異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味

文字の大きさ
93 / 247
グランエアド王国編

83話 主人公、王宮?に行く

しおりを挟む
 

 ジルの勧めで、グランエアド王国に行くことになった僕達は、エア様にあいさつしようと、王宮に来ていた。

 ここまでは、王宮にある転移扉を通ってきた。各王国への扉は各王宮の地下にあるのだ。地下から地上に出た僕は、王宮だという建物の前でフリーズする。

「ここが王宮?」

「タクミ、口開いてるよ。びっくりした?僕達も最初に見た時は、嘘だろって思ったよ。」
「だよね!だって、ただのビルにしか見えないからね!」
 シオンとリオンの言葉に、僕とミライは大きくうなずく。

 目の前にあるグランエアドの王宮は、地上50階の超高層マンションのような建物だった。

「40階より上が王宮で、それより下の階は、普通に人が住んでるんだよ。」

「えっ?王宮に一般の人が住めるの?」

「住みたいって人がいればね。全然問題ないよ。王宮部分には結界が張ってあるから、何か起こっても大丈夫だし。」

 そういう問題なのか?

「「じゃあ、エア様に会いに行こうか?」」
 そう言う双子に連れられて、最上階へと向かう。一階には各階への転移扉があり、そこから直接行けるという。

 王宮直通の扉を開けると、すごい景色が広がっていた。
 最上階は、全面ガラス張りの空間で、360度見渡せる。天気がいいからか、遠くの景色が綺麗に見えている。

「タクミ!すごい綺麗だよ!」
 ミライが喜んでいる。
 綺麗っていう感想が出るなんて!
 ミライは日々成長しているなぁ。

「気に入っていただけましたか?」
 扉の死角から生真面目そうな男が現れた。

 あっ!ジルがエアリーのチケットを頼んだ男の人だ!

「ひさしぶりだね。ジーク。元気だった?」と、リオンが話しかける。
「ご無沙汰しております。リオン、シオン。セシル様はお元気ですか?」
「相変わらずゴロゴロしてるよ。」
「さすが《怠惰》のセシル様。お変わりないようで、安心しました。で、こちらが噂のドラゴンですか?初めまして、こちらの王宮に仕えております。ジークです。」

 執事のような雰囲気の男性が丁寧にあいさつしてくれる。

「はっ、初めまして。タクミです。よろしくお願いします。こっちは、僕のパートナーのミライです。」と、挨拶を返す。

「ほぅ。これがジルの開発した人工精霊ですね。なんと自然な。さすがはジルですな。」
 ジークがミライを観察するような目でみている。

 そんなジークに、「あい!ミライだよ!よろしくね!」と軽く挨拶するミライ。

 初めて会う人なんだから、もうちょっと丁寧にしようよ!

「タクミ、ダメだった?」
 僕の心を読んで、心配そうに聞いてくる。
 そうだった!ミライは、僕の考えてることが分かってしまうんだった!
 僕はにっこり笑って、「大丈夫だよ。」と返す。

 ミライはまだ成長途中だとジルが言っていた。育て方に気を付けないとな。

「ところで、ジルから王宮に泊めてほしいと聞いていますが、それでよろしいですか?」

「あっ、うん。部屋空いてる?」と、シオンが軽い感じで聞いている。

「はい。タクミは紋章が授かれなかったと聞いております。結界が強固な王宮部分に滞在していただいた方が良いかと。」

「ありがと。じゃあ、部屋は後で案内してもらうとして。先にエア様に挨拶をしようか?ジーク、エア様はどこ?」

「はぁ、それが。」

「まさか?居ないの?今から行くって連絡したよね?」

「エア様の衣装担当のブランカから、今度の舞台衣装が出来上がったと連絡がありまして。つい先程、そちらに……。」

「なんで、ちょっと待てないかな?」
「これだから、エア様は。自分のこと優先なんだから!」
 リオンとシオンが呆れている。

「仕方ない。先に部屋に案内してもらおう。ジーク、どこが空いてるの?」

「はい。いまは45階が空いていますので、お好きな部屋をどうぞ。」

「わかった。じゃあ、先に部屋を作るか。エア様が戻ってきたら、連絡して。」

 ジークにそう言葉をかけて、45階に向かった。

「そういえば、45階ってハティ専用階じゃなかった?」と不思議がるシオンに、リオンが答える。
「ハティは先日亡くなったよ。最期まで作品を作り続けてた。幸せだったとパートナー精霊のミアから最後の連絡があったよ。」

「そうか。リオンのところには連絡があったんだ?」
「作品を引き取ってあげるから、遺したい物があったら連絡してって前に約束したの。」
「へぇ。そんな約束をいつの間にしたのさ?知らなかった!」
「女同士の秘密だよ。だから、この階は元の個室に戻っているはず。タクミはどこがいい?」

「えっ?人が亡くなった部屋なの?」
 僕の言葉に2人は、「だから?」って顔をする。

「この世界では普通のことだよ。最期まで仕事をしたい人は、安らぎの大樹には行かない。ハティは彫刻家だったからね。自分の作品に囲まれて最期を迎えたかったんだよ。」

「1人で亡くなったってこと?それって孤独死ってヤツじゃ?」

「パートナー精霊がいるからね。孤独じゃないよ。この世界の人は、亡くなるとパートナー精霊がすべてをゼロにしてくれるんだ。」

「ゼロ?」

「ハティの場合だと、このフロアぶち抜きでアトリエにしていたのを元に戻して、作品は生前の要望通りに分配。それ以外は紋章システムが全部回収する。それこそ、本人もね。そして、すべてをやり終えたパートナー精霊は、本人と共に消えるんだ。」

「本人も?ハティって人も紋章システムで回収されたってこと?」

「紋章システムで、安らぎの大樹に送るんだよ。この世界で亡くなった人は、そこで大地に還る。」

「えっ?紋章システムって人も転送できるの?それって、瞬間移動できるってことだよね?」

「理論上は可能だよ。でも、生きている人の使用は禁止されているんだ。セシルさまは言ってた。どんなものでも道具である限り、間違いが起こらないとは言い切れない。転送の過程で、何か不具合が発生したら怖いだろ?」

「そっ、それは困るな。」
 どうなるかを想像した僕は怖くなる。

「だから、生きてる人が移動する時は転移扉なんだよ。あれは空間を繋げる扉で、開けたらもう着いてるからね。不具合がある場合は、扉が開かないから安全なんだよ。」

「セシルさまは、そんなことまで考えて、この世界の便利な道具を開発したんだね!」
 僕は改めて、セシルさまのスゴさを理解したのだった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした

☆ほしい
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。 日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。 フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ! フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。 美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。 しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。 最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

処理中です...