上 下
11 / 90
監禁三日目

監禁三日目② 放尿

しおりを挟む
 それは、紅子の尿であった。

 開口具で閉じられない口へ容赦なく尿か注がれる。飲み込めないそれが口からゴボゴボと音を立てて溢れだし、鼻の穴へも侵入し、窒息しそうになる。生暖かく、強烈なアンモニア臭が身体を抜けて鼻へ染み込んでいく。苦しい、溺れたみたいだ。

 一分にも満たない時間だったが、それは優夜にとって数十分にも及ぶ苦しみに感じられた。開口具が外されると、むせかえるような咳をして喉の奥にある尿を吐き出そうとする。

 目から涙が止めどなく出てくる。鼻の中にはずっと臭いがこびりついてしまっている。
「苦しんでいる姿も可愛いですね。蒼子姉さんが喜ぶのも分かりますわ。また遊びましょうね」

 拘束が解かれぬまま、紅子は去っていった。やっぱりコイツらまともじゃない。苦しみながら、優夜は心の底からそう思っていた。


  ただでさえ二日風呂にも入ってない身体、そして顔は尿によって汚れている。このまま死ぬのだろうか。こんな姿のまま。
 そこに雨宮が入ってきた。拘束と足首の鎖のついた枷を外した。しかし、アイマスクのようなものを取り出して優夜に嵌めた。視界が暗闇になる。その間も頭がぼうっとしたままだった。雨宮は優夜を立ち上がらせ、背中を押して歩き出した。

 もしかして、扉の外へ?
 歩いた距離からも扉を抜けたはずだ。どこへ連れていくんだ。カーペットの弾力を感じながら廊下を歩いた。目隠しのため方向感覚がわからない。


 目隠しを外されると、そこは浴室だった。

「若林様、紅子様から入浴するようにと命が出ております。私はベッドのマットを交換するのでいなくなりますので、終わりましたら壁にあるそのボタンを。私に合図が届くので、迎えに参ります。そちらに着替えよ用意いたしました。
 ところで、くれぐれも変な気を起こしませぬよう」
 それだけ言うとドアを開けて出て行った。監視の目がなくなるのだろう。浴場も広くあんな拷問部屋がある屋敷だ、たとえ逃げようとしても、容易くに外に出られるとは思えない。

 しかし、これはチャンスではないか。

 紅子の尿の臭いがこびりついているので、顔を中心にシャワーで念入りに洗う。鞭によってできた傷にしみて痛むが、そこまで深い傷ではないようだ。浴室には明かり取り用の窓しかなく、とても届きそうにない。
 手早く身体を拭き、雨宮が置いていった服を見る。Tシャツとメンズのボクサーパンツ、スウェット地のハーフパンツがあり、どれも新品のようだ。服を着ると廊下に繋がるドアを音が出ないように開ける。


 浴室は角にあるようで、正面と右手に廊下が延びている。深紅のカーペットが敷かれ、いくつかのドアが見える。
 廊下は明かりが灯っているが、どこか重苦しい空気が漂っていた。どちらの廊下も曲がり角で終わっていて、外に繋がっているような気配はない。曲がり角には観葉植物が置かれているくらいで、監視カメラのようなものは見当たらない。屋敷の全貌はわからない、しかしここで動かなければ逃げるチャンスはそうないはずだ。

 意を決し右手側の廊下へ歩みだす。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【R18】高飛車王女様はガチムチ聖騎士に娶られたい!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:56pt お気に入り:251

度を越えたシスコン共は花嫁をチェンジする

恋愛 / 完結 24h.ポイント:248pt お気に入り:1,942

男の子だもん

BL / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:6

BL機械姦短編小説集

BL / 完結 24h.ポイント:213pt お気に入り:41

変人魔術師に一目惚れされて結婚しました

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:71pt お気に入り:1,581

夏の終わりに、きみを見失って

BL / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:2

処理中です...