこち回っていれば、いろんな考え方の違いにぶち当たるもんだ。慣れているさ。」
「レイノ殿はこの後どうされるのかな?」
「今は生きて戻れた奇蹟で頭が一杯だ。当面この村にお世話になろうと思う。ここに居着くか、流れていくかはもう少し考えさせてくれ。」
「分かった。何かあれば相談してくれ。」
「ああ。」
「それとグーリ殿のことだが、他人を盗っ人呼ばわりしてミッション失敗の責任を押し付けることは認められない。名誉毀損とミッション失敗に関する虚偽報告とで罰金、村外追放といったところだが、先程グーリ殿と話した感じでは、我々の裁定を受け容れる気も支払う慰謝料の持ち合わせもなさそうなんだが、説得して連れてきては貰えないだろうか。」
「分かった。出来るかわからないが尽力しよう。」
「助かる。」
レイノは会議室をあとにした。
「さて。」
その場にいた人間達の気配が変わった。みんなの目が光る。
「君達にはもっと詳しく報告をしてもらわなければ。」
「本当の事を話せ!」
「残らず話せ!」
「嘘付くと為にはならんぞ!」
「「ひぃー!」」
グラトとホウルは縮み上がった。
「『アガラ・ゴロシャ』に発注した『黒い魔獣討伐』ミッションの詳細について聞かせてくれ。」
「黒い魔獣との遭遇についてはさっきお話ししたとおりです。」
「うむ。それは分かった。そしてお宝部屋にグラトと一緒に蹴り込まれた黒豹の仔というのがグラトの肩にいるそいつだな。」
「はい。」
黒豹の仔はまだ眠っている。
「お宝部屋でのことを話せ。」
「黒い魔獣の正体はグレートブラックウルフでした。」
「なに?グレートブラックウルフだぁ?」
「そんなはずはないだろう?彼奴等は基本群れで行動するし、単体ならCランクで駆逐可能なはずだ。『アガラ・ゴロシャ』が後れを取るとは思えん。」
「いや、待ってください。さっきの話ではお宝部屋の1メートル四方の穴につっかえたから蹴り込んだって言ってましたよね?」
「1メートル四方の穴につっかえるって…おい、どのくらいだ?」
「一発蹴って入ったんなら、頭はそこまで大きくなくて、ハイハイした身体が1メートル四方ギリってことね。」
「グレートブラックウルフがしゃがんで1メートル四方?彼奴等はその1/3でもつっかえずに入って来れますよ?」
「…はい、恐らく全長3~4メートルの、熊みたいなやつでした。」
「ほぼ熊だな…」
「…」
「よくそんなバケモノ倒せたな。」
「B、Cランクが一瞬でやられたのに、Eランク、いやお前の実力はDランクくらいはあるが、どうやって倒した?」
「お宝部屋に閉じ込められたのが良かったんだと思います。俺はシーフ。狭い場所での戦闘には慣れています。奴は走り回れず、気配も消せず、ただ引っ掻き、噛みつき、振り回すしか出来ませんでした。この黒豹の仔が注意を引いているすきに細かくダメージを与えて逆上させました。人喰い箱が眠り粉を撒き散らしたのも、奴に正常な判断が出来ないようにした一因だと思います。」
「しかし、奴の毛皮は剣や矢が通らなかったと聞いているぞ?」
「それはこれを使いました。」
グラトは袖から黒くて細い針金のような物を出した。
「鋼糸です。これは剣と同じくらいの切断力があります。これを、壁にぶつけられる度に取り付けて弛ませておいて、部屋中に張り巡らせました。奴が渾身の力で飛びかかって来たとき引き絞って網状にして、自らサイコロになってもらったんです。」
「剣と同じくらいの切れ味の網に、魔獣の全力の力で突っ込ませた訳か。」
「そうです。」
「うーん…グラトのやることって普通の人じゃ真似できないんだよねぇ…。」
「報告にあった“魔法を使う”については?」
「…使ってました。」
「何!?」
「本当か!?」
その場にいた全員が椅子から立ち上がった。
「この黒豹が素早く動くので、闇魔法で拘束しようとしていました。」
「そんな事があるのか…」
「魔法を使う魔獣か…」
「闇魔法とは…神よ…」
「あの…『ルーター』って、ご存じの方いらっしゃいます?」
「るうたあ?」
「聞いたことないな。」
「その『るうたあ』って何なんだ?」
俺の肩で寝ていた黒豹の仔が大きく伸びをした。エメラルドグリーンの瞳が会議室にいる全員を睨めつける。
「「「かわいいー!」」」
『ファリスの希望』の女性たちが萌えた。エルが俺の肩から黒豹の仔を抱き上げ、チリスと一緒にモフりだした。何故かそこにガダムが混ざっている。
(おい、何をする!?ああー、そんなところ触るにゃー!)
(やっぱり“にゃー”て言うんだ…)
(五月蠅い!助けろ!)
(良いじゃんか、そのままモフられてろ。)
(俺の猛々しい野生がぁ、人間に手懐けられていくぅ、にゃん。)
「!グラト、君のその瞳…」
俺の瞳は茶色の筈だ。俺は慌てて短剣を抜き刃に映る自分の瞳を見てみた。光の当たり方や角度によっては、俺の瞳も黒豹と同じようなエメラルドグリーンに光るようだ。
「うっわっ、人食い箱の眠り粉が目に入ったからかな?」
「そんな話聞いたことないぞ?」
「暗闇で目立ったら困るのに…」
ドサクサに紛れて『ルーター』の話はみんなの頭から消えたようだ。
何故かギルマスがソワソワしている。チラチラとエルに抱かれて骨抜きにされた黒豹を見ているようだ。
「さて、『黒い魔獣討伐』の件はこんなものかな?」
「だな。」
「ホウル、君にはこの後、ちょっと試験を受けてもらいたい。良いかな?」
「…はい。」
「では、解さn…」ダダッ!
解散と言い終わる前にエルの元にダッシュするギルマス。
(ぎゃー!やめろ!やめてくれ!あん、らめぇぇ!)
(ふっ。お前の牙は抜け落ちたな…)
(おい、グラト!助け…いやん。)
「ねぇ、グラト。この子の名前は何ていうの?」
「名前?」(お前、名前あるのか?)
(ないぞ。)
「私達が付けてあげるぅ」
「クローディア?エメフィール?」
「この子、男の子よ?ジェームスとかセバスティアンとかは?」
「いや、やっぱりガゾンとかオンケデとか強そうな名前が良いだろ?」
「ガダム、君はセンス無いなぁ。ノルクがいいでちゅよねぇ?」
((((ギルマス…))))
「失礼します!ギルマス、グーリが見つかりました!」
「何!どこだ?」
「北西の水源です。あいつ、水にアルネ草の毒を流そうとしてます!」
「それじゃあ、最初から話してもらおうか。」
「はい。初めに『アガラ・ゴロシャ』に合ったのは…」
二人で行こうとしていた『シューレム』ダンジョンの話をしていて『アガラ・ゴロシャ』のグーリに話しかけられ、案内に雇われたこと、『森ルート』で『シューレム』ダンジョンへ行ったことを話した。ホウルが主に話し、俺は補足をした。
『シューレム』ダンジョンに入ってからの行動を話すとその場の全員が呆れ返っていた。
「初めてのダンジョンで2日分の行程を1日で踏破するなどとてもBランクパーティーとは思えない無謀さだな。」
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「魔物からアイテムが採れないほどの攻撃を与えるって何考えてるんだ?アイテム売買しないでどうやって生計を立ててたんだ?」
「俺達は基本“護衛ミッション”か“殲滅ミッション”しか請けなかった。“採集ミッション”は女子供にとっておいてやったんだ。アイテムの回収は男がやることじゃない。」
「お宝部屋を見つけたのはグラトだったのに、横取りしようとしたの?」
「違う。みんなで山分けだ。いつもグーリがそうしてて、不満が出たことはない。」
「仲間が瀕死の重傷を負ったときって人間性出るよねぇ。」
「冒険者は常に生き残ることに重きを置く。必要なアイテムを使い切ってしまえば結局全滅することになるのだから、早めに切り捨てて一人でも多く生還するというのが『アガラ・ゴロシャ』のやり方だ。」
「グラトを黒い魔獣と一緒に閉じ込めて自分だけ逃げ出すなんて、人として考えられない。」
「誰かが囮になって犠牲が最小限に抑えられるならそれは有りだろう。グーリは『あいつ自ら囮になってくれた』とか言っていた気がするが…?」
「あいつがグラトとその黒豹の仔をお宝部屋に蹴り込んだところは見てないのか…。」
グラトの肩に乗った黒豹の仔はずっと眠っている。エルやチリスが突付いても一向に起きる気配はない。
「…『アガラ・ゴロシャ』って凄いな。生き残るってことに徹底してる。」
「俺達はそうやって生きてきたんだ。」
ラゼル村の人間には彼等の行き方は凄絶に、非人道的に感じられた。
「ラゼル村の冒険者ギルドの考え方とは随分違うんだね。」
「ああ。本当なら利き腕をもがれた俺はとっくにダンジョンの奥で屍になってるはずだった。」
「そのことだ。ホウル、君が治したのかね?」
「はい。」
「もげた腕をくっつける程の回復魔法だぞ?」
「無我夢中でしたので。」
「…それで通ると思ってるのか?」
「でも事実こうしてくっついてちゃんと動いてますし。」
誰もがホウルにそんな魔法が使えないであろうことは判っている。だが他に回復魔法が使える人間がその場にいなかった事も事実。みんなの視線がレイノに集まる。
「俺は痛みと喪失感で意識が朦朧としていたので何も思い出せない。」
「んー、ホウルが治したのかも知れない。でもそれは不可能なはず…今、この件はここまでにしよう。」
ギルマスはちらりとグラトを見たが何も言わなかった。
「それから?」
グラトを救出したこと、魔法使いを埋葬したこと、ダンジョンから出て、急いで戻るために“岩山ルート”を選んで来たことを話した。
「俺達が『アガラ・ゴロシャ』と関わったことは以上です。」
「なるほど。グーリ殿の話に比べて君たちの話に矛盾点はないな。レイノ殿には贔屓に見えるかもしれないが、私達は彼等が信用に足る人物であることをよく知っているんだ。」
「別にいい。この世界をあちこち回っていれば、いろんな考え方の違いにぶち当たるもんだ。慣れているさ。」
「レイノ殿はこの後どうされるのかな?」
「今は生きて戻れた奇蹟で頭が一杯だ。当面この村にお世話になろうと思う。ここに居着くか、流れていくかはもう少し考えさせてくれ。」
「分かった。何かあれば相談してくれ。」
「ああ。」
「それとグーリ殿のことだが、他人を盗っ人呼ばわりしてミッション失敗の責任を押し付けることは認められない。名誉毀損とミッション失敗に関する虚偽報告とで罰金、村外追放といったところだが、先程グーリ殿と話した感じでは、我々の裁定を受け容れる気も支払う慰謝料の持ち合わせもなさそうなんだが、説得して連れてきては貰えないだろうか。」
「分かった。出来るかわからないが尽力しよう。」
「助かる。」
レイノは会議室をあとにした。
「さて。」
その場にいた人間達の気配が変わった。みんなの目が光る。
「君達にはもっと詳しく報告をしてもらわなければ。」
「本当の事を話せ!」
「残らず話せ!」
「嘘付くと為にはならんぞ!」
「「ひぃー!」」
グラトとホウルは縮み上がった。
「『アガラ・ゴロシャ』に発注した『黒い魔獣討伐』ミッションの詳細について聞かせてくれ。」
「黒い魔獣との遭遇についてはさっきお話ししたとおりです。」
「うむ。それは分かった。そしてお宝部屋にグラトと一緒に蹴り込まれた黒豹の仔というのがグラトの肩にいるそいつだな。」
「はい。」
黒豹の仔はまだ眠っている。
「お宝部屋でのことを話せ。」
「黒い魔獣の正体はグレートブラックウルフでした。」
「なに?グレートブラックウルフだぁ?」
「そんなはずはないだろう?彼奴等は基本群れで行動するし、単体ならCランクで駆逐可能なはずだ。『アガラ・ゴロシャ』が後れを取るとは思えん。」
「いや、待ってください。さっきの話ではお宝部屋の1メートル四方の穴につっかえたから蹴り込んだって言ってましたよね?」
「1メートル四方の穴につっかえるって…おい、どのくらいだ?」
「一発蹴って入ったんなら、頭はそこまで大きくなくて、ハイハイした身体が1メートル四方ギリってことね。」
「グレートブラックウルフがしゃがんで1メートル四方?彼奴等はその1/3でもつっかえずに入って来れますよ?」
「…はい、恐らく全長3~4メートルの、熊みたいなやつでした。」
「ほぼ熊だな…」
「…」
「よくそんなバケモノ倒せたな。」
「B、Cランクが一瞬でやられたのに、Eランク、いやお前の実力はDランクくらいはあるが、どうやって倒した?」
「お宝部屋に閉じ込められたのが良かったんだと思います。俺はシーフ。狭い場所での戦闘には慣れています。奴は走り回れず、気配も消せず、ただ引っ掻き、噛みつき、振り回すしか出来ませんでした。この黒豹の仔が注意を引いているすきに細かくダメージを与えて逆上させました。人喰い箱が眠り粉を撒き散らしたのも、奴に正常な判断が出来ないようにした一因だと思います。」
「しかし、奴の毛皮は剣や矢が通らなかったと聞いているぞ?」
「それはこれを使いました。」
グラトは袖から黒くて細い針金のような物を出した。
「鋼糸です。これは剣と同じくらいの切断力があります。これを、壁にぶつけられる度に取り付けて弛ませておいて、部屋中に張り巡らせました。奴が渾身の力で飛びかかって来たとき引き絞って網状にして、自らサイコロになってもらったんです。」
「剣と同じくらいの切れ味の網に、魔獣の全力の力で突っ込ませた訳か。」
「そうです。」
「うーん…グラトのやることって普通の人じゃ真似できないんだよねぇ…。」
「報告にあった“魔法を使う”については?」
「…使ってました。」
「何!?」
「本当か!?」
その場にいた全員が椅子から立ち上がった。
「この黒豹が素早く動くので、闇魔法で拘束しようとしていました。」
「そんな事があるのか…」
「魔法を使う魔獣か…」
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「あの…『ルーター』って、ご存じの方いらっしゃいます?」
「るうたあ?」
「聞いたことないな。」
「その『るうたあ』って何なんだ?」
俺の肩で寝ていた黒豹の仔が大きく伸びをした。エメラルドグリーンの瞳が会議室にいる全員を睨めつける。
「「「かわいいー!」」」
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(おい、何をする!?ああー、そんなところ触るにゃー!)
(やっぱり“にゃー”て言うんだ…)
(五月蠅い!助けろ!)
(良いじゃんか、そのままモフられてろ。)
(俺の猛々しい野生がぁ、人間に手懐けられていくぅ、にゃん。)
「!グラト、君のその瞳…」
俺の瞳は茶色の筈だ。俺は慌てて短剣を抜き刃に映る自分の瞳を見てみた。光の当たり方や角度によっては、俺の瞳も黒豹と同じようなエメラルドグリーンに光るようだ。
「うっわっ、人食い箱の眠り粉が目に入ったからかな?」
「そんな話聞いたことないぞ?」
「暗闇で目立ったら困るのに…」
ドサクサに紛れて『ルーター』の話はみんなの頭から消えたようだ。
何故かギルマスがソワソワしている。チラチラとエルに抱かれて骨抜きにされた黒豹を見ているようだ。
「さて、『黒い魔獣討伐』の件はこんなものかな?」
「だな。」
「ホウル、君にはこの後、ちょっと試験を受けてもらいたい。良いかな?」
「…はい。」
「では、解さn…」ダダッ!
解散と言い終わる前にエルの元にダッシュするギルマス。
(ぎゃー!やめろ!やめてくれ!あん、らめぇぇ!)
(ふっ。お前の牙は抜け落ちたな…)
(おい、グラト!助け…いやん。)
「ねぇ、グラト。この子の名前は何ていうの?」
「名前?」(お前、名前あるのか?)
(ないぞ。)
「私達が付けてあげるぅ」
「クローディア?エメフィール?」
「この子、男の子よ?ジェームスとかセバスティアンとかは?」
「いや、やっぱりガゾンとかオンケデとか強そうな名前が良いだろ?」
「ガダム、君はセンス無いなぁ。ノルクがいいでちゅよねぇ?」
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