異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味

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マルクトール王国編

119話 主人公、エレーナの秘密を知るー3

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「捕獲って…。エレーナも無茶を言うなぁ。」
「仕方ない。エレーナのお願いだしね。戦闘は苦手なんだけどなぁ。」

 そうボヤキながらも、リオンとシオンが素早く動く。

「薬物の影響ね。だから、レーザーで攻撃されても、逃げないんだ。」
「うん。痛覚が麻痺している可能性が高い。足止めして、捕縛術式で捕獲ってことでどう?」
「それ、いいね。そうしよう。」
「タクミはエレーナを守って。頼んだよ。」

 リオンとシオンが走り出す。

 走りながらリオンが懐からクナイを取り出し、カルミナベアに投げる。

 レーザーでも止まらないのに、そんな小さなクナイでどうしようっていうんだ?

 ところがカルミナベアの速度が落ち、止まる。目を凝らして見ると、クナイから透明なワイヤーが出ていて、カルミナベアを縫い止めていた。

 ワイヤーで足止めか。

 リオンが足止めしている間に、シオンが捕縛術式を展開。あっという間に、カルミナベアを結界の中に閉じ込めてしまった。

 戦闘は苦手って言ってたのに、手慣れている!リオンとシオンは、かなりの戦闘経験があるに違いない。さすが156歳!

 結界の中のカルミナベアは、激しく暴れている。やはり、行動が変だ。

「とりあえず抑制剤を投入するよ。」
「リオン、待つんだ。何の薬物かが分からないのに、抑制剤は危険だ。ショックで死んでしまったら、どうするの?」
「そうだった!まずは検査だね。」

 リオンが出した精霊球は、カルミナベアの周りをフワフワと漂う。

 一体が気を引いているうちに、残りの精霊球がカルミナベアをスキャン、そして血を採取する。

 戻ってきた精霊球からデータを受け取ると、リオンの顔が曇る。

「これは…。シオン、ちょっとこれ見て。」
「ん?何?何か気になる結果?」

「私にも見せて!」
 エレーナがデータを見る。

「オダリ草の成分が検出されてる。」
「どこにでも生えてる草だね。とても苦くて動物は食べないはずだ。それに興奮状態になるような効果は無かったと思ったけど。」
「そうだよ。だから、不思議なんだ。じゃあ、この薬物中毒のような状態の原因はなんだろう?」

「このカルミナベアの口の中に火傷のあとがあるわ。この辺りの山の中で数年前、温泉が噴出したの。このカルミナベアの血液からその温泉の成分が検出されてる。もしかしたら、それと関係があるのかも。」

「温泉とオダリ草?それを調べたら、何か分かるってこと?」

「うん。原因かどうかはまでは分からないけど、関係してると思うの。」
「エレーナの勘は当たるのです。」

「分かったよ。僕が取ってこようか?どこの山?ドラゴンに変現したら、すぐだからね。ミライ、ナビをお願い。」

 僕はドラゴンに変現すると、すぐに飛び立つ。

「タクミ。エレーナが言ってた山は、あっちだよ。」

 僕の頭の上にちょこんと乗っているミライがナビをしてくれる。

 カルミナベアが出現した方向だ。やはり何か関係があるのかも。

 ドラゴンで飛んで行くと山の中腹から煙が出ているのが見えた。

 温泉の蒸気かな?

 降りてみる。すごい熱気だ。
 かなりの熱さのようだ。

「タクミ、この容器に温泉を入れて。」

 ミライが水筒のような容器を紋章システムから出す。地面から染み出している温泉を汲もうと近づくと、その温泉の周りに不思議な草が生えているのが気になった。

 おかしいな。かなりの高温だと思うのに、草が生えてるなんて。

「ミライ、この草も持って帰りたいんだけど、何か入れるものある?」

「あい!同じ容器を出したから、こっちに入れて。ん?この草って。」

「うん、何だか気になるんだよ。」

「これ…。オダリ草じゃないかな?通常のものと形状が違うけど。」

 これが?
 通常と形状が違うオダリ草。
 通常とは違うカルミナベア。

 やはり、何かある。
 早く戻ろう。

 僕は採取した温泉とオダリ草を持って、エレーナのところに急いだのだった。



「「タクミ。早かったね。」」
 リオンとシオンが迎えてくれる。

 僕は採取した2つを見せる。

「こっちの温泉は成分を検査するね。」
 リオンが素早く対応してくれる。

「こっちのオダリ草は、見たことない形状だよ。通常のオダリ草より大きいし、蕾のようなものがある。」

「つぼみ?」
 エレーナはそう言うと、黙り込む。

「エレーナはいま激しく考えているのです。こうなったエレーナは、しばらく反応がないのです。」

 異常種の話を聞いた時も考え込んでいたな。ジッとしているけど、頭の中は激しく思考しているんだね。

「温泉成分の結果が出たよ。普通だよ。この辺りの温泉と同じ成分だ。オダリ草の成分も、通常のものと変わらないよ。」

「うーん。じゃあ、何が原因なんだ?」

 僕達が悩んでいると、エレーナが急に動き出す。

「これ!この蕾を検査してほしいの。ただし、精霊濃度を念入りに。」

「精霊濃度?」

「エレメンテには精霊がたくさん集まっている場所と少ない場所があるんだよ。」
 ミライが教えてくれる。
「あぁ、前に聞いたよ。だから、守護精霊と契約して濃度を一定に保っているって。」

「あい!紋章システムを正常に動かすためには、精霊が必要だから、少ない場所は、守護精霊の力で多くする。だけど、元々多い場所はそのままなんだ。そして精霊が多い場所は、精霊種が生まれる場所でもあるんだよ。」

 精霊種が生まれる場所?

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