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第3章【火曜の火山《燎煉》】
長き時間は刻々と
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入院時間は長いと言えば気の遠くなるような長さとしか思えないようなことばかり。
何がって絶対安静であるから外に外出もできなければ必要以外にベッドから降りることも許してくれるはずがない。
これじゃ私はパソコンをいじる以外に何があるのかって話だし、1日いっぱいパソコンをして暇潰ししてろと言うのも無理な話……ため息しか私にナイスタイミング、女神はやって来た。
「冥綾様は頑張りすぎですよ、自分に見合う仕事を的確に見つけ出してやらなければまた同じことを繰り返してしかいかねません。」
隣地方から聖奈が差し入れと面会と言うわけでリンゴをどっさりと持ってきてくれた。
これは嬉しいが……私はウサギさんリンゴを何個食べさせられているんだ?
黙々と包丁で、それでいて普通に皮を剥いているだけなのに普段の剣さばきの動きを重ねるとその無駄の無い動きでどんどんウサギさんリンゴが完成してゆく。
それも1個や2個のレベルじゃない。
結愛も私も……しまいには聖奈より先に面会に来ていた瑞穂も食べているが減る余地はない。
あっという間に20匹ほどのウサギさんリンゴが追加で完成してしまう。
「見合うって以前に仕事を選べないから仕方ないんだよなぁ。」
「私も容赦なく怒られたわっ!! ここで一番偉い女神様なのにぃっ!!」
「私は特に智美さんの近くにいて威を借りっぱなしだから護られてたけど、智美さんは部下に容赦なく溶岩や火口に叩き込むお仕置きしてたよ。」
「智美様はやり過ぎな所もあるんです。 そこをどうにかしないと燎煉で過労死が多発しかねません。」
彼女に対する評価は散々なものだが、その全員がそれをすべて否定するわけではなくその力強さを認識して良いようにも評価をし合う。
確かに智美は乱暴なところはあれど本当に悪い人ではない、そうじゃなければ部下は彼女を信頼し今の地熱発電所など建つはずもなかったのだから。
それにしても久々の聖奈との再開も果たし、彼女に瑞穂の自己紹介をしたら案外早々に打ち解けてくれて良かった。
なんと言っても瑞穂のテンションの上がりっぷりはまるで好奇心のそそられる子供のようなもの。
瑞穂の住んでいた世界にも数百年までは侍や武士が居たらしい……それは私の主の住んでいる世界観とは同じなのかもしれない。
だからなのだろう、女言えども侍魂が騒ぐと言うのは。
刀に興味を示す瑞穂に……ちょちょちょっ、ここで抜き身は危ないから止めてくれ。
なんやかんやあって唯一の楽しみの面会時間は終わり、またいつもの無骨な白い病室に私と結愛が寝そべっているだけ。
あとは結愛はほぼ体調は万全で【退屈だー】だの【暇ぁ】だのうるさいのなんのだが、たった1日いっぱい寝込んだだけで体力全快になれるなどやはり若さとは羨ましい。
いやまぁ、若さで言うと私の肉体も普通の女子高生となんら変わりはないからお年寄りからしてみればドングリの背比べでしかない。
残りの1週間の仕事は全てやらなくてもいいとは言え、なんの刺激も無いニート生活は羨ましいとは思ったことはあれど理想と現実は全く違うもの。
あまりにも暇すぎてこんなんじゃすぐにでもナマケモノになりそう……あとあれはほぼ動かないから背中にコケが生えると図鑑で見たことがあったな。
あまつさえその背中のコケは食べることも可能ならしい、ふむ……つまりは私の手の届く範囲にあるこのオヤツの事だな。
「とはいえ、リンゴはしばらく見たくないな……ははは。」
先程のリンゴは食いつくしたとは言え、バスケットの中にはいまだにリンゴが山ほどある。
見れば見るほど飽き飽きするものだが病院食じゃ飽きたら無いこの現実である、無いよりはマシだと思うが……1日1個で医者は青くなるらしいがここまであると私までトラウマで青くなりそうなのは言うまでもない。
しばらくはリンゴは主にでも送りつけておくとしよう、名案名案そうしよう。
何がって絶対安静であるから外に外出もできなければ必要以外にベッドから降りることも許してくれるはずがない。
これじゃ私はパソコンをいじる以外に何があるのかって話だし、1日いっぱいパソコンをして暇潰ししてろと言うのも無理な話……ため息しか私にナイスタイミング、女神はやって来た。
「冥綾様は頑張りすぎですよ、自分に見合う仕事を的確に見つけ出してやらなければまた同じことを繰り返してしかいかねません。」
隣地方から聖奈が差し入れと面会と言うわけでリンゴをどっさりと持ってきてくれた。
これは嬉しいが……私はウサギさんリンゴを何個食べさせられているんだ?
黙々と包丁で、それでいて普通に皮を剥いているだけなのに普段の剣さばきの動きを重ねるとその無駄の無い動きでどんどんウサギさんリンゴが完成してゆく。
それも1個や2個のレベルじゃない。
結愛も私も……しまいには聖奈より先に面会に来ていた瑞穂も食べているが減る余地はない。
あっという間に20匹ほどのウサギさんリンゴが追加で完成してしまう。
「見合うって以前に仕事を選べないから仕方ないんだよなぁ。」
「私も容赦なく怒られたわっ!! ここで一番偉い女神様なのにぃっ!!」
「私は特に智美さんの近くにいて威を借りっぱなしだから護られてたけど、智美さんは部下に容赦なく溶岩や火口に叩き込むお仕置きしてたよ。」
「智美様はやり過ぎな所もあるんです。 そこをどうにかしないと燎煉で過労死が多発しかねません。」
彼女に対する評価は散々なものだが、その全員がそれをすべて否定するわけではなくその力強さを認識して良いようにも評価をし合う。
確かに智美は乱暴なところはあれど本当に悪い人ではない、そうじゃなければ部下は彼女を信頼し今の地熱発電所など建つはずもなかったのだから。
それにしても久々の聖奈との再開も果たし、彼女に瑞穂の自己紹介をしたら案外早々に打ち解けてくれて良かった。
なんと言っても瑞穂のテンションの上がりっぷりはまるで好奇心のそそられる子供のようなもの。
瑞穂の住んでいた世界にも数百年までは侍や武士が居たらしい……それは私の主の住んでいる世界観とは同じなのかもしれない。
だからなのだろう、女言えども侍魂が騒ぐと言うのは。
刀に興味を示す瑞穂に……ちょちょちょっ、ここで抜き身は危ないから止めてくれ。
なんやかんやあって唯一の楽しみの面会時間は終わり、またいつもの無骨な白い病室に私と結愛が寝そべっているだけ。
あとは結愛はほぼ体調は万全で【退屈だー】だの【暇ぁ】だのうるさいのなんのだが、たった1日いっぱい寝込んだだけで体力全快になれるなどやはり若さとは羨ましい。
いやまぁ、若さで言うと私の肉体も普通の女子高生となんら変わりはないからお年寄りからしてみればドングリの背比べでしかない。
残りの1週間の仕事は全てやらなくてもいいとは言え、なんの刺激も無いニート生活は羨ましいとは思ったことはあれど理想と現実は全く違うもの。
あまりにも暇すぎてこんなんじゃすぐにでもナマケモノになりそう……あとあれはほぼ動かないから背中にコケが生えると図鑑で見たことがあったな。
あまつさえその背中のコケは食べることも可能ならしい、ふむ……つまりは私の手の届く範囲にあるこのオヤツの事だな。
「とはいえ、リンゴはしばらく見たくないな……ははは。」
先程のリンゴは食いつくしたとは言え、バスケットの中にはいまだにリンゴが山ほどある。
見れば見るほど飽き飽きするものだが病院食じゃ飽きたら無いこの現実である、無いよりはマシだと思うが……1日1個で医者は青くなるらしいがここまであると私までトラウマで青くなりそうなのは言うまでもない。
しばらくはリンゴは主にでも送りつけておくとしよう、名案名案そうしよう。
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