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イリステラ王国編

162話 主人公、流浪の民を知るー1

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 宿泊施設に戻った僕は、タムの部屋に押しかけていた。どうしてもタムに聞いておきたい事があったからだ。

 僕はまずお礼を言うと、それをズバリと聞く。

「タム。今日はダンジョンに一緒に行ってくれてありがとう。で、ソラのことはどう思ってる?」

「なんだべ。いきなり。うん。ソラは綺麗だったな。でも、まだ良く知らないだでな。なんとも言えないだよ。」

「ソラがドラゴンだってことは大丈夫?」

「んだな。タクミもドラゴンだし、オラにもドラゴンの血が入ってるだ。そんなことは気にならないだよ。それに、タクミは良いヤツだ。なら、同じドラゴンのソラも良い子に決まってるべ。」

 そんな感じの認識でいいのか?

「でもオラはできたら、自分から好きになった女性とお付き合いしたいだよ。ソラのことはまだ知らないから…。」

 あんなに必死なソラは初めて見た。だからソラに協力したいと思ってたのだが、この様子だとタムには悪い印象はないようだ。
 後はタムがソラを好きになるといいんだけど。こればかりは頼んでどうにかなるわけじゃないし。上手くいくといいなって願うしかないよな。



「そうだ。オラも言いたいことがあっただよ。タクミがドラゴンだってことは秘密なんだべ?それに、イリステラ王のイリス様とも知り合いだった。そして、大いなる呪いについて調べているだな?」

「うん。ごめん。詳しく話せなくて。王宮に仕える人以外には話してはいけないって言われてるんだよ。」

「そうだっただか。でもオラはタクミに協力したいと思っただよ。良かったら、オラにも手伝わせてもらえないだか?オラはいつ病気が再発するか分からない。でもそれまではタクミを手伝えると思うだよ。」

「タム…。でもタムは、嫁を探して、ベアルダウン王国に戻って、ファーマーを続けるっていう大事な夢があるだろ?」

「んだ。でもこの国でいろいろ体験したことで、考えが変わっただよ。それに、オラは大いなる呪いが無くなるなら、何かしたいと昔から思ってただ。」

「タムは大いなる呪いについて興味があるの?」

「んだんだ。昔、学んだことがあっただよ。マルクトール王国の怪異研究者、テッドの著書も読んだし、セシリア王国のグール研究者、リオンとシオンの研究書も読んだべ。」

 タムからリオンとシオンの名前を聞くとは!

「でも僕には決められないよ。この世界での僕の保護者がいるから、その2人に相談しないと…。」

 困っていると、ミライが緊急連絡がはいったと告げる。
「タクミ、ちょうど2人から連絡だよ!タムが一緒にいてもいいって言ってるから、繋いでもいい?」

 リオンとシオンから?
 タムが一緒でもいいって?
 よくわからないけど、いいよと答える。すると、目の前の空間にリオンとシオンが現れる。立体映像だ。

『タクミ。イリステラ王国は楽しんでる?』
『この国は一人で来た方が楽しめるだろ?アースでは大人だったんだから、そういう事がしたいと思って。楽しめた?』

 久しぶりのあいさつがこれとは!
 双子は相変わらずだなぁ。

「僕はあまり、そういう事に興味が無くて…。」

『えっ!興味がないなんて!タクミってば、どこか悪いの?病気?』
 リオンが大げさに驚く。
「そういう話はいいから!急に連絡なんて、何かあった?」

『そうそう。流浪の民について、分かった事があるから連絡したんだよ。』

『それを詳しく説明する前に。一緒にいるのはタムだね?はじめまして、タム。シオンだ。こっちはリオン。僕達がタクミの保護者だよ。』
「はっ、はじめまして、オラがタムだ。グール研究者のリオンとシオンだべな!おっ、オラ。2人の著書は全部読んだだよ!いろいろ教えてほしいことがあるだ!」
『むかし、僕達のラートルに参加してくれた事があったね?』
「覚えてくれてただか?感激だべ~!」
『まだ成人前で病弱そうだったけど、今は元気になったんだね。ジルから聞いたよ。』
「んだ!オラはジルのおかげで病気が治っただよ。2人はジルとも知り合いだべか!」

『イリスからも連絡をもらったよ。この国の遺跡でソラに会ったって。やっぱり何も教えてくれなかったみたいだね。』

『それより、タムがソラの運命の相手なんだって?ということで、タムがいた方がソラの協力が得られると思うので、タムが希望するなら、同行を許可するよ。どうする?』

 同行?どこへ?

「ぜひ、お願いするだ!オラは大いなる呪いの謎が知りたいだ!連れて行ってほしいだ!」

 タムの言葉に、2人はニッコリと笑う。

『よし!じゃあ、タムを僕達の助手として申請しておくよ。そして、僕達の代わりにタクミを助けてやってほしい。タクミはこの世界のことを学んでる途中なんだ。この世界のことを知らないから。』

「ジルから聞いたべ。オラにできることなら、なんでもするべ。タクミは友達だからな!」

 タム!やっぱりタムはいいヤツだなぁ。

『じゃあ、詳しい話をするから、タクミとタムはそこに座って。』
『長い話になるからね。お茶でも飲みながら、聞いてほしい。』

 リオンとシオンの言う通り、僕とタムが座敷に座ると、碧とミライがお茶を出してくれた。

『じゃ、少し長い話になるけど聞いてね。』

 双子はそう言うと、流浪の民について話し出した。

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