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風吹く星よ
元気出せよ
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この策は一番穏便で、パニックが起こらないもの。
影さんたちの立案だ。ユラさんが考えたのは別の作戦。僕はそっちを推していた。
その作戦とは、航空局のサーバーにアクセスして、全ての船の行く先や所属などの情報をぐちゃぐちゃにすることでパニックを起こし、それに乗じて、ルドフィーを離脱する策だ。
いざ、実行に移そうとしたら、「絶対にやめてください」と影さんに止められてしまった。
僕らがルドフィーから脱出に成功したら、すぐに元に戻るように細工するつもりだったから、混乱が起きるのはほんの一時間程度。
少しパニックになるだけで、大した損害も出ないはずだったのに。やりたかったのに。もう作戦のためのプログラムも完成させたのに。
残念だけど、また機会を楽しみにしておく。
「これのことは秘密にしとこう」
僕の手にあるのはデバイスの形をした機械だ。
影さんに知られたら、壊されそうだ。
偽デバイス。
デバイスを没収されそうになった時、身代わりにするために作成した。
本物から型を取ったから、見た目は完璧にヴィンディスのデバイスで、動作も見分けがつかないぐらいそっくりに作ってある。
偽物なので、インベントリは開けないし、スキルの習得もできないから、持ち主には偽物だとすぐに分かるが、第三者には見分けがつかない。
バレたらまずいのはこれの中にあるプログラムだ。
そのプログラムとはコンピューターウィルスだ。
これをデバイスソケットに差し込んだ瞬間、コンピューターウィルスに感染。
このウィルスはOSを含めた全てのデータを破壊する。
バッググラウンドで作業するため、気付いた時にはもう手遅れだ。
ウィルスを仕掛けたのは報復のためだ。
本来、デバイスは所有者しか操作できないが、それを突破する技術を統合軍が編み出していないとは限らない。
僕らのデバイスを奪って、中のアイテムやデータを盗もうしてくるかもしれない。
その時が来た時の備えだ。早く奪いに来ないかな。
データ復旧ができないぐらい完全破壊するから、発動するのが楽しみだ。
偽デバイスだけじゃなくて、クインシフに行くにあたって、他にも色んな準備をしてきた。
自分でもやりすぎだと思うくらいに。
クインシフで何が起こるか分からない。
謁見だけで終わればいいんだけど、統合軍が手を出してくる可能性があるのだ。
ジルコニアを持っていくのも、それの対策の一つ。
パワードアーマーがないウィンディスでジルコニアを止める手段はない。
万が一、ファルシュなしの白兵戦になった場合、生身の人間に携行可能な武器では、ジルコニアの装甲を破ることができないから、一方的に殲滅が可能だ。
統合軍は陽動に見事に引っ掛かり、現在も影さんたちと追いかけっこを繰り広げている。
追い回されている影さんたちが心配だが、彼らならちゃんと振り切ることができるだろう。
彼らとはクインシフでの再会を約束した。
陽動は成功したが、まだ監視が残っていた。
だが、マイグラントならそれを掻い潜ることができる。
マイグラントのメイン推進器はエアロダイトの風を利用した物ではなく、ライフストリーム式の物だ。
これはエアロダイト式の物よりも遥かに静音性が高い。
出力を最小にすれば、近くを飛んでいても分からないレベルにまで抑えることが可能なのだ。
エアロダイトを使用したのは出発の浮上の時だけ。以降はエアロダイトを停止させてある。
ライフストリーム式推進器だけでも十分な推進力を得ることができる。
エアロダイトを止めたことで、船内のエネルギー供給が停止したけど、バッテリーからの給電に切り替えれば、問題は起きない。
統合軍はエアロダイトが出す音と干渉波を頼りに、監視しているはずなので、使わなければ、統合軍の網は容易くすり抜けることができるはずだ。
統合軍の網を躱し、無事に予定航路に入ることができた。
この航路上にある島はほぼ全て王派。
統合軍もここに網を仕掛けることはできない。
ただ、この航路は安全な航路ではない。
統合軍に捕まるよりはマシだけど、このルートには危険がある。
警戒を緩めないよう、作業ロボに檄を飛ばした。
「どうにか抜けることができたね」
「ごめん。私のせいで、こんなことに」
「本当にいいから。あんまりしつこいと怒るよ」
ヴィニアちゃんは相変わらず申し訳なさそうにしていた。
むしろ、その態度が苛立ちを覚えてしまう。
こうなることは、彼女を匿った時から覚悟している。
正直、今更なのだ。
そんなヴィニアちゃんに向かって、ピギが泡を放った。
泡はヴィニアちゃんの目前で破裂。
手加減しているようで、破裂音はあまり大きくはなかったが、突然のことで驚いたヴィニアちゃんは転倒した。
「ぴぎゅ!」
「元気出せってさ」
「……ありがとう」
ヴィニアちゃんはピギをぬいぐるみを抱くように優しく抱きしめるのだった。
影さんたちの立案だ。ユラさんが考えたのは別の作戦。僕はそっちを推していた。
その作戦とは、航空局のサーバーにアクセスして、全ての船の行く先や所属などの情報をぐちゃぐちゃにすることでパニックを起こし、それに乗じて、ルドフィーを離脱する策だ。
いざ、実行に移そうとしたら、「絶対にやめてください」と影さんに止められてしまった。
僕らがルドフィーから脱出に成功したら、すぐに元に戻るように細工するつもりだったから、混乱が起きるのはほんの一時間程度。
少しパニックになるだけで、大した損害も出ないはずだったのに。やりたかったのに。もう作戦のためのプログラムも完成させたのに。
残念だけど、また機会を楽しみにしておく。
「これのことは秘密にしとこう」
僕の手にあるのはデバイスの形をした機械だ。
影さんに知られたら、壊されそうだ。
偽デバイス。
デバイスを没収されそうになった時、身代わりにするために作成した。
本物から型を取ったから、見た目は完璧にヴィンディスのデバイスで、動作も見分けがつかないぐらいそっくりに作ってある。
偽物なので、インベントリは開けないし、スキルの習得もできないから、持ち主には偽物だとすぐに分かるが、第三者には見分けがつかない。
バレたらまずいのはこれの中にあるプログラムだ。
そのプログラムとはコンピューターウィルスだ。
これをデバイスソケットに差し込んだ瞬間、コンピューターウィルスに感染。
このウィルスはOSを含めた全てのデータを破壊する。
バッググラウンドで作業するため、気付いた時にはもう手遅れだ。
ウィルスを仕掛けたのは報復のためだ。
本来、デバイスは所有者しか操作できないが、それを突破する技術を統合軍が編み出していないとは限らない。
僕らのデバイスを奪って、中のアイテムやデータを盗もうしてくるかもしれない。
その時が来た時の備えだ。早く奪いに来ないかな。
データ復旧ができないぐらい完全破壊するから、発動するのが楽しみだ。
偽デバイスだけじゃなくて、クインシフに行くにあたって、他にも色んな準備をしてきた。
自分でもやりすぎだと思うくらいに。
クインシフで何が起こるか分からない。
謁見だけで終わればいいんだけど、統合軍が手を出してくる可能性があるのだ。
ジルコニアを持っていくのも、それの対策の一つ。
パワードアーマーがないウィンディスでジルコニアを止める手段はない。
万が一、ファルシュなしの白兵戦になった場合、生身の人間に携行可能な武器では、ジルコニアの装甲を破ることができないから、一方的に殲滅が可能だ。
統合軍は陽動に見事に引っ掛かり、現在も影さんたちと追いかけっこを繰り広げている。
追い回されている影さんたちが心配だが、彼らならちゃんと振り切ることができるだろう。
彼らとはクインシフでの再会を約束した。
陽動は成功したが、まだ監視が残っていた。
だが、マイグラントならそれを掻い潜ることができる。
マイグラントのメイン推進器はエアロダイトの風を利用した物ではなく、ライフストリーム式の物だ。
これはエアロダイト式の物よりも遥かに静音性が高い。
出力を最小にすれば、近くを飛んでいても分からないレベルにまで抑えることが可能なのだ。
エアロダイトを使用したのは出発の浮上の時だけ。以降はエアロダイトを停止させてある。
ライフストリーム式推進器だけでも十分な推進力を得ることができる。
エアロダイトを止めたことで、船内のエネルギー供給が停止したけど、バッテリーからの給電に切り替えれば、問題は起きない。
統合軍はエアロダイトが出す音と干渉波を頼りに、監視しているはずなので、使わなければ、統合軍の網は容易くすり抜けることができるはずだ。
統合軍の網を躱し、無事に予定航路に入ることができた。
この航路上にある島はほぼ全て王派。
統合軍もここに網を仕掛けることはできない。
ただ、この航路は安全な航路ではない。
統合軍に捕まるよりはマシだけど、このルートには危険がある。
警戒を緩めないよう、作業ロボに檄を飛ばした。
「どうにか抜けることができたね」
「ごめん。私のせいで、こんなことに」
「本当にいいから。あんまりしつこいと怒るよ」
ヴィニアちゃんは相変わらず申し訳なさそうにしていた。
むしろ、その態度が苛立ちを覚えてしまう。
こうなることは、彼女を匿った時から覚悟している。
正直、今更なのだ。
そんなヴィニアちゃんに向かって、ピギが泡を放った。
泡はヴィニアちゃんの目前で破裂。
手加減しているようで、破裂音はあまり大きくはなかったが、突然のことで驚いたヴィニアちゃんは転倒した。
「ぴぎゅ!」
「元気出せってさ」
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