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風吹く星よ
おとり
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作業員を気絶させた男に続いて、人相の悪い男たちが倉庫に無断で侵入してきた。
「へっへっへっ。そのコンテナを渡してもらおうか」
やはり、こいつらの狙いはコンテナだった。
「これはルドフィー市民にとって大事な荷物なんです。渡すわけにはいきません!」
「知るか!それが出回ると困る人がいるんだよ。さっさと寄越せ」
作業員の一人が、啖呵を切るが、そんなことで引いてくれるような風貌の男たちじゃない。
作業員を庇い、先頭に立つ。
ゴロツキは30人ほどいる。
手にはナイフなどの武器が握られているが、銃器を持つ者はいなかった。
ゴロツキの癖に、そこそこ賢い。
倉庫地帯は人通りが少ないが、銃声が響けば、さすがに人が駆けつけてくる。
僕一人なら何とかなるけど、後ろには作業員の人たちがいる。
この数相手に、彼らを守り抜くは難しい。
先頭にいる巨漢の男がリーダーのように振舞っているが、こいつがリーダーじゃないことがすぐに判明した。
リーダーは最後尾で指示を出している白スーツの男だ。
そいつを押さえれば、決着がつく。
「嫌だと言ったら?」
「少し痛い目を見て、ぐはぁ!」
正面にいる巨漢のお腹に拳を叩き込み、悶絶させると、大きく跳躍し、一気に敵の後方に出る。
至高の肉体レベル2とパワーアップしたDクロスのパワーアシストの力があれば、これぐらいできる。
最後尾にいた白スーツの男の襟を掴み、地面に引き倒し、頭を踏みつけた。
「動くな!こいつの頭を踏み砕くぞ!」
『まだ意識があるよ。何か出そうとしてる』
懐から銃らしき物を取り出そうしていたので、さらに力を入れて、行動を妨害する。
「大人しく武器を捨てろ。さもないと……」
足に力を籠める。
白スーツの口から苦悶の声が漏れた。
ゴロツキたちが武器を捨てるのを確認すると、力を少し緩めた。
『左後ろの男が何かしてるよ。気を付けて』
「動くなと言ってるだろう!」
牽制のためにもう一度、力を籠める。
こいつらの動きは全部把握しているのだ。
髪で隠れているため分かりにくいが、僕の片耳にイヤホンを取り付けられており、離れた場所にいるユラさんが敵の動きを教えてくれているのだ。
ユラさんの読みを信じて、備えておいたのは正解だった。
彼女の読みは本当に頼りになる。
輸送の妨害があると仮定した場合、そのタイミングは大きく分けて、三つのパターンがある。
一つ目はナートリでの荷の受け取りの時。
だが、ここでの襲撃の可能性は一番低い。
ここで妨害して、荷を奪っても新しい物を用意される可能性が高い。
それに積み荷を奪っても、ナートリでは売ることができないため、荷の処分にも困ることになる。
二つ目は道中だ。
受け取りの時よりは襲撃の可能性が高くなるが、ここで襲撃する場合、ファルシュと船を用意しないといけない。
それだと、経費が掛かりすぎる。
だから、取引の妨害に来るなら、引き渡しのタイミングが一番可能性が高かった。
ルドフィーなら、手勢も揃えやすく、奪った荷は売ることが処分できる。
ここは倉庫地帯なので、一般人はここまで来ることはない。
襲撃するのにここ以上に適した場所はなかった。
以上、ユラさんの読みでした。
すでに通報しているから、時期に治安組織が来るだろうが、それまで制圧し続けるのは骨が折れる。
一番手っ取り早い毒ガスを使おうかな。
業者の人も巻き込むけど、麻痺するだけだから、問題はない。
デバイスから毒ガス弾を取り出そうとすると、ユラさんが警告してきた。
何者かがこの倉庫に近づいているそうだ。
「動くな!」
数十人が倉庫内に雪崩れ込んできた。
敵の増援かと思ったが、違っていた。
彼らの服装はルドフィーの治安組織の物だ。
偽物の可能性もあるが、見たことがある人もいたから、間違いなく本物だ。
彼らはゴロツキを速やかに拘束していく。
僕の足の下にいる白スーツの男も引き渡した。
この白スーツの男はそこそこ有名人で、ある商会に雇われているそうだ。
こんなゴロツキを雇うなんて、どう考えてもまともな商会じゃない。
詳しく聞くと、非合法な商売をしていると噂になっている商会らしい。
どう見ても真っ黒なんだけど、証拠はなく、摘発することができないそうだ。
会頭は一等民らしく、証拠もなしに手を出すと、大問題になる。
一等民のほとんどは大陸主。
自身の領地を持っていない者もいるが、権力は王に次ぐ。
その途方もない権力の前には黒も白になってしまうのだ。
今回の大捕り物だけど、僕は囮にされたんだと思う。
だって、通報から到着まで早すぎる。
この倉庫は倉庫地帯の端の方にあって、こんな短時間で来れる場所じゃない。
近くで突入のタイミングを計っていたに違いない。
それならそうと始めから言っておいて欲しかったが、こいつらはかなり鼻が利き、少しでも治安組織の気配を感じると、逃げてしまうそうだ。
今まで、何度もおとり捜査を試みてきたそうだけど、あと少しのところで、取り逃がしてきたらしい。
利用されたのには少し思うところがあるけど、被害はないし、お礼も貰えたから、もういいや。
「へっへっへっ。そのコンテナを渡してもらおうか」
やはり、こいつらの狙いはコンテナだった。
「これはルドフィー市民にとって大事な荷物なんです。渡すわけにはいきません!」
「知るか!それが出回ると困る人がいるんだよ。さっさと寄越せ」
作業員の一人が、啖呵を切るが、そんなことで引いてくれるような風貌の男たちじゃない。
作業員を庇い、先頭に立つ。
ゴロツキは30人ほどいる。
手にはナイフなどの武器が握られているが、銃器を持つ者はいなかった。
ゴロツキの癖に、そこそこ賢い。
倉庫地帯は人通りが少ないが、銃声が響けば、さすがに人が駆けつけてくる。
僕一人なら何とかなるけど、後ろには作業員の人たちがいる。
この数相手に、彼らを守り抜くは難しい。
先頭にいる巨漢の男がリーダーのように振舞っているが、こいつがリーダーじゃないことがすぐに判明した。
リーダーは最後尾で指示を出している白スーツの男だ。
そいつを押さえれば、決着がつく。
「嫌だと言ったら?」
「少し痛い目を見て、ぐはぁ!」
正面にいる巨漢のお腹に拳を叩き込み、悶絶させると、大きく跳躍し、一気に敵の後方に出る。
至高の肉体レベル2とパワーアップしたDクロスのパワーアシストの力があれば、これぐらいできる。
最後尾にいた白スーツの男の襟を掴み、地面に引き倒し、頭を踏みつけた。
「動くな!こいつの頭を踏み砕くぞ!」
『まだ意識があるよ。何か出そうとしてる』
懐から銃らしき物を取り出そうしていたので、さらに力を入れて、行動を妨害する。
「大人しく武器を捨てろ。さもないと……」
足に力を籠める。
白スーツの口から苦悶の声が漏れた。
ゴロツキたちが武器を捨てるのを確認すると、力を少し緩めた。
『左後ろの男が何かしてるよ。気を付けて』
「動くなと言ってるだろう!」
牽制のためにもう一度、力を籠める。
こいつらの動きは全部把握しているのだ。
髪で隠れているため分かりにくいが、僕の片耳にイヤホンを取り付けられており、離れた場所にいるユラさんが敵の動きを教えてくれているのだ。
ユラさんの読みを信じて、備えておいたのは正解だった。
彼女の読みは本当に頼りになる。
輸送の妨害があると仮定した場合、そのタイミングは大きく分けて、三つのパターンがある。
一つ目はナートリでの荷の受け取りの時。
だが、ここでの襲撃の可能性は一番低い。
ここで妨害して、荷を奪っても新しい物を用意される可能性が高い。
それに積み荷を奪っても、ナートリでは売ることができないため、荷の処分にも困ることになる。
二つ目は道中だ。
受け取りの時よりは襲撃の可能性が高くなるが、ここで襲撃する場合、ファルシュと船を用意しないといけない。
それだと、経費が掛かりすぎる。
だから、取引の妨害に来るなら、引き渡しのタイミングが一番可能性が高かった。
ルドフィーなら、手勢も揃えやすく、奪った荷は売ることが処分できる。
ここは倉庫地帯なので、一般人はここまで来ることはない。
襲撃するのにここ以上に適した場所はなかった。
以上、ユラさんの読みでした。
すでに通報しているから、時期に治安組織が来るだろうが、それまで制圧し続けるのは骨が折れる。
一番手っ取り早い毒ガスを使おうかな。
業者の人も巻き込むけど、麻痺するだけだから、問題はない。
デバイスから毒ガス弾を取り出そうとすると、ユラさんが警告してきた。
何者かがこの倉庫に近づいているそうだ。
「動くな!」
数十人が倉庫内に雪崩れ込んできた。
敵の増援かと思ったが、違っていた。
彼らの服装はルドフィーの治安組織の物だ。
偽物の可能性もあるが、見たことがある人もいたから、間違いなく本物だ。
彼らはゴロツキを速やかに拘束していく。
僕の足の下にいる白スーツの男も引き渡した。
この白スーツの男はそこそこ有名人で、ある商会に雇われているそうだ。
こんなゴロツキを雇うなんて、どう考えてもまともな商会じゃない。
詳しく聞くと、非合法な商売をしていると噂になっている商会らしい。
どう見ても真っ黒なんだけど、証拠はなく、摘発することができないそうだ。
会頭は一等民らしく、証拠もなしに手を出すと、大問題になる。
一等民のほとんどは大陸主。
自身の領地を持っていない者もいるが、権力は王に次ぐ。
その途方もない権力の前には黒も白になってしまうのだ。
今回の大捕り物だけど、僕は囮にされたんだと思う。
だって、通報から到着まで早すぎる。
この倉庫は倉庫地帯の端の方にあって、こんな短時間で来れる場所じゃない。
近くで突入のタイミングを計っていたに違いない。
それならそうと始めから言っておいて欲しかったが、こいつらはかなり鼻が利き、少しでも治安組織の気配を感じると、逃げてしまうそうだ。
今まで、何度もおとり捜査を試みてきたそうだけど、あと少しのところで、取り逃がしてきたらしい。
利用されたのには少し思うところがあるけど、被害はないし、お礼も貰えたから、もういいや。
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