神様project・異世界もチートも欲しくない！ 欲しいのは女神様だけ！！

月曜神の凛清な愛【７１話～８６話】

戦火の刃！！

   ――これも定めと言うのなら……。

   翠は日本刀を持って走り出し、聖奈に向かって刃を降り下ろす。
   もちろん聖奈は居合いでその刃を払うも、表情からは本気を出すどころかあくびをかくほどの暇潰し程度でしかない攻撃としか思っていない。

 「闇雲に振っても当たりませんよ？」

 「ちぃっ。」

   翠は踵を一瞬返し距離を取るも次の一手を考えようにも全てが聖奈に通用するような手じゃない事を知っている。
   闇雲に振っても当たらないというのはわかるし、勝てるというイメージが湧かないのだ。

 「どうすれば……うぉわっ！？」

   聖奈は軽く日本刀をブンッと振っては薙ぐように斬りつけ、風を斬る音が一瞬聞こえる。
   スパッと木刀すら両断するほど鋭い日本刀は世界でもトップレベルとも言われる刃物の技術、そんなので斬られたらただでは済まないとは知っている。
   ゲームの世界じゃない、死んでいても現実と何一つ変わらぬ感覚に嫌悪を感じるばかりだ。



















   ――風を斬る音が幾度も聞こえる……。

   聖奈は十数秒に一度のペースでこちらに攻撃しては翠の斬撃を難なく受け流したり刃で跳ね返したり、簡単に避けたりで当たる気配などは全く無く、むしろ瞳を閉じては退屈そうにしている。

 「見なくてもわかるのか……！？」

 「人には微弱ながらも電気信号が脳から送られることはご存知ですよね？」

   もちろん翠は知っている。
   人は手や脚を動かしたりする時、脳から電気信号が送られて一秒の半分の時間を要して動かすことができる。
   熱いものに触れても一瞬は熱くないのと同じで、熱さや冷たさもを脳で関知するのと同じ事であり、電気信号も一瞬だが手や脚を動かさせて反応するのにラグは存在するのだ。

 「元より電気信号の解読は行わなくても、風の流れや気の流れ……ありとあらゆる感覚を張り巡らせれば造作もないことなのですがね。」

 「はぁっ！？ か、勝てるわけ無いだろ！？」

   圧倒的な戦力の差を見せ付けられ絶望する。
   相手は神様で電気を操り、人の心まで落ち着かせる能力を多用し、おまけに莫大な時間を刀につぎ込んでいる。
   それに比べて翠は剣道なんてやってもいないし、凡人であるため蟻と恐竜が戦うようなものである。
   最初から答えの見えた戦などしたくもなかったためか、刀を投げ棄てた。

 「俺はやっぱり聖奈さんと戦いたくないっ！ こんな殺し合いに意味なんて無いし、俺は死んだことを悪く思ってない！ 清算なんてしなくて良いんだぞ！」

   翠は説得するかのように聖奈を落ち着かせる。

 「それが翠様の答えなのですね……。」

   聖奈は刀を鞘に納めては軽くため息をつき瞳を閉じては、少しだけ静かな時間が流れた。
   翠もホッと安堵した表情で、これで良かったんだと胸を撫で下ろし投げ棄てた刀を鞘に戻そうと拾い上げるのだった。