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邂逅
カモンPMC 2
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話の内容はこうだ。
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二年前、中南米にある、小さな警察駐在所から緊急通報が入った。通報内容はノイズによりかき消され不明。当初はいたずらもしくは回線の不具合かと思われたが、その後の定時連絡も無かった事から、増援部隊が調査に向かった。
増援部隊が駐在所に着くと、そこはもぬけの殻だった。不審に思い近隣の村まで様子を見に行くと、彼らは絶句した。村人は全員惨殺されていたからだ。
そこらかしこに散らばる死体。そのどれもがまともではなかった。体を小枝みたいに真っ二つに裂かれたもの。頭がひしゃげて胴体にめり込んでいるもの。不要になった紙でも絞ったかの様にねじられて死んでいるもの。人間の仕業ではない。血溜まりの中に村人だったであろう肉塊がゴロゴロ転がっている様子に部隊は恐れ慄いた。
よく見ると周囲には殴ったような痕跡が見られる。痕跡の大きさはどれも一緒だ。とてつもない力で穴が開けられた民家の壁、変形した鉄格子、中央を上から殴りつけられてVの字になった車。とてもじゃないが殴っただけでこんなことにはならないし、痕跡痕が拳によるものだとしても、拳の大きさは洗濯機位ある。まさかそんな大きい生き物がいるわけないだろう。
報告のため、部隊は周辺を調査することにした。隊員の1人が民家の扉の近くに男性の遺体が転がっている事に気がついた。比較的形を保った遺体だったが、明らかに他と違う所があった。スイカをぶちまけたみたいに、頭のてっぺんが破裂している。見たところ、それは内側から爆発した様だった。そして、奇妙な事に彼の頭の中は空っぽだ。
脳が見当たらない。
調査を続行する。その隊員は、今度は動く何かを見つけた。泥にまみれ、惨めにうねるそれを最初はミミズかと思ったが、近寄ってわかった。それは人間の脳だった。
ちらりと先ほどの男性の遺体を見る。この転がっている脳はきっと彼の物だ。頭を使い過ぎて活性化した脳みそが飛び出てしまったのか?冗談にせよ、脳みそが動く訳がない。隊員は嘘だと思いたかったが、まだ動き続けている。動き続けているというか、時間経過とともに明らかに変形している!拾った時は潰れた球状だったが、今は長方形になろうとしている。風も吹いていないし、特に力も加えていないにも関わらず。この世のものとは思えない。隊員は気味が悪くなった。
暫くすると、今度は行方不明になった警官の遺体が見つかった。頭は背骨と一緒に引っこ抜かれて、ずいぶん遠くに転がっていた。
どうやら彼はここで交戦していたらしい。彼の胸ポケットには血塗れのボイスレコーダーが入っていて、事件最中の様子が記録されていた。
懸命に走る警官の息遣い、そして拳銃の撃発音が聞こえる。
『・・・ハァ...ハァ...なんだあの化け物は。弾が当たらない。確実に標準は合っていたのに弾は奴の体をすり抜けた。まるで幻影、影を攻撃しているようだ。俺はあんなやつ見たことがない。毛むくじゃらで、デカいゴリラみたいな体をしてるのにヤギみたいな黒い目でこっちをじっとり見つめてきて気持ちが悪い。それにどうだ。やつは一匹で村人のほとんどを殺しちまった。やつが手をかざすと、村人は熟れたトマトみたいに握りつぶされてジュースにされちまう。一切接触していないにもかかわらずだ!俺の残弾もあと少し...クソっ!早く救援部隊が来てくれなければこの村は全滅する!なんとかこらえて・・・ グアァッ・・!』
警官の断末魔以降、ノイズのほか、聞こえてくるものはなにもなかった。
今まで余裕ぶってた隊員もちらほらいたのだが、そんな余裕は一瞬で消えた。駐在所にいた警察官は、明らかに何かと戦っていた。これ以降、隊員たちは調査が終わるまでの間。必死に周囲を警戒した。
調査は日没まで続き、そして何事もなく終了したものの、得られた成果は村人の全員死亡確認ができたことと、変形する脳だけだった。こんな荒唐無稽な報告が当然上層部に認められる訳がなく。この村人惨殺事件は『イカれた麻薬組織による大量殺人』として闇に葬り去られることになった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「と、まぁ話の概要はこんなところだ。」
希井は自分の方向にラップトップを向けなおしながら万金たちの様子を伺った。
「ヤバいやつがいるってことは分かったが、これだけだと只の作り話にも思えるな。」
万金はまだ話を信じていないようだ。
「まあそうだな。襲撃された後は確かにあったから何かが起きたことは間違いないが、この手の類のでっちあげとかフェイクなんていくらでもあるから私も最初は信じてなかったよ。私も昔よくやったよ。近所に青白い顔の奴が住んでたから夜中そいつの家に向かってトマトを投げるんだ。翌日来るとドラキュラ城みたいになってさ、面白かったよ。」
未悠はすこし眉を吊り上げたが、万金は鼻で笑った。
「だけどな万金。1年後、共通の特徴がある事件が発生したんだ。しかも今度は日本でだ。」
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二年前、中南米にある、小さな警察駐在所から緊急通報が入った。通報内容はノイズによりかき消され不明。当初はいたずらもしくは回線の不具合かと思われたが、その後の定時連絡も無かった事から、増援部隊が調査に向かった。
増援部隊が駐在所に着くと、そこはもぬけの殻だった。不審に思い近隣の村まで様子を見に行くと、彼らは絶句した。村人は全員惨殺されていたからだ。
そこらかしこに散らばる死体。そのどれもがまともではなかった。体を小枝みたいに真っ二つに裂かれたもの。頭がひしゃげて胴体にめり込んでいるもの。不要になった紙でも絞ったかの様にねじられて死んでいるもの。人間の仕業ではない。血溜まりの中に村人だったであろう肉塊がゴロゴロ転がっている様子に部隊は恐れ慄いた。
よく見ると周囲には殴ったような痕跡が見られる。痕跡の大きさはどれも一緒だ。とてつもない力で穴が開けられた民家の壁、変形した鉄格子、中央を上から殴りつけられてVの字になった車。とてもじゃないが殴っただけでこんなことにはならないし、痕跡痕が拳によるものだとしても、拳の大きさは洗濯機位ある。まさかそんな大きい生き物がいるわけないだろう。
報告のため、部隊は周辺を調査することにした。隊員の1人が民家の扉の近くに男性の遺体が転がっている事に気がついた。比較的形を保った遺体だったが、明らかに他と違う所があった。スイカをぶちまけたみたいに、頭のてっぺんが破裂している。見たところ、それは内側から爆発した様だった。そして、奇妙な事に彼の頭の中は空っぽだ。
脳が見当たらない。
調査を続行する。その隊員は、今度は動く何かを見つけた。泥にまみれ、惨めにうねるそれを最初はミミズかと思ったが、近寄ってわかった。それは人間の脳だった。
ちらりと先ほどの男性の遺体を見る。この転がっている脳はきっと彼の物だ。頭を使い過ぎて活性化した脳みそが飛び出てしまったのか?冗談にせよ、脳みそが動く訳がない。隊員は嘘だと思いたかったが、まだ動き続けている。動き続けているというか、時間経過とともに明らかに変形している!拾った時は潰れた球状だったが、今は長方形になろうとしている。風も吹いていないし、特に力も加えていないにも関わらず。この世のものとは思えない。隊員は気味が悪くなった。
暫くすると、今度は行方不明になった警官の遺体が見つかった。頭は背骨と一緒に引っこ抜かれて、ずいぶん遠くに転がっていた。
どうやら彼はここで交戦していたらしい。彼の胸ポケットには血塗れのボイスレコーダーが入っていて、事件最中の様子が記録されていた。
懸命に走る警官の息遣い、そして拳銃の撃発音が聞こえる。
『・・・ハァ...ハァ...なんだあの化け物は。弾が当たらない。確実に標準は合っていたのに弾は奴の体をすり抜けた。まるで幻影、影を攻撃しているようだ。俺はあんなやつ見たことがない。毛むくじゃらで、デカいゴリラみたいな体をしてるのにヤギみたいな黒い目でこっちをじっとり見つめてきて気持ちが悪い。それにどうだ。やつは一匹で村人のほとんどを殺しちまった。やつが手をかざすと、村人は熟れたトマトみたいに握りつぶされてジュースにされちまう。一切接触していないにもかかわらずだ!俺の残弾もあと少し...クソっ!早く救援部隊が来てくれなければこの村は全滅する!なんとかこらえて・・・ グアァッ・・!』
警官の断末魔以降、ノイズのほか、聞こえてくるものはなにもなかった。
今まで余裕ぶってた隊員もちらほらいたのだが、そんな余裕は一瞬で消えた。駐在所にいた警察官は、明らかに何かと戦っていた。これ以降、隊員たちは調査が終わるまでの間。必死に周囲を警戒した。
調査は日没まで続き、そして何事もなく終了したものの、得られた成果は村人の全員死亡確認ができたことと、変形する脳だけだった。こんな荒唐無稽な報告が当然上層部に認められる訳がなく。この村人惨殺事件は『イカれた麻薬組織による大量殺人』として闇に葬り去られることになった。
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「と、まぁ話の概要はこんなところだ。」
希井は自分の方向にラップトップを向けなおしながら万金たちの様子を伺った。
「ヤバいやつがいるってことは分かったが、これだけだと只の作り話にも思えるな。」
万金はまだ話を信じていないようだ。
「まあそうだな。襲撃された後は確かにあったから何かが起きたことは間違いないが、この手の類のでっちあげとかフェイクなんていくらでもあるから私も最初は信じてなかったよ。私も昔よくやったよ。近所に青白い顔の奴が住んでたから夜中そいつの家に向かってトマトを投げるんだ。翌日来るとドラキュラ城みたいになってさ、面白かったよ。」
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