西園寺エヴァの憂鬱

西園寺エヴァの憂鬱 その４ 指紋認証

イーエフ氏は雨宮心美のタブレットの交際省の画面に自分のサインをして指紋認証も済ませた。
すると彼女は妙なことを言った。
「かかったわね」と言って彼女はイーエフ氏の腕ををつかんだ。
その口調は訛りのまったく無い口調に変わっている。
「かかったとはどう言うことだ？」
雨宮心美は手を上げてビーナの方に合図を送った。


ビーナがやって来て言った。
「お二人さん、婚約おめでとうございます」
「婚約？どう言うことだ、私は交際を認定してもらっただけだ」
ビーナが、雨宮心美の顔をメイク落としのタオルで脱ぐった。そして心美のかつらを外した。ビーナと同じブロンドの髪の毛になっている。
「紹介するわ、彼女は私のメイドアンドロイドのビーナです。私とそっくりでしょ」と心美はビーナを指差して言った。
「そして私が本物のえぶなの、だましてごめんなさい、こうしないとあなたに婚約してもらえないと思ったからなの、ここまでくるには苦労したわ、東北の海女さんのいる村に行って何ヵ月も海女さんの修行をしたのよ」
「ずいぶん手の込んだ演出でしたね、感動もんだ。しかし私がサインしたのは交際省の画面だ。婚約にはいたらない」
「甘いわね、あなたがサインしたのは婚約省の画面よ、よく見て・・・」

イーエフ氏がタブレットの画面を見るといつの間にか婚約省の、認定画面に変わっている。
「騙したな」
「たまには騙されるのも、いいんじゃない？」西園寺エヴァは涼しい顔で言った。

「しかし、このまま婚約が成立するわけはありません。こうした詐欺が流行っているので、婚約省では１ヶ月の調査期間をおいて調べますからね、調査で認められないと、正式の婚約にはなりません」
「そうなの・・・そんなことよく知っているわね」
「婚約省の婚約を最終承認するスタッフを調べて見ればわかります」とイーエフ氏は言った。
そう言われて本物のエヴァはタブレットに婚約省のスタッフを探し出した。
それを見て彼女は驚いた。認定スタッフの最高位置にイーエフ氏の名前がある。
「じぇじぇじぇ！あなたは婚約省の仕事をしていたの？」
「そうです。あなたが私の仕事や身辺調査していればわかったわけですね」
それを聞いて西園寺エヴァとビーナは肩を落とした。
「まあいいわ、またチャンスを探してみるわ」と２人は、声を揃えて去って行った。