神様project【七曜の女神と幾億の旅跡】

青衣

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第3章【火曜の火山《燎煉》】

勝負の行方

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 結愛の斬撃が私の横腹をかすめる。
 あんな超密接状態で繰り出されたらリーチの短い針剣であろうとも胴体が横に真っ二つになっていたところ、危ない危ない……。
 よく考えればよくもまぁ一瞬で私も首の皮1枚で避けられたもの、智美から貰った燎煉の作業着がスパッと斬れちゃったじゃないか。
 あとで縫い合わせておかなきゃ着れそうにも無いんで補修しておくとしても、私の反射神経はなかなかのものだろう?

 一旦距離を置いて体勢を建て直す、どうするかはそれから考える。

「タイムタイム、ちょっと待って!!」

 私はどうしてもあることに気がついて左手右手で一旦お預けのポーズを結愛に示す。
 まぁ、これを見せれば正々堂々たる燎煉の掟には逆らえるわけもない……正当な理由無しで使うことはリスクが大きすぎるが私の今の提案はきちんとした理由あってのこと、使える策は思う存分使わなきゃ損ってね。
 活用できるものは惜しみ無く使ってナンボものもさ。

「パソコンが邪魔だからちょっと外させてもらうよ。 借り物だから壊したらいけないしね。」

「あー、それは仕方ないわよね……どうぞどうぞ。」

 ギターのストラップみたいなのを着けた首かけのパソコンをそこら辺に置いては壊れないように魔法もかけておく。

「【金曜魔法・アブソリュートガード(絶)】」

 パソコンが淡いオレンジ色の光の障壁で守られたのを確認するとここからが戦闘の本番だ、タイムの時間でわずかながらに考えた付け焼き刃の先方が結愛に通じればいいが……ぶっつけ本番と言うのは苦手でねぇ。
 ほぼの確率で失敗に終わるからなんとも運のなさを味方に付けられない私はこの勝負において厳しいだろう。

 結愛の運の良さはかなりある、運も実力のうちって言う言葉があるからなんとか戦況をひっくり返す要素が見つかれば良いのだが。

「じゃっ、行くわよっ!!」

 タイムもそろそろ長すぎた、煮えを切らせて結愛が針剣を振りかざしロケットみたいな勢いで飛び付いてきた。

 針剣と言えども刺突だけしかできないと思ったらそれは間違いだ。
 彼女だってそんなにバカでもない、かつて知り合いに御幣をエンチャントと呼ばれる属性付与をして貰ったお陰で鋭利な刃はなくとも触れただけで斬撃できる恐ろしい武器と化している。

「やぁッ!!」

 お世辞にも剣術らしい剣術は使えないのがせめてもの救いだろうか、聖奈みたいに剣術を極めたわけでも無いため型にはまらないようなメチャクチャな攻撃。
 だからだろうか、剣の軌道が読めなかったり……あげくのはてには振りは大降りで隙だらけであろうが火力は凄まじい。
 この姿で攻撃力にステータスをガン振りした化け物と成り果てている以上は一撃でも喰らえば双方ただじゃ済まないサドンデス状態。

「なんのッ!!」

 激しい金属音がぶつかり合い、またしてもつばぜり合いに持ち込むがその衝撃の凄まじいことと言ったらこの上ない。
 下手したら肩の脱臼だの腕の骨折がおまけでついてくる感じのシビレが腕に伝わってくる……その辺は結愛もだろう?
 私だってこの姿でかなり本気で打っているんだもの、その苦痛な顔を見れば衝撃が強いことなんて目に見えてる。



 だがその瞬間だ、本気で押しているのにフッと突如として空気の壁を押すような感覚に包まれた私は前のめりになって盛大にズッコケ……たわけではない、臨機応変に地面に手をついてそのまま倒立回転飛びで体勢を立て直し何があったのか結愛の方を見つめた。



 ……いったい何が?



 だがそれも瞬時に理解できた。
 結愛の髪色が青に変化し……瞳は慈愛を示す茶色に。
 攻撃型から防御へと移り変わったようだが、この意味とはいかに?

 そう、私の負け確定に近いもの。

 弱点としては火曜は水曜に弱い……この姿でなら持っての他だ。

「ふっふーん、一転攻勢ねっ!!」

 ビシィッと人差し指を私に向けるが私もヤレヤレと言った具合さ。
 無条件で自身の属性を変えられるのは結愛だけの特権で、あとの私たちはたとえ結愛の因子を持っていたとしても任意で変えるにはその曜日を司る地域に行って変えることしか出来ない。
 例外があるとすれば、感情が高まった時に無意識に属性が変わる程度の時だろう、たまに意図しないときに変身することは私もあるからな。

 歓声が高まる中で、ギャラリーにいた生徒達もうっすらと気がついてきただろう。
 任意で変える異質な特性を持つ彼女が何者なのか……現代においてその神聖と言うおとぎの存在に……。
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