福来博士の憂鬱

九条秋来

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福来博士の憂鬱　その８　タコリアン

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謎のゲストを迎える準備が出来たので、書斎のホワイトボードに「準備完了しました、いつでもこちらにいらしてください」とメッセージを書いた。
すると不思議な音が書斎の中に響いた。
それと共に頭の中にテレパシーが聞こえてきた。
「了解した。そちらにテレポーテーションするから、部屋の真ん中を開けておいてください」
福来博士とリルは部屋の端により、部屋の真ん中の空間を見つめた。
そして間もなくその空間に星村風光と名乗る男が現れた。
「初めまして、私が星村風光です。見ての通り普通の日本人の男です。そして私は火星人ではありません」
「初めましてまして、私が福来博士で隣の彼女はアンドロイドのリルです。よろしくお願いします」
星村風光と名乗る男は博士に向かって右手を差しだした。
博士は男と握手をかわした。

「さて、何からお話ししましょうか？」と星村風光は言った。
「何故あなたがタコの姿をしているのかを説明してくれますか？」
「当然の疑問ですね、まずそれからお話しします。前にもお話ししましたが私は零戦の特効隊員でした。私に与えられた使命は爆弾を積んだ零戦を操縦して、目指す敵艦に突撃する事でした。あの時別れてきた恋人の姿が目の前に浮かびました。そしてその恋人にさようならと言ってひたすら敵機の攻撃を交わし敵艦に向かって飛んで行きました、そこでエンジンが止まってしまう不足の事態になりました。気持ちは敵艦に向かっていましたが、自分の零戦は海に向かって落ちて行くだけです。そしてその時です、零戦は不思議な光りに包まれました。直後私は不思議なところにいました。そこは天国かと思いました。私はタコの姿をしたタコリアン達に囲まれていました」
そこまで言うと彼はため息をついた。
「話しは長くなりますが、よろしいでしょうか？」
「大丈夫です、落ちついてお話しください」

彼の話しは続いた・・・　

彼がいたのはいわゆるUFOの中で、UFO乗員の宇宙人達は戦争を観察していた。
たまたま彼の零戦が墜落しそうだったのを彼らに助けられた。そしてUFOの中で彼は様々な手術をされた。
しまいには体をバラバラに分解されたが、気がつくと体は完全に戻っていた。
そして彼等の科学や文明を教えられた。
彼等とも言語が通じるようになった。

そして、わかってきたのは彼等は人間ではなくタコリアンの姿をしたアンドロイドで彼等を作った本物の宇宙人達は長い旅の中で寿命を迎え死んでしまっていた。
どんな科学力を持っていても寿命は伸ばすことは出来ない。
アンドロイドの彼等はその後、目的もなく宇宙をさまよっていた。
たまに文明のある惑星を見つけると暇潰しに観察していた。
たまたま地球にたどり着き、暇潰しに観察していた。
そしてたまたま彼が零戦で墜落しそうなのを見て助けられた。

それからも彼の話しは続いた・・・

アンドロイドの彼等の中でリーダーのタコリアンはゼビウスという個別識別名で、星村風光に仲間になって宇宙を探検しようと言ってくれた。
生きる目標を失っていた彼はそれを承諾してタコリアンの仲間になった。
それまでは単なるゲストとして扱われていたわけだ。

UFOの推進エネルギーはブラックホール内に蓄積されたエネルギーで、その中を通過することでエネルギーを吸収していた。
そしてある時ブラックホールを通過することになったが、人間である彼の体はそれに耐えきれなかった。
このままでは死ぬしかない。
その時ゼビウスは彼に「私の体に意識を移せ、そうすれば私はは死んでもあなたは私の体を使って生きられる」
彼は言われた通りにした。
こうして彼はタコリアンの体で生き延びることになった。

ここで福来博士は質問した。
「そのゼビウスさんはどうなったのですか？」
「多分ゼビウスはそこで自分を宇宙に解放したのだと思う」
「解放とはどういう意味でしょう？」
「分かりやすく言えば宇宙の一部になったと言えばいいのでしょうか」
「なるほど、何となくわかりますね」
「もう１時間経過したので私は木星の衛星軌道の宇宙船に、帰ります」
「ちょっと待ってください。星村さんは元の人間の姿に戻りたくないですか？」
「そんなことが出来ますか、我々の宇宙科学では出来なかった」
「多分できるはずです。私はフリンジ科学の専門家です。しかしあなたが人間だった時の体のDNAが必要ですが、爪とか髪の毛とか皮膚とか何でもいいんです」
「それはあります、彼等が私の体を調べたり分解した時のサンプルがすべて保存されています」
「でしたら、次回にはそれをお持ちください、必ずあなたの体を復活させてみせます」
「了解しました。それではまたお会いしましょう」
そう言ったきりタコリアンの星野の体はテレポーテーションして消えた。

「博士大丈夫ですか、あんなこと言って」とリルが言った。
「大丈夫だ、まかせとけ必ず彼の体を復活させてやる」
「博士って天才ですね」
「あっしまった」
「何ですか！」
「猿の惑星を探せ・のメッセージの意味を聞くのを忘れていた」
「そう言えばそうですね、私も忘れていました」
「まあいい今度聞くとする」

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