やめて!お仕置きしないで!本命の身代わりなのに嫉妬するの?〜国から逃亡中の王子は変態悪魔に脅される!?〜

ゆきぶた

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一章 本命じゃないくせに嫉妬はやめて!

49、久しぶりの外

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デオ視点に戻ります。
少し遡りウルが去ってから5日後のデオのお話。

ー  ー  ー  ー  ー














ウルが帰国して数日が経っていた。
俺は少しずつショックから立ち直ろうと頑張っていたけど、気づいてしまった恋心はやはり隠す事は出来なさそうだった。

こんな状態でウルが戻って来たら、どう顔を合わせれば良いのだろうか?それ以前に、ウルは本当に帰ってくるのだろうか……。
イルを見たら、イルから離れたくないと思うかも知れない。

「はぁ、考えても仕方がない。ギルドにでも行くか……」

俺はまだギルドにお金を受け取りに行っていない。
正直一人でギルドに行くのを躊躇っていたからだ。
最後に行ったとき、あんな醜態をみせたから、どんな噂話になっているのか考えるだけで嫌だった。
でもそろそろ受け取りに行かないと、ギルド職員の人が困るかも知れないから……と、俺は理由をつけて宿屋を5日ぶりに出ることにしたのだった。


外を少し歩いて思ったのは、町を歩くだけなら特に問題はなさそうだと言う事だった。
これなら、あとで散策にでてもいいかもしれない。
そう思いながら俺はギルドの扉に手をかけたのだった。
入った先では、相変わらず視線が痛い。
俺が一人なのもあるだろうけど、また何かあるんじゃないかと疑われているのかもしれない。
そんななか、突然ですが1人の冒険者に声をかけられた。

「あの、想い人さん!」
「想い人さん?」
「あっ、すみません。ウルさんの想い人だから皆そう呼んでたもので、ついそのまま呼んじゃいまして……」

凄いあだ名がつけられたものだけど、その呼び方ならウルのものだと主張できていいのかもしれない。

「いや、その呼び名で特にかまいません」
「え?そうですか!なら想い人さんに聞きたいのですけど、今日ウルさんは?」

チラチラと俺の周りを見るところから、ウル狙いで話しかけて来た人なのだろうか?
でも今日はウルはいないからな。
そう思い俺が1人のときはこう言うようにと、ウルから事前に言われていた言葉をそのまま伝える。

「ウルは今緊急依頼に出掛けていて、数日は帰ってきませんけど?」
「あっ、そうなんですね……でも想い人さんは1人で不安ですよね?もし何かあったら俺達に声かけて下さい!」
「はい?」
「ウルさんの大切な想い人さんに何かあったら、ここにいる冒険者全員殺されるんじゃないかって、噂が立ってるんですよ!!だから皆で想い人さんを守ろうって話をしていたので、安心してギルドに来て下さいね!」
「はぁ……」

よくわからないうちに、ギルド内で謎の団結力が築きあげられていた。これも事前に対策をしてくれたウルのおかげなのだと思うと、俺は少し嬉しくなってしまって胸が苦しくなる。
これなら、明日からクエストに行っても問題ないかもしれない。

「あ、デオさん!やっと来てくれたんですね。待ってましたよ~」

そう元気に言ってくれるギルド職員さんを見て、これならウルがいなくても頑張れそうだと俺は少し前向きになったのだった。


そしてお金を受け取った俺はギルドを出ると、町を散策し始めた。
一応ここはホワイトダイヤ国の最端の町なので、商人の出入りが多くそれなりに栄えている。
だから俺は1日かけてゆっくりと、町を見て回った。

「あれ、君は……あのときの?」

そして不意に声をかけられて、つい振り向いてしまった。その人物を見て驚いた俺は咄嗟に後退りそうになる。
そこにはこの国に着いたばかりの日、ウルに連れられて入った謎のお店で、俺の尻を鷲掴みにした商人の格好をした背の高い男がいた。

「待ってくれ、あのときはすまなかった」

男は逃げられないように俺の腕を掴むと、そのまま頭を下げてきたために、胡桃色の髪が俺の目に飛び込んできた。

「まさか、連れがいるとは思わなくてな……」

そんなこと言われても信用できない俺は、腕を離して欲しいのに全く動かすことができない。
この男、こんな格好してるのに強いのか……?

「もし贖罪の機会が得られるなら、食事でもどうだい?」
「そんなこといきなり言われても、信用できない……」
「まあ、そうだよな。でも安心して、君にはもう手を出すつもりはないからさ。それに食事がダメならこの町の案内をしてあげようか?まだここに来てそんなに見てないんだろ?」

必死に申し訳なさそうに訴えてくるその朱色の瞳に、なんだか俺が悪い事をしているような気分になってしまい、つい頷いてしまった。

「わかった。町を見て回るぐらいなら……。それに詳しい人がいる方が助かる」
「本当かい!?それならとっておきの場所を教えてあげるよ。そうだ、俺の名前はガリア。見ての通り商人をしているんだ」
「俺の名前はデオルライドだ」
「デオルライドか、いい名前だね。デオルと呼んでもいいかな?」

そう言えば今まではそう呼ぶ人の方が多かったのに、最近はウルのせいでデオとしか呼ばれなくなっていたことを思い出す。
でもギルドガードにはデオで登録してあるし、その方が今は慣れてしまっていた。

「いや、デオと呼んでくれ。それよりガリアは一体なんの商売をしているんだ?」
「それはね、前にデオと出会ったお店あるだろ」
「ああ、俺には何のお店か全くわからなかったけど……」
「そうか、デオはそういうことに全く詳しくないのか……それなら仕方がない。実はあのお店を経営しているのは俺なんだ」
「えっ!!」

変な物ばかり売っているあの店の経営者……?
もっと高級品とか取り扱ってそうなのに、でもこの人も変だから間違ってないのかもしれない。

「また、時間があったらぜひ何か買いに来て欲しいな」
「考えておく……」
「そんな話よりも、今は俺のオススメスポットに案内しようか」
「あ、ああ。それより、腕を離してくれないか?」

最初に腕を掴まれてから、ずっとそのままだったのが気になっていた。

「案内するんだから逸れたら困るだろ?」
「え?いや、子供じゃないからそんなすぐに逸れたりしないと思うんだが……」
「でもね今から行く場所はこの時間帯、とても混むんだ。だからそのまま着いて来てくれ」

そう言って歩き出すガリアに引っ張られるように、俺はその後を着いて行く。
一体この男は何処に行くつもりなのか、まだ少し信用出来ない俺は警戒を解かないようにしようと気合を入れたのだった。
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