やめて!お仕置きしないで!本命の身代わりなのに嫉妬するの?〜国から逃亡中の王子は変態悪魔に脅される!?〜

ゆきぶた

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一章 本命じゃないくせに嫉妬はやめて!

66、本当の気持ち

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ウルがイルと誓約した事がショックで、俺は言葉を返す事ができなかった。
それもどんどん悪い方に考えてしまうのだ。
だってイルが誓約を受け入れたと言う事は、イルもウルの事が好きかもしれない訳で……もしそうだとしたら俺はただのお邪魔虫だし、俺が付け入る隙なんて無くなってしまう。

「デオ顔が真っ青だよ、大丈夫?俺とイルが誓約した事がそんなにショックだったんだね、ごめん」
「…………」

不安で話せない俺の頭を、気がつけばウルは優しく撫でていた。

「でも確かに俺はイルと誓約したけどさ、イルはやっぱり俺の事なんて全く好きじゃなかったみたいなんだよね。それがわかったのに、俺はあまりショックじゃなかったんだ」
「……え?」
「しかもよく考えたらさ、デオを手に入れるためにイルと誓約しに行っただけで、俺はイルよりもデオの事が好きだったみたいなんだよね」
「……は?」

なんかサラッとウルが俺の事を好きだとか、俺を手に入れるためとか言ったように聞こえたけど気のせいだろうか?

「それにイルの所に行こうと思ったのだって、俺の気持ちを確認するためだったんだよ。……それで実際会ってみたら、イルが他の奴といても俺は全く嫉妬しなかった。デオの事になるとあんなにも嫉妬してたのにさ、不思議だよね?」
「へっ?」
「でもそのおかげで、俺はデオが好きだって気づけたんだけどね。まぁ、俺が今までデオにしてきた事を考えたら、信じてもらえないかもしれないけど。だけどさ、俺は本気でデオの事が好きなんだ……」
「……は?え??」

さっきから頭が混乱している俺は、どうも理解が追いつかない。
いや落ち着け俺、ウルは何と言った?
イルよりも俺のことが好きだって……。

は?俺の方が好きだって!!?

「今まであんなにイルが好きだって言ってたのに、いきなりデオの方が好きだなんて言われたら……驚くのは仕方がないよね。でもこんな最低な俺だけどさ、デオと離れたくないんだ。だからそばにいる事をどうか許して欲しい。あれなら体だけの関係でも俺はいいからね……?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!?頭が混乱して、全く理解できないんだが……ウルは俺の事が好きだって事でいいんだよな?」
「さっききからそう言ってるんだけど……?」

本当にウルが俺の事を好き!?
そんな都合のいい話があるわけ……いや、その前にウルはイルと誓約したはずだし、進化した人間じゃないとダメじゃなかったのか?

「ごめん。悪いが俺はどうにもウルの話が信じられない。だから二つほど確認させてくれ」
「まぁ、そうだよね……。でもそれでデオが信じてくれるなら、いくらでも俺に疑問をぶつけてよ?」

ウルは抱きしめるのをやめると、俺の肩に手を置いてしっかりと目を合わせてきたのだ。
嘘はつくつもりはないと言いたいのかもしれない。
それならと、俺はウルに問いかける。

「ウルは、イルとの誓約はそのままなんだよな?」
「誓約はそのままだね。別に誓約をしていても損はないからさ。それに今はイルに怪しまれたくない。デオが好きだってバレたら怒られるのは目にみえてるからね」
「イルはそんな事で怒らないと思うけど……」
「そう思ってるのはデオだけだよ。それに誓約しておけば何処にいてもイルと通信できるから、何かあればイルと話せて便利だと思わない?」
「そ、それは確かに……」

って、何釣られてるんだ俺は!
でも可愛いイルに心配をかけるわけにはいかないし、だから本当は嫌だけど暫くは誓約をしておいて貰った方が良さそうだ……。

「わ、わかった誓約については暫く気にしない事にする。それに俺だって誓約されてるしな……」
「デオ、そこで落ち込まないでよ。例えデオが他の男に誓約されてても俺はずっとデオが好きだよ」
「……う、ごめん。もう落ちこまないから、これ以上恥ずかしい事言わないでくれ……。それに誓約についてはわかったけど、進化についてはどうなんだ?前にウルは進化した人としか誓約しないって言ってたよな……それなのに、俺でいいのか?」

その問いの答えを、ウルはすぐに返してくれなかった。
そして何かを考えながら、ウルは俺の頭を再び撫で始めたのだ。

「ウル……?」
「確か前にも言った気がするけど、凄く昔に俺は生まれた町を追い出された事があってさ。その日から俺は一人になるのが嫌で、一生そばに居てくれる相手を探し求めてきたんだ。だからそれには、進化した相手の方が都合がよかっただけなんだよね」

ウルは一人が嫌で、一生一緒に居てくれるパートナーが欲しかっただけなのか……。
それよりもウルの過去に一体何があったのか凄く気になるけど、今の俺がそれを聞く事は出来ない。

「俺はパートナーを何十年も探し続けたのにそんな相手は簡単に見つからなくて、ようやく出会えたと思った人は皆すでに相手がいた。でも当時の俺は相手がいるからってすぐに諦めていたんだよね。だからこれからもそうだろうと思ってきたのにさ……俺、デオだけは諦めたくなかったんだ。もしデオに好きな相手ができたって、進化出来なくたってデオが死ぬまで一緒にいてあげたいって思ったんだよ」

ウルがそんな気持ちを俺に持っていたなんて全く思っていなかった。

「それなら、本当に俺が進化できなくてもウルは俺をずっと好きでいてくれるのか……?」
「もちろん、デオは特別だから。だけど本当は進化してくれたらもっと嬉しいんだけどね」
「それは……」

それだけは、俺にだってどうにも出来ない。
だけど本当は俺だって出来るのなら進化して、ずっとウルと一緒にいたい。
こんなウルを一人残して死ぬなんて嫌だから……。

「ねぇ、デオ。俺の気持ちは全部話したつもりだよ。これで俺がデオの事を好きだって事、わかってくれたでしょ?」
「……ああ、疑って悪かった。恥ずかしくて仕方がないんだけど、まさか本当に好かれてるとは思ってなくて……」
「それは殆ど俺のせいだから謝らないで。そのかわりにデオの本心、そろそろ俺に教えてくれてもいいよね?」
「……ああ、ちゃんと話すよ」

確かに俺は、まだウルに気持ちを伝えていなかった。
でもウルだって不安な気持のまま、俺を本気で好きだと言ってくれたのだ。
だから俺も、ウルに気持ちをちゃんと返さないと。
そう思い、今度は俺からウルを抱きしめるために背中に手を回していた。

「俺は、ウルが好きだ!確かにウルは最低な男だってわかってる。それでも俺はウルのそんなところだって、本当は優しいところも、たまに俺に対して必死なところも……全部好きなんだ。なにより俺はウル無しじゃもう生きてけない体なんだからな。だからウルとエッチな事出来ないなんて俺には考えられないから、ちゃんと責任とってくれよ……?」

恥ずかしくて視線を逸らしたいのに、嬉しそうなウルの顔から目を離す事ができなかった。
だって、俺も嬉しかったから……。

「で、デオ……!俺もデオが好き、大好きだよ!!もちろんこんな俺だけど、デオを責任もって一生愛してあげるからね?」

そう言うウルは、俺を強く抱きしめ返す。

「……一生って、ウルからしたら俺はすぐに老けるぞ?」
「それでも、愛せる自信があるから大丈夫。それに俺はデオの進化を最後まで諦めないから」

ギュッと抱き合う俺達は、気がつけば互いの心音だけがドクドクと聞こえていた。
俺だけがこんなにバクバクしてるわけじゃない事が嬉しくて、なによりも互いに同じ気持ちなのが嬉しくて、その音をずっと感じていたかった。
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