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第1章【日曜の港《陽光》】
ヘンテコリンなレンガと小さな隊長
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フフッ、こういう仕事も悪くないものだ。
透き通るような美しい青い海を眺め、たまにはこういう笑いも悪くはない。
と言うのも私は死者の魂を延々と管理する仕事しか手を染めてない、なぜ悪くないと言えるのかわかるかな?
まず私の仕事、死んだ人間の魂など閻魔の間へと交通整理したとて誰も感謝やお礼など必要としないしされないし、でも……この仕事がなきゃ三途の川を渡った辺りは行き場のない魂だらけになるからな。
あそこでは必要な仕事だが給金はあれどお礼も感謝されない私は延々と何のためにやってるのかすらわからなくなる。
けど、この港を作る仕事は明確な目的があるし皆笑顔で働いているんだ。
周りを見渡せば誰もがそれに気がつく……あー、あの辺りは別。
玄弥は懲りずに智美にシバかれてるのは恒例行事だとしても。
「んー、それにしてもこのレンガは何なんだか?」
相変わらず極普通のレンガだが金属の棒が差し込まれていてみれ見るほどよくわからないのがわかるだろう?
それともただ単に私の知識不足だろうか、なんとか指定された10往復をなんなくこなしてみせるが1回ぶんの距離が距離だから1時間もあれば終わってしまう。
智美に話しかけてみてもそれが私に課せられた仕事なものだから後は明日までやることがないから自由にしててヨシとのことらしい。
なんとホワイト企業な事だろうか、こっちじゃ早く上がれば白い目で見られると言うのにここじゃ早ければ早いほど良いのだろうか?
終わったなら次の仕事を探すなり手伝うなり、それが仕事の美徳ではないのか……私はモヤモヤが止まらないが終わりと言われればそこまでなのだろう、ゆっくり皆の邪魔にならない程度に歩き回ることにしようではないか。
「猫車は放置しててもいいって言われたが……それでいいのか。 まぁ、片付け場所教えられてないしいいか。」
それにしても相変わらず妙だ……片手サイズなのにも関わらずたったレンガ300個程度で港を作るつもりだろうか、各区域に分けられた配分でもやはり智美いわくこれで全てだとしか言わない。
考えるだけ不安と不自然で頭が一杯だ、そう思ったときだ……ゴゴゴッと背後で小さな音が響き渡った。
「なっ!? レ……レンガが独りでに動いている、だと!?」
少しだけレンガの角が浮き上がっては見えない糸でまるで引っ張られるように運んできた大量のレンガの内の1つがゆっくりと牛歩のごとくゴゴゴッ……ゴゴゴッと動いている。
……何なんだ?
恐る恐るレンガを持ち上げて見たその時だ、未知との邂逅なのだろうか……理解に追い付けない私の脳はフリーズを起こし思わずレンガをゴンッと落としてしまった。
なんなのだコイツは!?
ヒトなのだろうか……見た目は人間なのだが明らかにサイズが規格外に小さすぎるのだ。
「ひゃわあぁああっ!? 危ないじゃないか、余が潰れたらどうする!!」
彼女……は大きな声で怒鳴っているかもしれないが、いかんせんこちらとしてはネズミが鳴くような程度にしか聞こえない。
むしろ小さくてプリプリ怒ってて萌え~なんだが?
「ごっ、ごめん……コビトの種族? って言うのは初めて見たから驚いて。」
「むー……まあいい、驚かれるのには慣れているからか。 しかたない、こんな田舎臭い場所でのクエストともなると……なぁ。」
田舎臭いだと?
今から生まれ変わるんだよ……この七刻はな。
……いかんな、七刻をバカにされたことにより少し怒りが溜まったがもし理性が保てて無ければこのチビを握りつぶしていただろうな、よく耐えた私は誉めてやりたい。
「あーぁ、でもリリアス王国よりは自然が豊かだなぁ。 余は嫌いじゃないな……こういう場所は。」
彼女は私が落としたレンガをまたゴゴゴッ……ゴゴゴッと引きずってはどこかへ持っていこうとするも案の定引きずって居るため赤く砕けたレンガの粉が後で尾を引いているため再度私は持ち上げた。
「……はぁ、智美は……後先考えないな。」
「余の仕事を返せっ!! おとなしく返せば痛い目は見ずに済むぞ?」
ほう、腰に添えた金細工の細剣を私に向けるか……それにしてもリリアス王国は聞き覚えがある。
主が製作している小説の1つ【すくなみこ!!! 身長3センチのギルドマスター】の主人公のスクナミコではないか。
不運に死んで女神の手によって転生され、あげくのはてにこんなチビにされた……という話だったかな。
それでも世界を救った勇者よろしく腕前はかなりの実力で認められギルドマスターを勤めているが、まさかこちらに呼ばれていたとはね。
あちらの世界ではクエストという名義でここの結界に干渉されずに主の権限で来られたんだろうが。
「とりあえずさ、レンガ引きずって資材が傷つくから私が手伝ってやろう。」
もっとも私は暇だしコイツに興味がある、イジりがいがありそうだからもう少し付き合ってやる。
スクナミコも仕事の速度に関しては自身の非力さを痛感してたのか、利害一致ということでほぼ私がすべて請け負う形で手伝うことにした。
「余がここで指揮してやるぞ、キビキビ手伝うのだ!!」
頭の上でキンキンとやかましく指揮する勇者様を握りつぶしたくなるがここは300個程のレンガを今度は砂浜の地点へと移動させることに。
というか私が直で砂浜に持っていけばコイツ要らなくね? って思ってたのは正直内緒だ。
スクナミコに言うなよ?
言ったら細剣で頭をプスプスやられそうで怖いんだよなぁ、それだけは勘弁してくれ……。
というか見透かされてる? なーんか嫌な予感がした直後、私はチクッと言う感覚と共にレンガを足元に落とし頭と足の2度美味しい……2度痛い目を見るハメになった。
透き通るような美しい青い海を眺め、たまにはこういう笑いも悪くはない。
と言うのも私は死者の魂を延々と管理する仕事しか手を染めてない、なぜ悪くないと言えるのかわかるかな?
まず私の仕事、死んだ人間の魂など閻魔の間へと交通整理したとて誰も感謝やお礼など必要としないしされないし、でも……この仕事がなきゃ三途の川を渡った辺りは行き場のない魂だらけになるからな。
あそこでは必要な仕事だが給金はあれどお礼も感謝されない私は延々と何のためにやってるのかすらわからなくなる。
けど、この港を作る仕事は明確な目的があるし皆笑顔で働いているんだ。
周りを見渡せば誰もがそれに気がつく……あー、あの辺りは別。
玄弥は懲りずに智美にシバかれてるのは恒例行事だとしても。
「んー、それにしてもこのレンガは何なんだか?」
相変わらず極普通のレンガだが金属の棒が差し込まれていてみれ見るほどよくわからないのがわかるだろう?
それともただ単に私の知識不足だろうか、なんとか指定された10往復をなんなくこなしてみせるが1回ぶんの距離が距離だから1時間もあれば終わってしまう。
智美に話しかけてみてもそれが私に課せられた仕事なものだから後は明日までやることがないから自由にしててヨシとのことらしい。
なんとホワイト企業な事だろうか、こっちじゃ早く上がれば白い目で見られると言うのにここじゃ早ければ早いほど良いのだろうか?
終わったなら次の仕事を探すなり手伝うなり、それが仕事の美徳ではないのか……私はモヤモヤが止まらないが終わりと言われればそこまでなのだろう、ゆっくり皆の邪魔にならない程度に歩き回ることにしようではないか。
「猫車は放置しててもいいって言われたが……それでいいのか。 まぁ、片付け場所教えられてないしいいか。」
それにしても相変わらず妙だ……片手サイズなのにも関わらずたったレンガ300個程度で港を作るつもりだろうか、各区域に分けられた配分でもやはり智美いわくこれで全てだとしか言わない。
考えるだけ不安と不自然で頭が一杯だ、そう思ったときだ……ゴゴゴッと背後で小さな音が響き渡った。
「なっ!? レ……レンガが独りでに動いている、だと!?」
少しだけレンガの角が浮き上がっては見えない糸でまるで引っ張られるように運んできた大量のレンガの内の1つがゆっくりと牛歩のごとくゴゴゴッ……ゴゴゴッと動いている。
……何なんだ?
恐る恐るレンガを持ち上げて見たその時だ、未知との邂逅なのだろうか……理解に追い付けない私の脳はフリーズを起こし思わずレンガをゴンッと落としてしまった。
なんなのだコイツは!?
ヒトなのだろうか……見た目は人間なのだが明らかにサイズが規格外に小さすぎるのだ。
「ひゃわあぁああっ!? 危ないじゃないか、余が潰れたらどうする!!」
彼女……は大きな声で怒鳴っているかもしれないが、いかんせんこちらとしてはネズミが鳴くような程度にしか聞こえない。
むしろ小さくてプリプリ怒ってて萌え~なんだが?
「ごっ、ごめん……コビトの種族? って言うのは初めて見たから驚いて。」
「むー……まあいい、驚かれるのには慣れているからか。 しかたない、こんな田舎臭い場所でのクエストともなると……なぁ。」
田舎臭いだと?
今から生まれ変わるんだよ……この七刻はな。
……いかんな、七刻をバカにされたことにより少し怒りが溜まったがもし理性が保てて無ければこのチビを握りつぶしていただろうな、よく耐えた私は誉めてやりたい。
「あーぁ、でもリリアス王国よりは自然が豊かだなぁ。 余は嫌いじゃないな……こういう場所は。」
彼女は私が落としたレンガをまたゴゴゴッ……ゴゴゴッと引きずってはどこかへ持っていこうとするも案の定引きずって居るため赤く砕けたレンガの粉が後で尾を引いているため再度私は持ち上げた。
「……はぁ、智美は……後先考えないな。」
「余の仕事を返せっ!! おとなしく返せば痛い目は見ずに済むぞ?」
ほう、腰に添えた金細工の細剣を私に向けるか……それにしてもリリアス王国は聞き覚えがある。
主が製作している小説の1つ【すくなみこ!!! 身長3センチのギルドマスター】の主人公のスクナミコではないか。
不運に死んで女神の手によって転生され、あげくのはてにこんなチビにされた……という話だったかな。
それでも世界を救った勇者よろしく腕前はかなりの実力で認められギルドマスターを勤めているが、まさかこちらに呼ばれていたとはね。
あちらの世界ではクエストという名義でここの結界に干渉されずに主の権限で来られたんだろうが。
「とりあえずさ、レンガ引きずって資材が傷つくから私が手伝ってやろう。」
もっとも私は暇だしコイツに興味がある、イジりがいがありそうだからもう少し付き合ってやる。
スクナミコも仕事の速度に関しては自身の非力さを痛感してたのか、利害一致ということでほぼ私がすべて請け負う形で手伝うことにした。
「余がここで指揮してやるぞ、キビキビ手伝うのだ!!」
頭の上でキンキンとやかましく指揮する勇者様を握りつぶしたくなるがここは300個程のレンガを今度は砂浜の地点へと移動させることに。
というか私が直で砂浜に持っていけばコイツ要らなくね? って思ってたのは正直内緒だ。
スクナミコに言うなよ?
言ったら細剣で頭をプスプスやられそうで怖いんだよなぁ、それだけは勘弁してくれ……。
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