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hirahara

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白の星の騎士

放浪者

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「そんなことしなくても、デバイスで撮ればいいじゃないですか?」
「カメラじゃ彼の素晴らしさは写しきれない。それに私はデバイスは持ってない」
「ひょっとしてプレイヤーですか?」
「そうだ」

 プレイヤーとNPCは鑑定スキルがあれば、見分けがつくけどそれ以外の方法では判別は難しい。僕が間違えたのも仕方ないことだと思う。
 彼のプレイヤーネームは子子子子子子子子子子子子。
これって故事だったっけ。たしか天皇が誰かに出したクイズだ。
 こんなのを名前している点でも変人だとわかる。


「でも、なんでこんな辺境に?」

 ここはプレイヤーの初期位置から離れており、特産品などもなくここでしか手に入らないアイテムもない。
この島の住人には悪いが、プレイヤーがわざわざ遠くから訪れる意味がない場所だ。
だから彼をNPCだと勘違いしたのだ。

「朝の占いだ」
「は?」
「朝の占いで北東に吉とあったんだ。そしたらここに辿り着き、神の芸術に出会ったのだ。着くまでに一週間掛かったがな。やはりカーボちゃんは素晴らしい」

 カーボちゃんとは朝のニュースで占いコーナーを担当しているキャラクターだ。
あの占いコーナーは人気だけど、人気なのはカーボちゃんでも占いでもない。
アシスタントのお姉さんのメグちゃんが人気なのだ。
 愛嬌ある笑顔と大きな胸で人気がある。
世のお父さん方のアイドルで僕のお父さんと爺ちゃんたちも虜にしているが、僕は微妙。なんかあざとい。女性人気も0らしい。


 やっぱり変人だ。そんなことで指針を決めるなんて。
口調のおかしさは理解できる。
たぶんアバターに言語変換パッチを組み込んでいるんだろう。


 言語変換パッチを使うと本人は普通に喋っているつもりでも、そのパッチに準じた喋りに変換されるのだ。
例えば関西弁のパッチを組み込むと、「たこ焼きが好きです」が「たこ焼きが好きや」に自動的に変換される。
ちなみにこのパッチにはレベルが設定されていて、最大レベルで適応すると「たこ焼きが好きでおまんがな」というおかしな関西弁になってしまう。
 妙な言葉遣いをする人は大抵アバターにこの類を組み込んでいるはずだ。


 そもそもこのパッチは消滅する方言を保存するために作られた物だった。
でも、ある日おかしな言語変換パッチが配信された。
 魔王とかSAMURAI、NINJAなどだ。
彼の尊大な口調はたぶん魔王バージョンを組み込んでいるんだろう。


 なおこのパッチの一番人気はSAMURAIバージョン。
ござるござるや拙者となかなかうざい。
それを少し弄ったNINJAバージョンも人気だ。こちらはニンニンとうざい。


 実は魔王とかSAMURAIを作ったのは僕と僕の知り合いたちだ。
機械コミュ上位者の交流会で知り合った。
 あの時、冗談でこんなの作ったら面白くない?って話になり、それに共感してその場にいた全員が遊びで製作した物だ。
まさかここまで売れるとは誰も思ってなかった、なにがうけるかよくわからない。


 作ったのはいいが、税とか管理などをみんな面倒くさがって、早々にライセンスを売った。
どっか企業が高値で買い取ってくれた。正確な金額は覚えてないけど、かなりの額だったことは覚えている。
 でも、そのお金は僕の将来のための貯金に回されてしまった。
当時小学生だったから仕方ない。


 一級も含む上位者が集まって作ったので、あのパッチは無駄に高性能だ。
言語の壁を越えることができる。英語圏の人が使っても効果があるし、ゲームでも使える。
その部分の構成は担当してないからどういう仕組みかは不明だけど。


 それはさておき、彼のプレイヤーネームどっかで聞いたことがある気が……思い出した。
この人、ドワーフ様の一人だ。
それも一番狂っていると噂の狂ドワーフ様だ。


 普通プレイに問題が生じて、キャラクターを再作成しても1、2回程度。
でもこの人は何度もそれを繰り返しており、ほぼ全部の星を回っているらしい。
 キャラクターは消去するから、デバイスは当然初期化。また始めからになる。
普通ならそんなプレイヤーはどんどん先発のプレイヤーから取り残されていく。
 にもかかわらず、彼はあらゆる星で成果を残している。
プレイヤーが見つけた合金の内、二つは彼が見つけた物なのだ。


 狂っていると言われる大きな要因は彼の感性。
彼は機体のデザインを依頼されることが多いが、そのデザインがイかれてる。
 一言で表すならクリーチャー。ズールの見た目もやばかったが、彼が作る物は格が違う。
あまりのグロテスクさで見る人によっては吐き気を催すのだ。それだけの代物をデフォルトで製作してしまう。
ピギを神の芸術と称するから人とは違う感性をしているんだろう。


 ちなみに赤の真実のようにちゃんとしたデザインもある。
率は低いが。


 彼は動き回るピギの姿を追っていたけど、それがある物を目にした瞬間止まった。
彼が目にした物、それは巨大スコップだ。

「君、それはただの金属で出来ていないね」
「えーと何のことですか?」
「とぼけても無駄さ。我が眼は全ての金属を見抜く。それはネオメタルだ!」

 ばれた。スコップは折れないように、ネオアイアンで作ってある。
見た目はただの金属製のスコップなのに、それを見破るとはさすがはドワーフ様だ。
 口止めのための交渉をしようとしたら、彼の方か切り出された。


「さて、君と交渉がしたい。私の望みはピギ君の鑑賞だ。その報酬として我が腕を君に預けよう!」

 ドワーフ様が仲間になるのはとても頼もしい。
ただこの人滅茶苦茶めんどくさそうだ。
 悩んだけど、受け入れることにした。
受け入れなかったら、粘着されそうで怖かったし。
 名前をどう呼べばいいか聞いたら、好きに呼んでくれていいと言われたので普通にコネコと呼ぶことにした。
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