神様project【七曜の女神と幾億の旅跡】

青衣

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第3章【火曜の火山《燎煉》】

揺られ揺られ長き道

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 入院して5日が経過した頃だ、お見舞いに来てくれるのは誰もいなく寂しくて……まぁ、みんな忙しいと言って一蹴すればそれまでだろう、無理に来て欲しいと言わないのさ。
 結愛と言えば3日目にして退院してしまったようだから病室には私1人と独占状態なのだが、これが嬉しくないわけでパソコンも端末も飽き飽きだ。
 別に誰か来て欲しいなんて思ってない、でもふて腐れる気持ちもよくわかる……金曜の都市の長の私こと、恋というヤツは一言でツンデレと呼ばれるのがいるのだがいつも人を拒むというのはこんな気持ちなのだろうか?
 本当は構って欲しいのに、モヤモヤから本当のことを言えなくなるというのは……辛いのだな。

 まぁ、私は基本素直だからツンデレには無縁だが……誰か来て欲しいなぁ。

「と思ってるアナタに朗報です。 私が居ます。」

「帰れッ!! というかどっから湧いて出てきたんだ……主よ。」

 待ってましたと言わんばかりに扉を開けてスタンバイしてたんだろうが、主は神出鬼没であり私も他人の気配をある程度は関知し否が応でも寿命を見透かしてしまう難儀な能力な持ち主だとしてもだ……主の反応だけはどうしても関知することができない。
 突然来られると心臓に悪い、主は死神すら心発作を起こさせるつもりか。

「暇なんでしょ? お見舞いしに来たよ。」

 いつも通りでホッとした。

 これが主だ、茶髪でクリっとした瞳……他に外出をすると言っても常識をわきまえない青いジャージ、完璧。
 何度も言おう、これが主だッ!!

「来てくれてありがとう。 暇な時間にせいせいしてたところだよ。」

「まずはリンゴでも食べるといい。」

 持ってきてきてくれてありがとう、だがそれは要らない。
 バナナとかメロンを私は所望する……わかってやっているのだろうな、そのニヤニヤした表情はイヤらしいヤツだぁ。
 けどそれで良いんだけどさ。

 そう言うところ評価高いし嫌いじゃない……むしろ好き。
 どっちの意味でって? 両方だとしたら笑うかい?
 笑ってくれても構わないよ、むしろ誰かをす気になれないよりは誰かを好きになれるって素敵なことだって思うし。
 あっ、異論は受け付けないよ?

「車イスを借りてきた……歩けるまでに回復は当然してるだろうが私に介護をさせてよ。 1度やってみたかったんだ。」

「私が車イスに乗るとは……世も末だ。」

 なんとも言えぬ座り心地が尻のムズムズを引き立てる。
 慣れればそこまでじゃないが、ちょっと恥ずかしいかも……誰かに見られたらどうしようか?

 そう思ってたら主はゆっくりと車イスを押して前進し、病室を後にする。















 病院には命の輝きが溢れている。
 死神の私だから断言できることだ、それは保証しよう。



 とても辛そうな表情をしている男性が手すりに掴まって、みんなの応援と共に前へと歩こうとしている。
 リハビリの最中だろうか、彼は【歩きたい】と願い病に立ち向かっている……とても素敵な事だ。

 涙をこらえて腕をさする女の子がいる。
 予防接種を頑張って耐えた表情、たとえ泣いたとしても試練を乗り越えた証は嘘をつかない。
 どこか誇らしくて凛々しい泣顔。

 臨月にさしあたってこれからお母さんになる女性が夫らしき人に車イスで押されて私達とすれ違った。
 初めてだから不安という言葉が聞こえたが、案ずるより産むが易しと言う言葉があったかな……私は子供など産んだことは当たり前のようにないが、これから生まれてくる命の煌めきと言うのが尊かった。
 大丈夫だ、母は強しというぞ……頑張れ。

「病院と言うのは面白いな。」

「冥綾がなにかに興味を持つなんて珍しい。」

 興味を持ったって別にいいじゃないか。
 気になるものの1つや2つあった方が趣味として持てても損はない。
 そういう主は小1の頃初めて雪解け水の流れに気をとられて1時間も学校の校庭のスミでボーッとしてたらしいじゃないか?

 つまりはそういうこと。
 私だって目で追うものはある、自然と惹かれる好奇心と言うものがね。
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