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一章 本命じゃないくせに嫉妬はやめて!
51、お食事
しおりを挟むウルが出ていってから6日目。
今日はギルドに行って簡単なクエストを軽くこなしてきた。
ギルドにいた冒険者達もクエストを終わらせた俺を、凄い温かい目で見てくるようになったのでなんだか居心地が悪い。
でも俺一人でもちゃんとクエストをこなせたのだ。
もしもウルが戻って来なくても、何とか生活はして行けそうで安心していたところだった。
「あれ、デオじゃないか。また会ったね」
「ガリア……」
昨日会ったばかりでまた会うなんて、凄い遭遇率だと思う。
だけど昨日あれだけ親切にしてもらった俺は、だいぶ警戒心を解いていた。
「あの、昨日はありがとう。とても助かった」
「それは、昨日何度も聞いた事だよ。デオのお役に立てたならよかった」
ガリアは普通に接するだけなら、本当に良い奴だ。
きっと出会ったときあんな事をしてきたのだって、場所が悪かったに違いない。
「そうだ、今日こそご飯に誘ってもいいかな?」
「え?」
今はクエスト帰りの夕方だ。
ご飯を食べるには丁度良い時間だった。
「昨日は断られてしまったからな」
「いや、でも……」
「安心してして、本当に何もしないから」
「……本当に絶対だな?」
「もちろん、今日は君に触れる事もしない。もし触ってしまったら、もう二度と君の前には現れないと誓ってもいい」
困り顔でそんな事言われたら、駄目なんて言えなくなってしまう。
どうもガリアの困り顔には、抗えない何かがある。
それは商売人としての交渉力なのかもしれないけど、俺にはそれを跳ね除ける力はなかった。
「……わかった。でも、これっきりにしてくれ」
「本当かい!嬉しいな」
喜ぶガリアにこれで良かったのかなと思いつつ、何故かこれがウルにバレたら怒られる気がしていた。
でもガリアはいいやつだし、何も無いはずだからきっと大丈夫だよな……。
そう思いながら連れてきてもらったのは、普通の居酒屋だった。
あまり飲まないようにと思っていたのに、気がつけばベロベロに酔ってしまった俺は、ついウルの事を愚痴っていたのだ。
「ウルは酷い男なんだ!俺の弟が好きなはずなのに俺を弄ぶようにいろんなことしてくるし!嫉妬もしてくるし……本当、意味がわからない!!」
「だけど、そんな彼の事が好きなんでしょ……?」
「うぅ……そうだけどなんか納得がいかない。それにガリアは男同士だから変だとか思わないのか?」
「俺は手に入れたいと思ったら、男でも女でも関係ないと思ってるからね」
なんで俺の周りには、その事をおかしいと思う
人が誰もいないのだろう。
この国って、もしかして同性愛は普通の事なのか?
「それで、その愛しの彼は今この町にいないのかな?」
「……今は弟の所に行ってる。あんなに俺に色んなことして離れられないようにしたのに、最終的にはやっぱ弟のが良いんだ!!」
俺は勢いよくお酒を飲むと、グラスを机にドンっと置いてしまった。
でもウルへの怒りは止まらないから仕方がない。
「デオ、少し飲み過ぎじゃないかな?」
「そんなと、なぃれす……!!あれ~、頭が回る……」
俺はそんなに酒が強く無い。
それなのに怒りの余り勢いよくお酒を飲み過ぎてしまったようだ。
「大丈夫かい、これじゃあ一人で帰れないだろ?」
「そんなこと……って、あれぇ?おかしいな~、まったく立てない……」
俺は立ち上がろうとしたのにフラついてしまい、また座り込んでしまう。
それを何度か繰り返して、俺はついに諦めてガリアを見た。
「困ったな。こんなところにデオを置いていくわけにはいかないし……」
「ガリア~、悪いけど宿まで連れてってくれぇ~」
「でも俺は君に触れられない。そういう約束だろ?」
「そんなの、どうでもいいらろ~」
酔っ払ってる俺は頭がフワフワしていて、もうこのまま寝てしまいそうな勢いだった。
だからガリアの触れる許可をよくわからないまま出していた。
「全く、仕方がないね。それじゃあ俺の肩に腕回せる?」
「ああ、できる……」
「だいぶフラついてるけど、このまま行くかい?それとも背負ってもいいかな?」
「ガリアが楽な方でいいれす」
「それなら、背負わせてもらうね」
そういって俺を背負ったガリアは、宿まで俺を送ってくれた。
ガリアの背中から伝わる心地よい揺れに俺の頭はフワフワしてしまい、無意識に宿の場所を教えていた事に気がついていなかった。
「よいしょっと、これでよし。それにしてもいい宿屋に泊まってるな……」
そう呟きながら俺をベッドに横たえたガリアは、親切にも水を渡してくれた。
「何から何まですまない……」
「いや、それぐらいなんて事ないさ。それよりも防具つけたままだと眠り辛いだろ?外してあげるよ」
「えっ?いや、防具は後から自分で……」
胸の防具を外されたら、あの常に立っている乳首を見られてしまう。それだけは避けたかった。
「駄目だ。そう言いながらすぐに寝てしまうだろうからな」
「いや、待て……!」
そんな俺の抵抗も虚しく、防具が外されていく。
そして最後に胸の防具を外したガリアは……。
「よし、これでゆっくり眠れるだろ?」
特に何もしてこなかった。
その事に、ガリアを疑った事を恥じてしまう。
ガリアはいいやつなんだから、俺のを見てからかったりしないはずだ。
そして最後にガリアは俺に布団をかけてくれた。
そのとき布団が俺の立っている乳首に当たってしまい、俺はピクリと反応してしまう。
「どうした?気持ち悪くて吐き気とかするか?」
「い、いや……大丈夫だ」
ガリアの反応から、わざとではないようだ。
「じゃあ眠れるようにおまじないをかけてやろう」
「おまじない?」
「ああ、きっといい夢が見れるさ」
そう言うと、ガリアは俺のおでこに手を置いた。
その手が一瞬熱くなった気がした。
そう思ったときには、俺は急激な眠りに意識を手放したのだった。
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