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第12章 【こんばんは死神です】
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どれくらい車を走らせただろうか、途中食事休憩は取ったものの、それ以外はずーっと車を走らせていた。
高速道路や幹線道路にはNシステムという自動車のナンバープレートを読み取り手配車両と照合するシステムが設置されているので田舎道ばかりを選んで走った。
沈黙を打ち破るように、不意に助手席のみちるが話しだした。
「あの、小野寺さん。……言いにくい事なんですけど。その……、今日は7月28日火曜日 あなたが死ぬ日ですよ。分かってます?」
俺はしばらく黙っていたが、意を決して口を開いた。
「……俺さ、今回の美咲ちゃんの遺体の捜索で初めて人の役に立った実感が湧いたんだ。
今まではこの世界なんてクソだって、生きる価値のない世界だって……。
だから、そんな世界でヘラヘラ笑って生きている連中なんてただの金ヅルだって思ってた。
詐欺で金を騙し取られるのなんて、取られる方が悪いんだって。
母さんが死んだあの日から、俺は金でこの世界のてっぺんにのし上がるんだって……そう思ってた」
みちるは黙って俺の話を聞いている。
「だけど、そんな俺が初めて人の役に立って、そしてこの世界も捨てたもんじゃねえなって、……そう思ったんだ。
……死にたくねぇ! 俺は死にたくねぇんだ!!」
「ちょっと……、小野寺さん話が違うじゃないですか! それじゃあんまりですよ!
死神である私のメンツ丸つぶれじゃないですか!」
「うるせえな! 死神だか何だか知らねぇけどよ。あなたは今日死にます! ハイ分かりました! って、そんなの冗談じゃねぇぞ!
俺がジジイになってボケちまった時にでも出直して来いよ!」
みちるの方を見ると、彼女は目に涙をいっぱいに溜めていた。
「バカッ! 小野寺さんのバカッ! 停めてよ! 降ろして! 今すぐあたしを降ろして!」
少し言いすぎてしまったようだ。ここは一旦車を停めて、何とか死なずに済むようにみちるを説得するしかないか。
適当な空き地に車を停めると、みちるは車を飛び出して行った。俺は慌てて彼女を追いかける。
俺に背を向けて立っている彼女に声を掛ける。
「なあ、みちる! 待てって! ちょっと言い過ぎた。だけど俺は――」
パン!
俺の耳に爆竹のような乾いた破裂音が聞こえた。
パン!
もう一回。
俺は急に脱力をしてその場に仰向けに倒れこんだ。
何だ? 息が苦しい。身体が動かせない。
そんな俺の顔を覗き込む一人の少年が居た。
「やった! やったぞ! ついにやった! ざまぁ見ろ!」
少年は俺に向かってそう罵声を浴びせた。彼の右手には拳銃が握られている。
そうか、俺、コイツに撃たれたんだ。
……それにしても、誰だよコイツ。
少年は言葉にならない奇声を挙げながら遠ざかって行った。
程なくしてみちるが歩み寄ってきて俺の顔を覗き込んだ。今までに見た事がない感情の無い顔をしている。
「あの子は私が呼びました。誰だ? って、そう思ってますよね。
あ、喋らない方がいいですよ。もっとも2発とも肺を貫通していますから、話そうとしたって話せないでしょうけど」
「ゴボッ」
みちるの言う通り、言葉を発したつもりが代わりに血液が口から噴き出してきた。
みちるはどこからか取り出したファイルをペラペラめくりながら、まるで感情の無い声色で呟き出した。
「小野寺さんは覚えてないでしょうけど、3年前に融資保証金詐欺で町工場を潰してますよね。
町工場の社長さんはその後どうなったと思います?
――なんと可哀そうに一家心中しちゃったんですって。
……でも本当にかわいそうなのは一人生き残ったあの子なんですよ。小野寺さんのおかげで人生メチャクチャなんですから」
みちるはファイルとパタンと閉じて放り投げると、俺の顔を見つめた。
「あぁ、そうでした。あの子の持ってた拳銃はどこから出てきたのかって、不思議に思ってますよね?
あれはね、浅井総業で私と組長さんと後長さんの3人でお話をした時におねだりしたんです。
いい人達ですよね。「次に死ぬのはお前らだ!」って、ちょっと脅かしたらあんな素敵な拳銃をプレゼントしてくれたんですもの。
どうですか? いい冥途の土産になったでしょう?」
そう言って彼女は無邪気に微笑んだ。
そうだった……、みちるは死神なんだった。
何を今更……。自分で自分にツッコミを入れた。
自分の意思に反して瞼がだんだんと閉じていく。
……。
「TBC東北放送ラジオ 11時のニュースをお伝えします。
29日午前6時頃、伊具郡丸森町郊外の空き地で若い男性が胸から血を流して倒れているのを、犬の散歩をしていた近所の住民が発見し警察に通報しました。男性は現場で死亡が確認されました。
警察の調べによりますと、遺体で発見されたのは仙台市若林区六丁の目中町に住む、職業不詳 小野寺 勇樹さん26歳で、遺体は胸に複数発の銃弾で撃たれたような痕があり、警察では殺人事件として捜査を開始しました。
小野寺さんを巡っては、昨年春頃から東北一円で発生していた振り込め詐欺事件への関与が疑われており、警察が小野寺さんへ事情を聞こうとした矢先の出来事でした。
――続いて、仙台市からの話題です。
今年で開園55周年を迎える仙台市八木山動物公園で、伊達政宗になり切り、そのなり切り具合を競うユニークな大会が開催されました。
朝9時の開園から多くの市民が訪れ会場を賑わせました。
また大会にはゲストとして、地元仙台出身のお笑いタレントの――」
高速道路や幹線道路にはNシステムという自動車のナンバープレートを読み取り手配車両と照合するシステムが設置されているので田舎道ばかりを選んで走った。
沈黙を打ち破るように、不意に助手席のみちるが話しだした。
「あの、小野寺さん。……言いにくい事なんですけど。その……、今日は7月28日火曜日 あなたが死ぬ日ですよ。分かってます?」
俺はしばらく黙っていたが、意を決して口を開いた。
「……俺さ、今回の美咲ちゃんの遺体の捜索で初めて人の役に立った実感が湧いたんだ。
今まではこの世界なんてクソだって、生きる価値のない世界だって……。
だから、そんな世界でヘラヘラ笑って生きている連中なんてただの金ヅルだって思ってた。
詐欺で金を騙し取られるのなんて、取られる方が悪いんだって。
母さんが死んだあの日から、俺は金でこの世界のてっぺんにのし上がるんだって……そう思ってた」
みちるは黙って俺の話を聞いている。
「だけど、そんな俺が初めて人の役に立って、そしてこの世界も捨てたもんじゃねえなって、……そう思ったんだ。
……死にたくねぇ! 俺は死にたくねぇんだ!!」
「ちょっと……、小野寺さん話が違うじゃないですか! それじゃあんまりですよ!
死神である私のメンツ丸つぶれじゃないですか!」
「うるせえな! 死神だか何だか知らねぇけどよ。あなたは今日死にます! ハイ分かりました! って、そんなの冗談じゃねぇぞ!
俺がジジイになってボケちまった時にでも出直して来いよ!」
みちるの方を見ると、彼女は目に涙をいっぱいに溜めていた。
「バカッ! 小野寺さんのバカッ! 停めてよ! 降ろして! 今すぐあたしを降ろして!」
少し言いすぎてしまったようだ。ここは一旦車を停めて、何とか死なずに済むようにみちるを説得するしかないか。
適当な空き地に車を停めると、みちるは車を飛び出して行った。俺は慌てて彼女を追いかける。
俺に背を向けて立っている彼女に声を掛ける。
「なあ、みちる! 待てって! ちょっと言い過ぎた。だけど俺は――」
パン!
俺の耳に爆竹のような乾いた破裂音が聞こえた。
パン!
もう一回。
俺は急に脱力をしてその場に仰向けに倒れこんだ。
何だ? 息が苦しい。身体が動かせない。
そんな俺の顔を覗き込む一人の少年が居た。
「やった! やったぞ! ついにやった! ざまぁ見ろ!」
少年は俺に向かってそう罵声を浴びせた。彼の右手には拳銃が握られている。
そうか、俺、コイツに撃たれたんだ。
……それにしても、誰だよコイツ。
少年は言葉にならない奇声を挙げながら遠ざかって行った。
程なくしてみちるが歩み寄ってきて俺の顔を覗き込んだ。今までに見た事がない感情の無い顔をしている。
「あの子は私が呼びました。誰だ? って、そう思ってますよね。
あ、喋らない方がいいですよ。もっとも2発とも肺を貫通していますから、話そうとしたって話せないでしょうけど」
「ゴボッ」
みちるの言う通り、言葉を発したつもりが代わりに血液が口から噴き出してきた。
みちるはどこからか取り出したファイルをペラペラめくりながら、まるで感情の無い声色で呟き出した。
「小野寺さんは覚えてないでしょうけど、3年前に融資保証金詐欺で町工場を潰してますよね。
町工場の社長さんはその後どうなったと思います?
――なんと可哀そうに一家心中しちゃったんですって。
……でも本当にかわいそうなのは一人生き残ったあの子なんですよ。小野寺さんのおかげで人生メチャクチャなんですから」
みちるはファイルとパタンと閉じて放り投げると、俺の顔を見つめた。
「あぁ、そうでした。あの子の持ってた拳銃はどこから出てきたのかって、不思議に思ってますよね?
あれはね、浅井総業で私と組長さんと後長さんの3人でお話をした時におねだりしたんです。
いい人達ですよね。「次に死ぬのはお前らだ!」って、ちょっと脅かしたらあんな素敵な拳銃をプレゼントしてくれたんですもの。
どうですか? いい冥途の土産になったでしょう?」
そう言って彼女は無邪気に微笑んだ。
そうだった……、みちるは死神なんだった。
何を今更……。自分で自分にツッコミを入れた。
自分の意思に反して瞼がだんだんと閉じていく。
……。
「TBC東北放送ラジオ 11時のニュースをお伝えします。
29日午前6時頃、伊具郡丸森町郊外の空き地で若い男性が胸から血を流して倒れているのを、犬の散歩をしていた近所の住民が発見し警察に通報しました。男性は現場で死亡が確認されました。
警察の調べによりますと、遺体で発見されたのは仙台市若林区六丁の目中町に住む、職業不詳 小野寺 勇樹さん26歳で、遺体は胸に複数発の銃弾で撃たれたような痕があり、警察では殺人事件として捜査を開始しました。
小野寺さんを巡っては、昨年春頃から東北一円で発生していた振り込め詐欺事件への関与が疑われており、警察が小野寺さんへ事情を聞こうとした矢先の出来事でした。
――続いて、仙台市からの話題です。
今年で開園55周年を迎える仙台市八木山動物公園で、伊達政宗になり切り、そのなり切り具合を競うユニークな大会が開催されました。
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また大会にはゲストとして、地元仙台出身のお笑いタレントの――」
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