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霧の魔

逆襲の蜂姫

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 落下したバンチョ―は飛翔すると、空中で静止した。飛行しているので立ってはいないけど、ポーズはさっきと同じ仁王立ちで腕を組んでいた。

『待たせたな!BANKARA参上!我らが来たからにはこれ以上貴様らの好きにはさせんぞ!』
 
 タリキさんはさっきのは無かったことにするつもりらしい。
みんなバッチリ目撃しているから、それは無理があると思う。

『兄貴。スベッてるよ』
『言うな。妹よ』

 大男のタリキさんは迫力があり、誰もツッコミを入れられない。
みんな見て見ぬ振りをしていたら、薫さんがツッコミを入れた。


 到着したのは彼らだけじゃない。
200を超えるファルシュが戦場に到着した。
港の防衛に残しているファルシュを除けば、エンジ島にある全戦力だ。


 空を覆い尽くす飛行種の群れには無数の銃弾が、大地を這いずる蛇には無数の杭が放たれた。
僕らがもたらした情報で、飛行種にはパイルガンではなく、通常の銃が使われていた。
これも散っていた第一陣の仲間たちのおかげだ。


 背後から大型のエアロトラックが五台が防壁の中に入ってきた。
誰だ?こんな危険地帯に装甲がないトラックで来るのは無謀すぎる。

『第一陣の方はこちらへ。簡易修理と補給をします』
「コミツさん?!なんでここに?」
『みなさんが戦っているのに安全なところで待っているなんてできませんよ』
『来ると思ってた。コミツってそういうところがあるよね』
 
 はにーさんはコミツさんが来ることが分かっていた様子。
第一陣はエネルギーも弾薬も限界だから有り難いんだけど、いくら防壁があるとはいえ、生身でこの戦場にいるのは危険すぎる。
 駆けつけたメカニックはコミツさんだけじゃない。
彼女の他にも10人ほどが来ていた。コミツさん以外はほとんどBANKARAのメンバーだ。和三盆さんもいる。
フォートレスの整備のために近衛隊からもメカニックが来ていた。

『私もいるぞ』
「コネコ?何で君まで?」
『芸術のためだ。モニター越しでは臨場感が伝わらないのでな。スケッチブックも持ってきたぞ。その前に手伝ってやるから、ガーディフォースと紅霞の補給をさっさと済ませるぞ』

 こんな事態でもやっぱりコネコはコネコだ。


 第一陣の機体が防壁内に着陸していく。
一度に全機を着陸させるのはスペース的に不可能だから、三回に分けることにした。
 着陸したファルシュをBANKARAのメカニックが整備を開始する。
彼らは手際良く、エアロダイトの交換と弾薬の補給を終わらせていった。


 整備している間にパイロットは休憩していた。
疲労回復のために渡してあるマイナーポーションを飲み、活力の回復に務めている。
 整備が終了したら、彼らも第二陣に加わり、攻撃を再開しなければならない。
今の所、第二陣は善戦してはいるが、味方は多い方がいい。


 僕も休憩したいけど、ガーディフォースと紅霞の整備をしないといけない。
紅霞にガーディフォースを繋ぎ、電力を送る。
充電が完了したら、ガーディフォースのエアロダイトを交換する。この方法なら、充電ケーブルさえあれば、どこでも充電できる。
 充電している間に、他の箇所もチェックしていく。幸い、両機とも大きな損傷はない。エネルギーの補給が終われば、すぐに戦闘に戻ることができそうだ。


 みんな機体から降りて、休憩しているんだけど、はにーさんだけ降りてきていない。
どうしたんだろう?


◇はにー視点

 悔しい。
もう少しで撃墜されるところだった。
されなかったのは私の実力じゃない。セイヨウたちが来るのが一秒でも遅かったら、間違いなくやられていた。
 思わず、コックピットのコンソールを殴ろうとして、寸前で思い留まった。この機体は借り物。もう壊しているけど、これ以上壊すことはできない。


 私は蜜蜂騎兵団のエース。
エースに敗北は許されない。
 なのにこの様。無様としかいえない。
みんなは私のことをエース失格と思うかもしれない。
 慣れない機体だからしょうがない?
そんなの言い訳にも慰めにもならない。


 リベンジがしたい。でも、この子はもう前線で戦うことは無理。できるのは後方からの援護射撃だけ。
本当に情けない。頬に何かが伝っているのを感じる。
 ハッチが開き、コミツがコックピットの中に入ってきた。
私がいつまで経っても、降りてこないから心配したみたい。いらない心配。コミツの癖に生意気。

「はにーちゃん。泣いてるの?」
「泣いてない。これは汗」

 断じて涙じゃない。

「だったら、いいけど。早く機体から降りて。この機体じゃ戦えないでしょう?」
「援護ぐらいはできる」
「はにーちゃんのホーネットも持ってきているから、乗り換えて。まだやれるでしょ?」
「当たり前!」

 さすがはコミツ。ホーネットがあれば、すぐにリベンジが出来る。
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