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粛清(ユリア視点)
しおりを挟むユリア視点にて、殿下とエイミーの婚約発表会の裏でユリアとスペリアが何をしていたかの話をお送りします。
ー ー ー ー ー ー
私はエイミーちゃんの大親友であるユリアよ~。
今、私は今世紀最大に怒っているわ。
だってー、私の大切な親友であるエイミーちゃんを虐める酷い人達がいるんだもの。
最初はエイミーちゃんが気にしてないから、陰口ぐらいなら目を瞑ってあげる事にしたのよ?
でもね、エイミーちゃんが水をかけられた姿を見て、流石に我慢できなくなっちゃったわ~。だからあの子達はどうも許せそうにないのよね……。
ふふふ、地の果てまで追いかけてでも絶対に仕返ししてあげるわ~。
でも今はそれを実行する前に、体が濡れたままのエイミーちゃんの事を誰かに伝えないといけなくて、私は急いでいる所なのだけど……。
この困っているタイミングで偶然スペリア様を見つけたのよ~。私ったらラッキーだわ!
「あら、スペリア様!丁度良いところに~!!」
「ユリア嬢、そんな急いでどうされましたか?」
「実は───」
先程おきた事を伝えると、スペリア様はすぐに殿下へと通信魔法で連絡をとってくださったわ。
「殿下はすぐに向かってくれるそうです」
「それはよかったですわ~。ところで、スペリア様は私に何か言いたい事でもありますの~?」
スペリア様が何か言いたげに私をチラチラ見ていたのが気になって、つい聞いてしまったわ~。
だって、凄く面白そうな匂いがするんですもの!
「……実はですね、これから殿下は学園中にエイミー様が自分の婚約者である事を知らしめるようなのです」
「あら、まあ……!なんてナイスなタイミングですの~」
「ナイスかどうかはわかりませんが……こんな事を突然決める殿下は本当に困ったお方ですよ」
おでこを抑えてため息をつくなんて、スペリア様はとても困ってるみたいですが……私にとってはとてもラッキーな事だわ~!
「ああ、それから先程お話し頂いたお二人方の事ですが、噂に騙されたとはいえこのタイミングで馬鹿な事をしてくれたものですよ。王太子の婚約者に危害を与えたらどうなるかなんて、すぐにわかると思うのですが……」
「本当にその通りですわ~。しかし多くの方がエイミーちゃんを馬鹿にしているのも事実ですから~。殿下がご自身で発表されたとしても、これで本当にいじめが無くなるのか私は心配ですわ~」
「うーん、確かに可能性としては充分ありますね。では、こういうのはどうでしょう?彼女達を見せしめとして王族侮辱罪で捕まえてみる、とか……」
流石スペリア様、アホ王子と違って有能よね~!
あら、危ない。つい本音が口から出るところだったわ。これでは私が王族侮辱罪で捕まってしまうわね~、おほほほ!
それにスペリア様の言う通り、王太子の婚約者となれば既に王族とほぼ変わりないもの。王族侮辱罪を行使する事は可能な筈だわ~。
「まあ、とても素晴らしい発案ですわ。もちろん私もスペリア様をお手伝いさせていただきますね~」
「それでは殿下達の準備が終わるまでに彼女達を帰すわけにはいきません。ユリア嬢、急ぎましょう」
「ええ」
と、言ってもその後私は特に何もする事なく、スペリア様お一人の力で二人の女性の場所をすぐに見つけ出してくれたのよ。
そして私達が探していた彼女達は今、食堂でお喋りを楽しんでいる最中だったわ。
「あんな地味な子が殿下の婚約者なんて、ありえないわ」
「本当その通りですわ」
「フィーリア様が婚約者ではなくなった今、エレンダー侯爵家の令嬢である私の方がまだましではなくて?」
「間違いなく私もそう思いますわ~」
エレンンダー侯爵家なんて最近没落気味でよくない噂も多いのよねぇ。だから最近では名前を出す事すら恥ずかしい家名だというのに、あの方はよくあんな態度がとれるものだわ~。
きっと彼女は家の事情なんて全く知らず、侯爵家の令嬢だからと好き勝手生きてきた頭お花畑な人なのね。
それにしても、相変わらずエイミーちゃんの悪口を言っているなんて、本当頭にきちゃうわ~!
せっかくだから文句でも言ってやろうと思った私よりも早く、いつのまにかスペリア様が彼女達に声をかけていたのよ。
「レディ、失礼ですが今の話は本当でしょうか?」
この学園で王子の従者であるスペリア様を知らない人はいないわ~。
だから令嬢達は一瞬焦ったようだけど、それでも自分達の話は正しいと信じ込んでいるのか、その話を馬鹿みたいに肯定したのよ。
「スペリア様、今の話は本当でしてよ。あの女は殿下をたぶらかし、フィーリア様から殿下を奪いとった悪女なのですわ!」
「……ふむ、悪女ですか……」
エイミーちゃんを悪女だなんて、あり得ないわ!
寧ろあのアホ王子が全ての元凶ですのに~!
どうしてエイミーちゃんが、そんな事言われなくてはいけないのよ~!?
「そうですわ。殿下はあの悪女に騙されているのですわ!」
「田舎くさいうえに全く冴えない顔で可愛くないし、なんの才能もないのよ。きっと殿下はあの女に騙されているに決まっているわ!」
「しかもあの悪女、殿下だけではなく他の殿方も弄んでいると聞きましたわ」
「まあ……なんと破廉恥な女なの。そんな方が殿下の婚約者であり、そのうち皇后になるなんて信じられないわ!」
二人が騒いでくれたおかげで、食堂にいる生徒全員が彼女達に注目してくれたわ。
スペリア様はその様子を見て満足したのか、彼女達の会話に割って入ったのよ。
「君達はエイミー様を一体どうしたいと思っているのですか?」
「私達は殿下を正気に戻して、あの悪女を学園から追放したいのよ!」
「そうですわ、このままだとあの悪女のせいで学園の風紀まで乱れてしまいますわ!」
「スペリア様も、もちろん同じ意見ですよね?」
「………………」
スペリア様はニコニコしているだけで、その問いには答えなかったわ。
しかも彼女達はその意味を全く理解できない程頭が悪いのか、スペリア様の笑顔が肯定に見えたようね。
「やはり、スペリア様も同じ気持ちでいらっしゃいますよね!」
「流石殿下の従者ですわ!」
「……し、失礼。ふっ、くっくくく」
「す、スペリア様?」
先程まで頑張って耐えてきたスペリア様も、二人の馬鹿さ加減についに限界がきたみたいね~。
そのせいで笑いが止まらないのかお腹を抱えていらっしゃるわ。
「あはははは!す、すみません。余りにも貴女達の頭が弱い事が面白くてですね……」
「頭が、弱いですって?」
「ええ、そうです」
笑顔を消したスペリア様に合わせたかのように、突然食堂の真ん中へ魔力通信による巨大な画面が現れたのよ。
「レディ達は今から始まる話を聞いても、全く同じ事を言えるのでしょうか?」
「……はい?」
「スペリア様、何を仰って……」
その画面に映し出されたのは、殿下とエイミーちゃんの姿だったわ。
そして誰もが、エイミーちゃんの姿に驚きの声をあげていたのよ。
「殿下の横にいる美しい令嬢は誰だ?」
「この学園で、あんな綺麗な方は見たことないですわ」
「やはり殿下の寵愛を受けている方は別にいらしたという事かしら?」
流石エイミーちゃんね。
誰も今の美しい令嬢が、エイミーちゃんだと気づいてないわ~!!!
『僕はクレス・グレフィアス。この国の第一王子なのは殆どの人が知ってると思う。今日、全校生徒へ向けて挨拶をしたのには理由がある。それは僕の横にいる女性、エイミー・ミューシアスを皆に紹介したいと思い、このような場を設けさせてもらったんだ』
その一言で、騒いでいた生徒達は皆固まってしまったわ。だって殿下の横にいる人がエイミーちゃんだとは、誰も思っていなかったみたいなのだもの。
こんなの、面白すぎて口が緩むのが抑えられないわぁ~!
でも気づかなくても仕方がない事なのよ、だって今のエイミーちゃんは本当に綺麗なんだもの。
それにエイミーちゃんは今までオシャレなんてした事がなくて、アクセサリーさえも似合わないからとあまり付ける子ではなかったわ……でもね、私だけは最初からエイミーちゃんが磨けば光る子だとわかっていたのよ?
「そ、そんな嘘よ……」
「あれがエイミーだなんて……あり得ませんわ」
先程までエイミーちゃんの事を地味だ地味だと言っていた二人も、どうやらその美しさから目が離せなくなってしまったようね。
おほほほほ……!今まで自分達より下だと思っていた筈のエイミーちゃんが、格上だったと知ってどんな気持ちかしら~。
凄く感想を聞きたいところだけど、今は我慢してあげるわ。
それにしても殿下の話は酷いわね~。だってある事ない事言いたい放題だもの……でも今は、必要な事さえ喋ってくれればそれでいいのよ~。
そう思って待っていると、殿下は私達が待っていた言葉をようやく言って下ったの。
『……エイミーを虐めたり貶したりする人がいるのなら、それがどれ程の罪になるのか皆には理解して欲しい』
ふふ、待っていたわ。その一言さえ言ってくれれば後の与太話はどうでもいいのよね~。
ふとスペリア様を見るとその言葉をずっと待っていたのでしょうね、気がつけば先程の二人組を魔法で既に拘束していたわ。
「きゃっ!?す、スペリア様!?」
「これは一体どう言う事ですの??」
「どうもこうもありませんよ。今殿下が仰ったではありませんか、エイミー様を虐めたり貶したりする事は罪になると……」
「ま、待ってください。私達は別にエイミー様を虐めたり貶してなどいません!」
あらあら、今更エイミー様と言うなんて恥ずかしい人達よね~。
しかも二人の顔は真っ青でとてもいいお顔だこと……でもね、エイミーちゃんを虐めた事を私は絶対に許さないわよ~?
「それなら、先程の言葉は?」
「そ、それは……ただの噂話に過ぎませんわ」
「そうですわ。別に本気でエイミー様を学園から追い出したいと言ったわけでは……」
「そう言われましても、周りにいらっしゃる方々も聞いていましたよね?この方々が本気でエイミー様を学園から追い出そうと私に提案した事を……」
周りの人達はもう殿下の話よりも、スペリア様と彼女達の方が気になるようだったわ。まあ、こちらの方が面白そうだものこれは仕方がない事よね。
しかも彼らは有難いことに、彼女達がエイミー様を貶していた事にその通りだと頷いてくれたのよ。
おほほ、そろそろ良い頃合いだし最後は私の一言で彼女達を終わらせてあげるとしましょうか……。
「あの、スペリア様……」
「君は、ユリア嬢だったかな。何か言いたい事があるようだけど、彼女達の話と関係あるのかな?」
二人は私が近くにいた事にようやく気がついたのか、更に顔を青くして目を逸らしたのよ。
私は笑いそうになるのを堪えながら泣きそうな演技をして、ここにいる方々に彼女達の罪を教えてあげる事にしたの。
「実は私、彼女達がエイミーちゃんに水をかけている所を見てしまったのですけど……」
「なに!?」
「これは、紛れもなく虐めになるのではありませんか?」
食堂にいる方々がその言葉にざわめいたのがわかったわ。
しかもスペリア様ったらしっかり驚いてくださるなんて、中々の演技力ですこと~。おほほほ!!
「な、何を言ってますの!?」
「そうよ、私達がそんな事をするわけがないわ!」
「……それならお二人は、私の言う事が嘘だと仰るのですか~?」
「ええ、だって貴女はエイミー様のお友達ですわよね!」
「そんな貴女が言ったところで誰が信じると……」
「酷いですわ!私はエイミー様が水をかけられ涙をこぼす姿まで見ていますのに……スペリア様、私と彼女達どちらを信用されますの!?」
おほほ、本当はエイミーちゃんは泣いてなんかいないわよ~?
でも話は少し盛るぐらいが丁度いいと思うの。それに私がここで瞳を潤ませて友達思いの女を演出すれば、オーディエンスは簡単に私の味方をしてくれる筈だわ~。
まあ、本当はそんな事しなくてもスペリア様は私と手を組んでるので意味ありませんけど、場を制す雰囲気は大切ですわよね~?
私のアイコンタクトを受けとったスペリア様は悩んだフリを終えると、二人に向けて言ったわ。
「うーん、そうですね。私はユリア嬢の発言を信じます」
「「なっ!?」」
「単刀直入にいいますが、貴女達の発言はコロコロ変わるようなので全く信用できません。それにここにいる全員が、エイミー様の悪口を言うお二人を見ていたわけですから証拠も充分ですよね?」
「そ、そんな……」
「違いますわ、私達は……そんなつもりでは……」
「しかし残念ながらお二人には王族侮辱罪の容疑がかかっています。申し訳ありませんがその身柄を確保させて頂きます」
そう言うと、スペリア様は指を鳴らしたわ。
その瞬間、王太子殿下護衛隊の騎士達が食堂へ雪崩込んだと思ったら、あっという間に彼女達は騎士に捕らえられていたのよ。
「そ、そんな……」
「私達は悪いことなんてしていないわ!」
「弁明があるのなら後でいくらでも聞いてやろう。さっさと歩け!」
「わ、私を誰だと思っているの!私はエレンダー侯爵家の娘なのよ!その汚い手を離しなさい!!」
「お前が誰とか、そんなのは関係ない。早く連れていけ」
「はっ!!」
エレンダー侯爵令嬢は最後まで叫んでいたけど、もう一人は気絶してしまったようね。
きっと二人はこれから大変だと思うけど、エイミーちゃんをいじめた罰はしっかり受けてもらわないといけないものね~、おほほほ。
スッキリして気分はとてもいいのだけど、二人のせいでエイミーちゃんの有難い言葉は聞けなかったのだけが残念だわ!
そしてどうやら今はもう殿下が終わりの挨拶をしているみたいね。
全く興味ないのだけど、私はその姿を見て流石はこの国の王太子様と思ってしまったわ。だって食堂にいる人達は皆、さっきまでの騒動なんて忘れてその神々しい姿に魅入っているんですもの。
だから私もそれに習って、アホ王子の話に耳を傾けてあげる事にしたのよ。
『……僕はいずれ、この国の王になる。エイミーと一緒なら、必ずこの国を良い方へと導ける筈だ。そんな僕達をどうかこの学園内で見守ってくれないだろうか……?もしこの話に賛同してくれる者がいるのなら、僕達へ盛大な拍手を贈ってくれ!』
周りが拍手をするのに合わせて、私も一応拍手をしてあげる事にしたわ。
だって本当なら、私は殿下を認めるつもりなんてなかったのよ。だから今もギリギリ及第点にしているだけで、もし殿下がエイミーちゃんを泣かせでもしたら、すぐに引き剥がす準備はできているもの。
……でも、今の感じだとそんな日はきっと来ない気がするわ。悔しいけど、エイミーちゃんをこの世界で一番愛して幸せにしてくれるのは、殿下ただ一人だけだもの……。
さて、私もエイミーちゃんの側にずっといる為にこれからは真面目に勉強する事にしましょうかね。
流石の私でも、将来の皇后一番の侍女になるにはまだまだ力不足だもの……。
でもね、きっとすぐに貴女のもとに追いつくわ。
だって私を唯一心の底から楽しませてくれるのはあなたしかいないんだもの。
だからエイミーちゃん、私を最後まで楽しませて頂戴ね───?
ー ー ー ー ー ー
先に謝っておきます。
遅くなってすみませんでした。
めちゃ長くなったけど分割するのはやめました。
読みにくかったらすみません。
最後の最後でユリアの心情が少しでも出せた話になったと思います。
少し変わったエイミーの親友であるユリアの少し重たい友情がわかって頂けたら幸いです。
それから、あともう1話スペリア視点を書いて最後になりますので、もう少しだけお付き合い下さい!
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