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第2章【月曜の荒野《夜朧》】
一旦状況整理と行きましょう
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夜朧の開拓が終わって3日ほどは何事もなく過ぎていったがここしばらくは七刻に居すぎたためかスッポリ頭から抜けていくも、私の心の奥底では主を放ったらかしにできない性分だとわかっていてね……こうして一時的に【こちら側】に帰還して来たと言うわけさ。
じゃなきゃ主は悲しくて死んじゃうってどこのウサギですか?
とりあえず、ひぃふぅみぃ……数えるのが怖いくらい何日前のかわからないお寿司を主にプレゼントしたわけで、何の疑いもなく目の前で美味しそうに食べている。
頑張ったご褒美に【お1ついかが?】なんて笑顔を向けられてしまっては断りづらいがいかんせん私としてはご遠慮したいものだ、これ……防腐剤とか寿司に仕込んでるんじゃないかって疑わしいほど見た目も握りたてのようなネタの鮮度さ。
なんと言うか怖すぎて怖いわぁ……。
「とりあえず冥綾もお疲れ様って訳ねぇ。 うまうま……サーモンおいしい。」
なんであれ美味しいって言ってくれて何よりそこまでだ、3つ星レベルの板前がお持ち帰り用にわざわざ作ってくれたんだ……そのお寿司のパックだけで数千円するみたいだからよく味わって食べて欲しい。
「さてさてすっかり忘れてたけど燎煉には誰を派遣しようかなー、どれにしようかなぁ。」
その話題についてはいっさい口に出すまいと思っていたのだが主のニヤニヤっぷりからはこちらの会話が筒抜けであたかも知っていたようなそぶりをして見せる。
その顔なんとかならない? 福笑いレベルだぞ。
というか絶対知ってたでしょ……監視とかしてたならストーカー認定ね。
「いやはや、エゴサって大切なんだよぉ。」
主は訳のわからないことを口走るとその辺に置いてあったノートのページを1枚ほど破るとペンで名前を書き始めるのだがそこは次のキャストが私に見せるように書くのだな。
見覚えのある名前から知らない名前までざっと10人ほど書いたのだろうか、まぁ主の製作タイトルから抜擢されたものなのだろうと十中八九予想できるわけで……って、ちょちょちょっ、あからさまに女性の名義ばかりじゃないか!?
これじゃあ過酷な燎煉で戦力になるのか心配だよ。
その紙をビリビリっと素手で……いやハサミ使おうよってレベルにグチャグチャに裂いては折り畳んでそこにあった空のティッシュ箱の中に放り込む。
つまりはあれだ、抽選ってやつさ。
「この中から好きなの1個選んでね。」
箱の中を凝視しても形は違えど折り畳まされた紙はどれも同じに見えてしかたがない、一応男の人らしい名義の紙の形は覚えたような気もするが……箱を激しくシェイクされたものだからよく見てもどれがどれなのかもうわからない。
ええいままよ、もうなんでも良いや……神様仏様私に幸あれッ!!
1枚ほど紙を引き抜いては恐る恐る開いた……。
未知との遭遇ってこういう事なんだなぁって思えるほどにね。
主はその紙を宙に放り投げるや否やだ、部屋の中だと言うのにそよ風が吹き付け、紙が光輝いたかと思うとそこにはやはり少女がゆっくりと瞳をあけて着地した。
男の人を引き当てられなかったのは覚悟してたがね。
それでも私は目を疑ったさ……。
……主はいったい何者なんだ?
確かに私と言う存在を作ったというのはわかるし普通の人間には変わりの無い存在だと言うのに、召喚というものが使えるとは驚いた。
それとも何なんだ、私の知り得ない何かを彼女は持っているのか?
「んぉ、呼ばれたのか……私は?」
ピザを口にくわえたまま召喚されてたとはなんともタイミングが悪くてすまないとは……微塵にも思わないんだなぁ、これがまたさ。
どこかパッと冴えない少女だがこれも何らかのタイトルのお話の登場人物なのだろう?
「おー、瑞穂ちゃんお久しぶり。」
ミズホ?
初耳な名前を聞かされたが名前さえわかればこっちのもんでね、私の使っているパソコンにはなぜか主が製作したタイトルのお話が読めるアプリケーションが入っている。
だから誰がどのような武勇伝を残しているのかはっきりわかるのさ。
ふむふむなるほど、この名前から関連付けられるとなると【下っ端さんは成り上がりの夢を見るか?】の主人公【下元 瑞穂】に違いないが……私としては顔が引きつるばかりだよ、これに関してはね。
なんたって何の能力すら持たない真人間、空を飛ぶことも魔法で炎や水なんて扱うことも出来ない本当にどこにでも居そうな女子高校生ッ!!
おおなんと言うことでしょう、世の中残酷なもの。
それにしても主の作品にしては珍しく異世界モノのファンタジー要素のキャラではなく学園モノなのだ。
はっきり言って今必要なのは力強い戦力であるためウルトラレアではなくコモンを引き当てた感が半端無くてどう接して良いのかすらわかったもんじゃないよ。
……いや、よく考えると今の考えは聞かなかったことにしてくれ、何も瑞穂が悪いって言う訳じゃ決してない。
何事にも適役ってのがあってだな、今回は過酷な仕事には不向きな人をお呼びしただけって訳であり本当の本当に瑞穂が無能と決めつけてる訳じゃない、そこは勘違いしてくれるな。
話を読んでみたが積極性が強いとはプロフィールに書かれている、それを強みとしてどう引き出し扱うのかが私としての役目であり導きでもある。
使いようによっては前言撤回だがコモンからウルトラレアにすら匹敵するほどの潜在能力を引き出せるかもしれないし、私としても楽しみが湧いてきた。
「というわけで、こういうアルバイトをお願いしたいんだけどね? いやぁ、なかなかのブラックっぷりでしょ?」
主が契約書にサインさせようとしてるが瑞穂も紙から放たれる不可視のドス黒いオーラを察したのか1歩ほど下がりながら見つめているのがわかる。
当たり前だろう、常に死と隣り合わせの職場に普通の女子高生が行けるかって話なんだよ。
「いやいや、私死ぬってこれ絶対!!」
「恨むのならあっちのゴスロリお姉さんを恨むことだ。 直々にご指名との事だからなぁ。」
「くじ引きをさせたのは主の方じゃないか。」
女3人でかしましいとはよく言ったもの。
でも興味が出てきたぞ……可能性とやらを試させてくれよ、人間。
ふふっ、女神の試練に選ばれし者よ……七刻の歴史に名前を刻む覚悟があるか?
私はたまには女神らしいデモンストレーションをしてみようとしたが室内で鎌はさすがに振り回せない。
……が、威圧的な態度で見下ろすのはヤバイ、癖になりそうなほど楽しい。
神様って便利な職だって改めて気づくけどさぁ、ろくなのが居ないから神様なんだよね。
そう思うと私も【ろくでなし】か。
じゃなきゃ主は悲しくて死んじゃうってどこのウサギですか?
とりあえず、ひぃふぅみぃ……数えるのが怖いくらい何日前のかわからないお寿司を主にプレゼントしたわけで、何の疑いもなく目の前で美味しそうに食べている。
頑張ったご褒美に【お1ついかが?】なんて笑顔を向けられてしまっては断りづらいがいかんせん私としてはご遠慮したいものだ、これ……防腐剤とか寿司に仕込んでるんじゃないかって疑わしいほど見た目も握りたてのようなネタの鮮度さ。
なんと言うか怖すぎて怖いわぁ……。
「とりあえず冥綾もお疲れ様って訳ねぇ。 うまうま……サーモンおいしい。」
なんであれ美味しいって言ってくれて何よりそこまでだ、3つ星レベルの板前がお持ち帰り用にわざわざ作ってくれたんだ……そのお寿司のパックだけで数千円するみたいだからよく味わって食べて欲しい。
「さてさてすっかり忘れてたけど燎煉には誰を派遣しようかなー、どれにしようかなぁ。」
その話題についてはいっさい口に出すまいと思っていたのだが主のニヤニヤっぷりからはこちらの会話が筒抜けであたかも知っていたようなそぶりをして見せる。
その顔なんとかならない? 福笑いレベルだぞ。
というか絶対知ってたでしょ……監視とかしてたならストーカー認定ね。
「いやはや、エゴサって大切なんだよぉ。」
主は訳のわからないことを口走るとその辺に置いてあったノートのページを1枚ほど破るとペンで名前を書き始めるのだがそこは次のキャストが私に見せるように書くのだな。
見覚えのある名前から知らない名前までざっと10人ほど書いたのだろうか、まぁ主の製作タイトルから抜擢されたものなのだろうと十中八九予想できるわけで……って、ちょちょちょっ、あからさまに女性の名義ばかりじゃないか!?
これじゃあ過酷な燎煉で戦力になるのか心配だよ。
その紙をビリビリっと素手で……いやハサミ使おうよってレベルにグチャグチャに裂いては折り畳んでそこにあった空のティッシュ箱の中に放り込む。
つまりはあれだ、抽選ってやつさ。
「この中から好きなの1個選んでね。」
箱の中を凝視しても形は違えど折り畳まされた紙はどれも同じに見えてしかたがない、一応男の人らしい名義の紙の形は覚えたような気もするが……箱を激しくシェイクされたものだからよく見てもどれがどれなのかもうわからない。
ええいままよ、もうなんでも良いや……神様仏様私に幸あれッ!!
1枚ほど紙を引き抜いては恐る恐る開いた……。
未知との遭遇ってこういう事なんだなぁって思えるほどにね。
主はその紙を宙に放り投げるや否やだ、部屋の中だと言うのにそよ風が吹き付け、紙が光輝いたかと思うとそこにはやはり少女がゆっくりと瞳をあけて着地した。
男の人を引き当てられなかったのは覚悟してたがね。
それでも私は目を疑ったさ……。
……主はいったい何者なんだ?
確かに私と言う存在を作ったというのはわかるし普通の人間には変わりの無い存在だと言うのに、召喚というものが使えるとは驚いた。
それとも何なんだ、私の知り得ない何かを彼女は持っているのか?
「んぉ、呼ばれたのか……私は?」
ピザを口にくわえたまま召喚されてたとはなんともタイミングが悪くてすまないとは……微塵にも思わないんだなぁ、これがまたさ。
どこかパッと冴えない少女だがこれも何らかのタイトルのお話の登場人物なのだろう?
「おー、瑞穂ちゃんお久しぶり。」
ミズホ?
初耳な名前を聞かされたが名前さえわかればこっちのもんでね、私の使っているパソコンにはなぜか主が製作したタイトルのお話が読めるアプリケーションが入っている。
だから誰がどのような武勇伝を残しているのかはっきりわかるのさ。
ふむふむなるほど、この名前から関連付けられるとなると【下っ端さんは成り上がりの夢を見るか?】の主人公【下元 瑞穂】に違いないが……私としては顔が引きつるばかりだよ、これに関してはね。
なんたって何の能力すら持たない真人間、空を飛ぶことも魔法で炎や水なんて扱うことも出来ない本当にどこにでも居そうな女子高校生ッ!!
おおなんと言うことでしょう、世の中残酷なもの。
それにしても主の作品にしては珍しく異世界モノのファンタジー要素のキャラではなく学園モノなのだ。
はっきり言って今必要なのは力強い戦力であるためウルトラレアではなくコモンを引き当てた感が半端無くてどう接して良いのかすらわかったもんじゃないよ。
……いや、よく考えると今の考えは聞かなかったことにしてくれ、何も瑞穂が悪いって言う訳じゃ決してない。
何事にも適役ってのがあってだな、今回は過酷な仕事には不向きな人をお呼びしただけって訳であり本当の本当に瑞穂が無能と決めつけてる訳じゃない、そこは勘違いしてくれるな。
話を読んでみたが積極性が強いとはプロフィールに書かれている、それを強みとしてどう引き出し扱うのかが私としての役目であり導きでもある。
使いようによっては前言撤回だがコモンからウルトラレアにすら匹敵するほどの潜在能力を引き出せるかもしれないし、私としても楽しみが湧いてきた。
「というわけで、こういうアルバイトをお願いしたいんだけどね? いやぁ、なかなかのブラックっぷりでしょ?」
主が契約書にサインさせようとしてるが瑞穂も紙から放たれる不可視のドス黒いオーラを察したのか1歩ほど下がりながら見つめているのがわかる。
当たり前だろう、常に死と隣り合わせの職場に普通の女子高生が行けるかって話なんだよ。
「いやいや、私死ぬってこれ絶対!!」
「恨むのならあっちのゴスロリお姉さんを恨むことだ。 直々にご指名との事だからなぁ。」
「くじ引きをさせたのは主の方じゃないか。」
女3人でかしましいとはよく言ったもの。
でも興味が出てきたぞ……可能性とやらを試させてくれよ、人間。
ふふっ、女神の試練に選ばれし者よ……七刻の歴史に名前を刻む覚悟があるか?
私はたまには女神らしいデモンストレーションをしてみようとしたが室内で鎌はさすがに振り回せない。
……が、威圧的な態度で見下ろすのはヤバイ、癖になりそうなほど楽しい。
神様って便利な職だって改めて気づくけどさぁ、ろくなのが居ないから神様なんだよね。
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