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風吹く星よ
頼りにならない治安組織
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派手に撃ちまくって、敵の注意を引き付けたのは紅霞を秘密裏に接近させるためだ。
ステルス状態にある紅霞は既存のレーダーでは全く映らない。
ユラさんが取得している探知無効スキルの効果も相まって、その隠密性はスペック以上の物になっていた。
もはや空賊は降伏するしか道は残されていない。
大半の空賊は死ねば諸共のタイプじゃない。
必ず降伏してくるはずだ。
予想通り、降伏信号を送られてきた。
残ったファルシュも武装を解除し、降下していく。
この島の治安組織に空賊の捕縛を報告している。
頼りになりそうにないし、足手まといになるから、戦闘時には呼ばなかった。
そもそも、頼りになる組織なら、空賊がこの島を根城にしていない。
降伏した空賊を一人ずつ縛り上げる。
抵抗する者もいたが、単純な腕力で僕に勝てる者はいない。
中でも激しい抵抗をしたのは空賊の親分だ。
顔には青あざができている。
あまりにも抵抗するので、ヴィニアちゃんが何発か殴ったのだ。
「お前らに話すことなんてねぇーよ。さっさと失せろ」
簀巻きにされているのに元気だ。
その元気がいつまで持つか、見物だけど。
普通に尋問する予定だったんだけど、コネコがボディペイントによる最後の作品を作りたいと申し出てきた。
諜報員が来なくなったせいで、不完全燃焼だったらしい。
「それじゃあ、コネコ。あとは任せた」
「久しぶりだ。腕が鳴る」
「何をする!やめろ!」
「安心しろ。お前は今から芸術に生まれ変わるのだ!」
親分の悲鳴が辺りに木霊する。
数時間後、空賊の親分は別人のように静かになった。
「ごめんなさい。全部話します。だからもう勘弁してください」
髪の毛が全て剃られ、頭にはコネコがペイントを施されている。
筋肉の動きも計算されており、今までの経験が活かされた大作だ。
今回は、水性塗料を使っているから、水で洗えば落ちる。
でも、黙秘を続ければ、落ちない塗料を使うと脅しをかけた結果、御覧のとおり素直になった。
彼が知る全ての情報を吐いてもらった。
今回、彼らが僕らを襲ったのはやはり統合軍からの依頼だった。
顔を隠し、仲介人を複数人入れていたらしいが、怪しい依頼だったから、調べ上げたそうだ。
空賊には空賊の独自の情報網があるらしい。
そんな怪しい依頼は普段なら受けないそうだ。
だが、報酬が前払いの上、依頼遂行のためにファルシュが20機、船が一隻提供され、返却も不要だったので、つい飛びついてしまったらしい。
統合軍のやったことは不法行為だが、罰することはできないだろう。
なぜなら、物的証拠が一つもないからだ。
鹵獲したファルシュは統合軍が用意した物だから、何か残っていないか隅々まで調べたが、何も見つからなかった。
ご丁寧なことに機体の製造番号まで削り取られていた。
空賊の証言はあるが、こんなの意味がない。
裁判になった場合、空賊の証言と統合軍の証言、どっちが信用されるかなんて、考えなくても分かる。
他にも有用な情報がないか、聞いてみると、当初の航路上にあり、統合軍派に鞍替えした島の情報を知っていた。
あの島が統合軍派に鞍替えしたのは島主が代わったからだそうだ。
ただ代わったのでない。
現島主が父親である前島主を強制的に引退させ、隠居させたそうだ。
ヴィンディスは各島の自治権が強く、その島内で通ってしまったことはそう簡単には覆せない。
特に島主の選定は島の自治権の中で、重要な権利であり、国は口出しができず、今回のようなケースでも島主交代を認めざる負えないそうだ。
空賊の話によると、あの島では何かを発掘しているらしい。
何を発掘しているかは彼らも知らなかったが、統合軍は【力】と呼んでいるそうだ。
こちらに船が近づいてくるのが見える。
「やっと来たか。遅すぎでしょ」
ようやく到着した島の治安組織に空賊たちを引き渡した。
空賊のファルシュと船だけど、彼らに売却することになった。
値は相場よりかなり安いが、運搬の手間を考えれば、許容できる範囲だ。
ファルシュ31機全てがこの島で使われるわけではなくて、近隣の島にも売るそうだ。
空賊は彼らの船に乗せられて、町へと連行されていった。
たぶんだけど、彼らはすぐに解放される。
空賊の扱いは基本的に各島の島主に任されている。
エンジ島やナートリ島では監獄行き。
ルドフィーもそうだった気がする。
監獄は国の管轄だから、維持費を島主が負担する必要はない。
だけど、監獄に移送する費用は島主が払うことになっている。
だから、監獄に移送する島はそんなに多くない。
労働奴隷する島が一番多いみたいだ。
一部の島では即処刑されるらしい。
そんな中、この辺りの島は一番甘い処遇を取っている。
多額の保釈金さえ払えば、すぐに解放するのだ。
空賊の多くはそれを払うために財産を隠している。
空賊にとって、それは絶対に守らなければならない生命線。
尋問したが、財産の隠し場所だけは吐いてくれなかった。
捕まっても命の危険もないし、お金さえ払えればすぐに解放される。
そんな制度を敢行しているから、この辺りは空賊の活動が活発なのだ。
ステルス状態にある紅霞は既存のレーダーでは全く映らない。
ユラさんが取得している探知無効スキルの効果も相まって、その隠密性はスペック以上の物になっていた。
もはや空賊は降伏するしか道は残されていない。
大半の空賊は死ねば諸共のタイプじゃない。
必ず降伏してくるはずだ。
予想通り、降伏信号を送られてきた。
残ったファルシュも武装を解除し、降下していく。
この島の治安組織に空賊の捕縛を報告している。
頼りになりそうにないし、足手まといになるから、戦闘時には呼ばなかった。
そもそも、頼りになる組織なら、空賊がこの島を根城にしていない。
降伏した空賊を一人ずつ縛り上げる。
抵抗する者もいたが、単純な腕力で僕に勝てる者はいない。
中でも激しい抵抗をしたのは空賊の親分だ。
顔には青あざができている。
あまりにも抵抗するので、ヴィニアちゃんが何発か殴ったのだ。
「お前らに話すことなんてねぇーよ。さっさと失せろ」
簀巻きにされているのに元気だ。
その元気がいつまで持つか、見物だけど。
普通に尋問する予定だったんだけど、コネコがボディペイントによる最後の作品を作りたいと申し出てきた。
諜報員が来なくなったせいで、不完全燃焼だったらしい。
「それじゃあ、コネコ。あとは任せた」
「久しぶりだ。腕が鳴る」
「何をする!やめろ!」
「安心しろ。お前は今から芸術に生まれ変わるのだ!」
親分の悲鳴が辺りに木霊する。
数時間後、空賊の親分は別人のように静かになった。
「ごめんなさい。全部話します。だからもう勘弁してください」
髪の毛が全て剃られ、頭にはコネコがペイントを施されている。
筋肉の動きも計算されており、今までの経験が活かされた大作だ。
今回は、水性塗料を使っているから、水で洗えば落ちる。
でも、黙秘を続ければ、落ちない塗料を使うと脅しをかけた結果、御覧のとおり素直になった。
彼が知る全ての情報を吐いてもらった。
今回、彼らが僕らを襲ったのはやはり統合軍からの依頼だった。
顔を隠し、仲介人を複数人入れていたらしいが、怪しい依頼だったから、調べ上げたそうだ。
空賊には空賊の独自の情報網があるらしい。
そんな怪しい依頼は普段なら受けないそうだ。
だが、報酬が前払いの上、依頼遂行のためにファルシュが20機、船が一隻提供され、返却も不要だったので、つい飛びついてしまったらしい。
統合軍のやったことは不法行為だが、罰することはできないだろう。
なぜなら、物的証拠が一つもないからだ。
鹵獲したファルシュは統合軍が用意した物だから、何か残っていないか隅々まで調べたが、何も見つからなかった。
ご丁寧なことに機体の製造番号まで削り取られていた。
空賊の証言はあるが、こんなの意味がない。
裁判になった場合、空賊の証言と統合軍の証言、どっちが信用されるかなんて、考えなくても分かる。
他にも有用な情報がないか、聞いてみると、当初の航路上にあり、統合軍派に鞍替えした島の情報を知っていた。
あの島が統合軍派に鞍替えしたのは島主が代わったからだそうだ。
ただ代わったのでない。
現島主が父親である前島主を強制的に引退させ、隠居させたそうだ。
ヴィンディスは各島の自治権が強く、その島内で通ってしまったことはそう簡単には覆せない。
特に島主の選定は島の自治権の中で、重要な権利であり、国は口出しができず、今回のようなケースでも島主交代を認めざる負えないそうだ。
空賊の話によると、あの島では何かを発掘しているらしい。
何を発掘しているかは彼らも知らなかったが、統合軍は【力】と呼んでいるそうだ。
こちらに船が近づいてくるのが見える。
「やっと来たか。遅すぎでしょ」
ようやく到着した島の治安組織に空賊たちを引き渡した。
空賊のファルシュと船だけど、彼らに売却することになった。
値は相場よりかなり安いが、運搬の手間を考えれば、許容できる範囲だ。
ファルシュ31機全てがこの島で使われるわけではなくて、近隣の島にも売るそうだ。
空賊は彼らの船に乗せられて、町へと連行されていった。
たぶんだけど、彼らはすぐに解放される。
空賊の扱いは基本的に各島の島主に任されている。
エンジ島やナートリ島では監獄行き。
ルドフィーもそうだった気がする。
監獄は国の管轄だから、維持費を島主が負担する必要はない。
だけど、監獄に移送する費用は島主が払うことになっている。
だから、監獄に移送する島はそんなに多くない。
労働奴隷する島が一番多いみたいだ。
一部の島では即処刑されるらしい。
そんな中、この辺りの島は一番甘い処遇を取っている。
多額の保釈金さえ払えば、すぐに解放するのだ。
空賊の多くはそれを払うために財産を隠している。
空賊にとって、それは絶対に守らなければならない生命線。
尋問したが、財産の隠し場所だけは吐いてくれなかった。
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そんな制度を敢行しているから、この辺りは空賊の活動が活発なのだ。
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