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イリステラ王国編
152話 主人公、恋を知るー7
しおりを挟む僕達が泊まっている宿泊施設のすぐ近くにある転移扉を開けると、街の風景とは全く違う光景が広がっていた。
周りを緑に囲まれた場所に、タージマハルのような豪華な建築物が建っている。
これが、イリステラ王国の王宮?
僕達はイリスの案内で王宮の中の一室にティアを運ぶ。
とても広い空間に、天蓋の付いたお姫様ベッドがポツンと置いてある。そこにティアを横たえると、やっとイリスがホッとしたような顔になる。
「タクミ、タム。ティアを運んでくれてありがとう。」
部屋の中央にあるテーブルに座るように促された僕達が座ると、イリスがお茶を出してくれる。
「イリス様。ティアは大丈夫なの?とても苦しそうな顔をしてる。それに、ティアって?」
僕はイリスに、次々と疑問を投げかける。
「タクミ、ちょっと落ち着きなさいよぉ。ティアは大丈夫。少し眠っているだけ。起きたらジャンのことは忘れて、いつものティアになるわぁ。」
「イリス様。ティアはどこか身体が悪いだか?」
スカラでの治療経験があるタムが心配そうに聞く。
「そうねぇ。貴方達には話しておいた方がいいかしらぁ。うちのティアとお友達になってくれたのでしょう?」
僕とタムは全力で頷く。
まだ、会って少ししか経ってないが、ティアは大事な友達だ。何か力になれることがあるなら、そうしたいと思う。
「ティアはね。この王宮の王代理なのよぉ。」
「王代理って、イリス様がいない時に王の代わりをする人だよね。」
「そうよぉ。でもティアってば、すぐに街に行っちゃうの。『恋してないと死んじゃう~』って。」
「ティアは運命の人を探しているって言ってたべ。」
「ティアはね。長い間ずっと、運命の人を探してるの。本当に長い間…。タクミにならティアの本質が分かると思うわぁ。ドラゴンの瞳でティアを見てみなさい。」
どういうことだろう?
良く分からないが、ドラゴンの瞳を発動する。金色に輝く瞳で、横たわるティアを凝視する。
ティアの本質…。
苦しそうな顔をしているティアは、泣いているように見える。
『こんなに好きなのに好きって言っちゃいけないの?苦しいよ。哀しいよ。でも好きなの。この気持ちを無かったことにはできないよ。ティアの好きは好きじゃないってどういうこと?ラシード!』
ティアの嘆きが伝わってきて、胸が痛くなる。
「どうしただ?タクミ、何を泣いているだ?」
ティアの嘆きの感情をダイレクトに受け取ってしまった僕は、涙が止まらない。それでもティアを見続けていると、ティアの姿に重なって何かが見える。
あっ、あれは。巨大な宝石?
「涙の形をした青色の宝石…。」
「ティアドロップと呼ばれる宝石よ。」
イリスが答えてくれる。そして、こう続ける。
「ティアはその宝石を核にして誕生した精霊種なの。」
!!!
精霊種!
この世界には3人しかいないという稀少な存在。
「精霊種。はじめて会っただ…。」
タムも驚いている。精霊種はそれだけ稀少な存在なのだろう。
「ティアは今年で528歳、このイリステラ王国が出来た頃から、王代理を務めてるわぁ。そして、ティアは500年間ずっと、運命の人を探しているのよ…。」
そんな…。500年間ずっと運命の人を探しているなんて…。
「ティアの本性は、ティアドロップっていう宝石なの。ティアドロップは昔から人々を魅了してきた。だから魔性の宝石って言われてたらしいわ。でもティアドロップを手にした者は次々に不幸になる。最後にティアドロップを手に入れたのは、このイリステラ王国の初代王、ラシード・イリスだった。」
「ラシード…。」
ティアの意識に触れた時に聞こえた名前。
「ティアドロップは常に人の様々な感情と共にあった。精霊種がどうやって誕生するのかは解明されていないわ。でも唯一分かっているのは、人の思いの強さが関係しているということ。」
「人の思いの強さ?」
「ラシードがティアドロップを手に入れる前まで、ティアドロップは信仰の対象として神殿に置かれていたの。ラシードが手に入れた後、ティアドロップは突如人型となり、動き出した。それがティアよ。」
「ティアが宝石だった…?信じられないべ…。」
「ティアには不思議な能力があるの。ティアが好きになった男性は皆、少しおかしくなる。貴方達が見たジャンのようにね。だから、ああなってしまった人には忘却の術をかけて、ティアの記憶を消すことにしてるの。」
「そうだったんだ…。でもティアは運命の人を探している。ってことは、次から次へと忘却の術をかけてるの?」
「そうよ。」
「ティアに恋するのをやめるように言うのはどうだべ?」
「それはダメよ。ティアの口癖は『恋してないと死んじゃう』よ。精霊種の生きる源は、精霊核。核が弱ればティアは消滅する。あの子の核は恋する気持ちで出来てるの。ティアは恋をしてないと本当に死んじゃうのよ。」
恋をしてないと死んでしまう?
そんなことって…。
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