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第4章【水曜の湖畔《時雨》】
滑空と爆走すること吹雪のごとし
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というわけで早速2人で建設予定地である丘を登るハメになったのだが、ここで違和感を感じれたなら察しが良いな!!
メンバー減ってないって思うかもしれないけど、私と恵麻の2人きり……そう、なんだか寂しい。
何があったのかと言うと智美は軍曹と結愛を引率しては浄水場で完備してるスノーモービルを先に来ていた従業員に恐喝して無理矢理借りてしまった始末。
サイドカーに2人を乗せて鍵をかけたならもう爆走のなんのって、スキーとキャタピラの痕を残して快適に行ってしまったと言うわけ。
私達には健脚があるから別にいいんだけど……負け惜しみじゃないからね?
それにしても基本穏和な感情になる水曜の力を持ったとしても智美は智美である、恐喝すればかなりの迫力で大の男の大人ですら怯む。
と言うか智美がどうであれ七刻で素で正面から戦おうなら誰にも勝てないだろうが。
そんなことを思いつつも遥か遠くにそびえる丘を目指してただ一直線に歩くのみ。
「はぁ、はぁ……疲れる、低空飛行ぅ~。」
それでも勘違いしないでほしいが寒さに強くなったとは言え、雪や氷の上を歩くスキルが私にとっては身に付くわけでもないため、サラサラの粉雪は容赦なく脚をズボッと埋め込み行く手を遮ってくれる。
鬱陶しい事この上ないので歩くよりも力を消費するが快適に移動できるためならこういう手段も時として必要だと私は思う。
何度か見せたことはあると思うが飛行と言うのは実は他の人にとっては珍妙な曲芸である。
他の世界の人達は大抵空を飛ぶことは出来ないらしく、むしろ飛べる方が羨ましがられると思われがちだが少なからずともこっちは無条件で飛べるものではない。
飛行機は燃料がないと飛べないのと一緒、私も【曜力】がないと基本は無理。
それでも低出力でなら浮くことは可能……移動するには力は必要であれど工夫さえすれば胴体にロープをくくりつけるなりして引っ張ってもらえば普通に浮いたまま動くことはできなくもないが、子供がトンボに釣り糸を結ぶのと見た目は似てるようでなんか思い返せば嫌だなぁ。
「智美さん先に着きすぎて手余しとかして変なこと、しでかさないですかね……私ちょっと不安かも。」
仮にも恵麻は時雨を管轄する女神で、いくら智美いえども地形を破壊したり行きすぎたマネなどはたぶんしないと思うが、あんな狂暴で凶暴な女神が絶対にやらないという確信がどこにあるって言うんだ?
もしやったなら厳重注意どころじゃ済みそうにもないだろう、恵麻の本気はかなり恐ろしいと私は見たことがないから分からないが、聖奈からはちょこっと聞いておりその気になれば一瞬でこの世界を絶対零度の檻に永遠に閉じ込めることなどもできると……あの聖奈が強く断言するとなると恐ろしい娘。
いくら力があろうがスピードがあろうが空間が凍るというものについては抵抗すら許さないのだ、こんなオドオドした恵麻でもやはり怒らすと怖いというのは当たり前……か。
「ん? 私の顔がどうかしたんですか? あまり見られると……ドキドキして恥ずかしいですよぅ。」
だがほら、本人はいたってこの調子である。
だが一言言える事があるとするならば……だ。
……智美がいぢくり倒して反応をさせたくなるのは頷ける。
私も後でちょっかいかけてみようかなって思うけど、さすが智美が見込むだけのマゾヒストっぷりであるがこれ以上爆弾発言すると消されそうなので口を慎む。
丘の斜面にたどり着くと無器用ながらも雪だるまがあったり、明らかに顔を押し付けたような跡がそこらかしこに存在している光景が目に飛び込んできた。
さすがに1時間は暇な時間があるならこう言うことをしたくなるだろう。
それでも興味には勝てないかな、結愛と軍曹はこれからやって来る重機が斜面を登ってくるのを雪遊びを放り投げブルドーザーやらボーリングマシンやら熱心に見つめてはあまり女の子らしからぬ興奮を見せてくれる。
さてさて肝心な智美はスノーモービルが気に入りすぎたのか、かなり本気のスピードで颯爽と駆け抜けており縦横無尽に走った痕跡が遠くまで見られ、彼女の姿が見えないとなると相当遠くまで行ってると考えられるのだが、重機もまもなく到着するから15分以内には帰ってきて欲しい。
でも何となく気持ちもわからなくもない、結愛や軍曹を乗せていてはあのスピードは万が一を考えると事故を起こしたら大変だったから全開には出すことはできなかっただろう、そのウズウズが爆発した結果がこれ……許してやってもいいんじゃないかと私は思うんだけど恵麻の表情は曇りが見える。
「時雨じゃ燃料は高騰してるんですよ……後で智美さんに使ったぶん請求してやりますっ!!」
ぷくっと可愛らしく膨れた恵麻がビシィッと共通のポーズをやって見せたが、本来やるようなキャラとは思えないがなんか新鮮で心がホッコリと暖かく感じられた。
メンバー減ってないって思うかもしれないけど、私と恵麻の2人きり……そう、なんだか寂しい。
何があったのかと言うと智美は軍曹と結愛を引率しては浄水場で完備してるスノーモービルを先に来ていた従業員に恐喝して無理矢理借りてしまった始末。
サイドカーに2人を乗せて鍵をかけたならもう爆走のなんのって、スキーとキャタピラの痕を残して快適に行ってしまったと言うわけ。
私達には健脚があるから別にいいんだけど……負け惜しみじゃないからね?
それにしても基本穏和な感情になる水曜の力を持ったとしても智美は智美である、恐喝すればかなりの迫力で大の男の大人ですら怯む。
と言うか智美がどうであれ七刻で素で正面から戦おうなら誰にも勝てないだろうが。
そんなことを思いつつも遥か遠くにそびえる丘を目指してただ一直線に歩くのみ。
「はぁ、はぁ……疲れる、低空飛行ぅ~。」
それでも勘違いしないでほしいが寒さに強くなったとは言え、雪や氷の上を歩くスキルが私にとっては身に付くわけでもないため、サラサラの粉雪は容赦なく脚をズボッと埋め込み行く手を遮ってくれる。
鬱陶しい事この上ないので歩くよりも力を消費するが快適に移動できるためならこういう手段も時として必要だと私は思う。
何度か見せたことはあると思うが飛行と言うのは実は他の人にとっては珍妙な曲芸である。
他の世界の人達は大抵空を飛ぶことは出来ないらしく、むしろ飛べる方が羨ましがられると思われがちだが少なからずともこっちは無条件で飛べるものではない。
飛行機は燃料がないと飛べないのと一緒、私も【曜力】がないと基本は無理。
それでも低出力でなら浮くことは可能……移動するには力は必要であれど工夫さえすれば胴体にロープをくくりつけるなりして引っ張ってもらえば普通に浮いたまま動くことはできなくもないが、子供がトンボに釣り糸を結ぶのと見た目は似てるようでなんか思い返せば嫌だなぁ。
「智美さん先に着きすぎて手余しとかして変なこと、しでかさないですかね……私ちょっと不安かも。」
仮にも恵麻は時雨を管轄する女神で、いくら智美いえども地形を破壊したり行きすぎたマネなどはたぶんしないと思うが、あんな狂暴で凶暴な女神が絶対にやらないという確信がどこにあるって言うんだ?
もしやったなら厳重注意どころじゃ済みそうにもないだろう、恵麻の本気はかなり恐ろしいと私は見たことがないから分からないが、聖奈からはちょこっと聞いておりその気になれば一瞬でこの世界を絶対零度の檻に永遠に閉じ込めることなどもできると……あの聖奈が強く断言するとなると恐ろしい娘。
いくら力があろうがスピードがあろうが空間が凍るというものについては抵抗すら許さないのだ、こんなオドオドした恵麻でもやはり怒らすと怖いというのは当たり前……か。
「ん? 私の顔がどうかしたんですか? あまり見られると……ドキドキして恥ずかしいですよぅ。」
だがほら、本人はいたってこの調子である。
だが一言言える事があるとするならば……だ。
……智美がいぢくり倒して反応をさせたくなるのは頷ける。
私も後でちょっかいかけてみようかなって思うけど、さすが智美が見込むだけのマゾヒストっぷりであるがこれ以上爆弾発言すると消されそうなので口を慎む。
丘の斜面にたどり着くと無器用ながらも雪だるまがあったり、明らかに顔を押し付けたような跡がそこらかしこに存在している光景が目に飛び込んできた。
さすがに1時間は暇な時間があるならこう言うことをしたくなるだろう。
それでも興味には勝てないかな、結愛と軍曹はこれからやって来る重機が斜面を登ってくるのを雪遊びを放り投げブルドーザーやらボーリングマシンやら熱心に見つめてはあまり女の子らしからぬ興奮を見せてくれる。
さてさて肝心な智美はスノーモービルが気に入りすぎたのか、かなり本気のスピードで颯爽と駆け抜けており縦横無尽に走った痕跡が遠くまで見られ、彼女の姿が見えないとなると相当遠くまで行ってると考えられるのだが、重機もまもなく到着するから15分以内には帰ってきて欲しい。
でも何となく気持ちもわからなくもない、結愛や軍曹を乗せていてはあのスピードは万が一を考えると事故を起こしたら大変だったから全開には出すことはできなかっただろう、そのウズウズが爆発した結果がこれ……許してやってもいいんじゃないかと私は思うんだけど恵麻の表情は曇りが見える。
「時雨じゃ燃料は高騰してるんですよ……後で智美さんに使ったぶん請求してやりますっ!!」
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